英ガーディアンによるウィキリークス本の連載その2-スパイ映画のような+「Publish and be damned」
http://www.guardian.co.uk/world/2011/jan/31/wikileaks-embassy-cables-publication
カフェのナプキンに書かれた文字を使って、メガ情報を読み解くキーワードを作るアサンジ。このナプキンを、ガーディアンの記者は「汚いシャツと一緒に」ロンドンに持ち帰ったー。なんともリアルで、面白い、まるでスパイ小説のようである。
その後、アサンジが米外交公電公開(昨年11月末)の直前、「もうニューヨーク・タイムズ、ガーディアンと一緒に仕事をしたくない」というほど、頭をかっとさせるような事態が出現する。一つには、ニューヨーク・タイムズが、アサンジを批判するプロフィール記事を掲載し、これをアサンジは心底嫌ったのだという。
そのほかにもいろいろなごたごたが起きて、ニューヨーク・タイムズ、ガーディアン、ドイツ・シュピーゲルという3大報道機関とウィキリークスの協力は風前の灯になる・・・。しかし、これを「まあまあ」と最後に丸くおさめたのは、たくさんのワインと穏やかなガーディアン編集長であったー。
和訳本もすぐ出るようなので(アマゾンに出ている)、楽しみな本である(注:私はガーディアンから宣伝用のお金はもらっていないが!!!)
ところで、前回、「勝手に出版しろ」(Publish and be damned)という表現を紹介した。これは、後に首相にもなったウェリントン公が使ったらしいのだが、手紙にこの文章を書きつらねたーというのは神話らしい。家にあった本を見ると、(Wellington: A Personal History by Christopher Hibbert)―。19世紀の話である。英国王ジョージ4世が「摂政王太子」(父のジョージ3世が病を患い、一時摂政として国を統治〕だった時の愛人の一人に、ハリエッテ・ウィルソンという女性がいた。http://en.wikipedia.org/wiki/Harriette_Wilson 4人の首相となる人物もお相手にしたウィルソン。この中の一人がウェリントンだった。
後、ウィルソンは回顧録を書き、この回顧録の出版前に、出版者がウェリントン公に手紙を出した。回顧録にはウェリントン公が公表したくない部分が入っていると手紙は告げていた。「印刷機を止めたが、来週には出版予定です」と。
ウェリントンはこの手紙に「Publish and be damned」と書き、送り主(出版者)に返したといわれている。しかし、先の本の著者によれば、この手紙が今でも残っていて、実際には何の文字も書かれていないという。ただし、この本にはないが、ウェリントン公がこの表現を口頭で言った可能性が消えたわけではないのだが。著者は、おそらく、ウェリントンが出版者に対し、裁判に訴えると脅したのではないか、と書く。
この回顧録は最終的に出版され、逸話を暴露されたほかの人が裁判に訴えたので、出版者は破滅の道をたどったという。ウェリントン公自身は先の女性の「退屈な賛美者の一人」として描かれ、その名誉はほとんど傷つかなかったという。
いずれにしろ、メディア界では、リスクがあってもそれにひるまず出版する、訴えられたらこれに打って出るーという意味合いがあるようだ。ただし、実際、訴えられたら裁判費用が莫大なので、こんなことを理想論としてでもいえるのは、ある程度の大きな報道機関になるだろう。(*「Publish and be damned」のより良い訳や、もっと知っている方はご教示ください。)