小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「なぜBBCだけが伝えられるのか」(光文社新書)、既刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)など。


by polimediauk

朝日「Journalism」に奥山記者によるオリンパス元社長の記事

 朝日新聞が出している月刊メディア雑誌「Journalism」の3月号に(私も1つ原稿を書いているが)、興味深い記事がいろいろ出ている。

 データジャーナリズムに関する詳しい記事(小林啓倫氏著)も興味深いが、私にとっての目玉は、朝日・奥山俊宏記者が書いた、オリンパスの元社長による、日本の新聞批判である。

 オリンパスの損失隠しを最初に書いたのは、月刊誌「FACTA」であったという。これが2011年7月。それ以降、日本のマスコミはこれについてずっと書かないまま。英訳記事を手にした当時の社長ウッドフォール氏が、ここに書いていることは「事実なのか?」と菊川会長(当時)に聞いたことがきっかけで、一連の大きな動きが起きる。

 社長職を解任されたウッドフォード氏が、損失隠しに関わる資料を持って、内部告発をしようと思ったとき、声をかけたのは、日本のメディアではなく、英フィナンシャル・タイムズだった。金曜に記者と会い、翌土曜日には1面の記事となった。奥山記者はウッドフォード氏と、日本の新聞が何故、FACTA報道後に書けなかったのか、日本のメディアの問題点などを議論しあう。これが1つの記事になっていて、その後、記者はFTの記者とも会って、どのような経緯で資料を受け取り、すぐに報道できたのかを探る。

 日英の新聞報道の違いが垣間見える2つの記事だ。奥山記者が「何故、日本の新聞がほかのメディアを引用して書けないのか」を説明するところが面白い。1つには名誉毀損があるからだという。いろいろ、考えさせられた。どこかで入手されたら、ご一読をお勧めしたい。

朝日「Journalism」
http://publications.asahi.com/ecs/66.shtml


 
by polimediauk | 2012-03-06 21:18 | 新聞業界