人気ブログランキング | 話題のタグを見る

小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「なぜBBCだけが伝えられるのか」(光文社新書)、既刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)など。


by polimediauk

BBCがアイプレイヤー・グローバル版の提供を開始

 BBCのテレビやラジオの番組を放映・放送後7日間再視聴できる、いわゆる「見逃し番組視聴サービス」=BBCアイプレイヤーが、28日から、欧州11ヶ国で利用できるようになる。当初は、アイパッド(アップル)のみのサービスだ。年内には米国を含む、世界他国にも広げる予定だという。

 サービスが利用できる欧州11ヶ国とは、オーストリア、ベルギー、フランス、ドイツ、イタリア、ルクセンブルグ、アイルランド、オランダ、ポルトガル、スペイン、スイス。毎月6・99ユーロ(約780円、あるいは年間49.99ユーロ、約5000円)の利用料を払う。

 サービスはBBCの商業部門となるBBCワールドワイドが行う。視聴できるのは、放送から7日間の番組ばかりではなく、新旧取り混ぜたラインアップになる模様。

 BBCの担当者は、アイプレイヤーは国内では「見逃し番組のキャッチアップ」サービスだが、海外版は「オンデマンド・サービス」となるという。「過去50―60年間で放送分の番組を混ぜる」という。約1500時間に上る番組の中から視聴したい番組を選べるようになっており、今後、一ヶ月で100時間分の番組が追加されてゆく。

 番組はWIFI環境下ばかりでなく、3Gでも視聴でき、ダウンロードもできるので、ネットにつながっていないときでも番組視聴ができる。番組の60%はBBCが制作・放映したもので、30%が独立制作会社が制作してBBCで放映されたもの、残りの10%は他局ITV,チャンネル4が放映したものになるという。

 フィナンシャル・タイムズ紙の取材に答えた、ブロードバンド及びTVのアナリスト、ニック・トーマス(インフォーマ社)は、欧州で今年販売されたアイパッドの台数は約750万と推測され、その大部分が英国で販売されたものであったので、28日から開始された、国際版アイプレイヤーの市場は「ニッチ(希少な)」ものであるという。

 BBCは経費削減への圧力が、最近非常に大きい。国内では大人気となったアイプレイヤーだが、無料で視聴できるため、投資をしたわりには収入を得られないのが難点だった。今回のグローバル版は1年間のパイロットという面があるそうだが、本格的に稼動した場合、大きな収入が得られる可能性がある。BBCのネームバリューから言って、国境を越えたオンデマンド・サービスの第一人者になる可能性もあると思う。

 ますます、テレビ番組は「受信機の前に座って、テレビ局が設定した時間に見る」ものではない状況が現実化している。

http://www.bbc.co.uk/news/technology-14322604
http://www.ft.com/cms/s/2/0b00eca4-b85f-11e0-b62b-00144feabdc0.html
http://www.guardian.co.uk/technology/appsblog/2011/jul/28/bbc-iplayer-global-ipad-launch
by polimediauk | 2011-07-28 18:19 | 放送業界