小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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「奇妙な国ニッポン」 タイムズ記者


鯨の話

 朝食を食べながら新聞をめくっていたら、タイムズ17日付のコメント欄に、東京特派員(支局長かもしれない)リチャード・ロイド・パリーRichard Lloyd Parry氏のコラムを見つけた。

 軽いエッセー風のコラムだが、最初は表参道の話から始まり、いかに日本人がペットに異常な愛情を抱いているかについて書いてある。最後の三分の一が、鯨肉の話になる。

 何故、今、鯨の話?

 私は、これだけでこのコラムを読む気力を失った。

 日本は鯨肉を食べる野蛮な国民というイメージ・認識が欧州、少なくとも英国にはある。「野蛮な」という言葉がきつければ、「絶滅に瀕している鯨肉を食べる国」という認識がされている。

 読む気力を失ったのは、結論が最初から見えるように思ったからで、それは、「結局は日本は奇妙な国」という、あまりにも陳腐なメッセージに行き着くだけで、退屈だと思ったのだ。

  今回の記事に関わらず、日本に関する英国の報道を読んでいると、やや偏った感じの印象を時々持つものの、一つ一つは決して嘘ではなく、むしろ、特派員が誠実に取材して書いたもの、報道したものも多く、特にめくじらをたてることは、ない。しかし、私の見た限り、タイムズ紙は時々、あれ?と思うような記事を載せることがある。

 ・・・といって、新聞社側に抗議しても、リチャード・ロイド・パリー記者に問い合わせをしても、始まらない。エッセーには好きなことが書けるし、嘘を書いているわけではないからだ。また、編集長、デスクが、こういった記事を欲しがる、という面がかなりある可能性もある。

 しかし、日本=鯨という発想がアナクロ的で、退屈だとは思ったが、実際に最後まで読んでみると、これはこれでユーモアもあり、笑ってしまった。

 下の訳を読まれた方は、どう受け取られるであろうか?

(以下は、鯨肉の個所の和訳です。)

「12年前、私の初期の訪日の頃、鯨を初めて食べるという経験をした。レストランは新宿にあって、夜が更けるにつれて、鯨のステーキ、鯨の脂肪、鯨のペニスまで食べた。体のサイズと比較すると、全てのほかの動物と比べても鯨は男性器が小さいが、それでも十分に食べる量があった。鯨のペニスは薄切りにされており、生で出された。なかなか噛み切れず、味がなかった。

 もう2度と鯨肉を食べることはないだろう。鯨が、すばらしく知的な、絶滅に瀕した動物であるからではない。市場で購入する鯨肉とされるもののサンプルに関する科学者のレポートを読んだからだ。レポートは、保護されるべき鯨の肉が非合法に販売されているばかりか、鯨肉と称されるものが実は鯨の肉ではないのだった。いるかの肉だったり、馬の肉だったりするのだ。(注:英国では馬の肉は食べない。日本は馬肉を食べる国、とされている。評判はこの点では良くない。)

 鯨肉のレストランで食べたものを思い出した。馬肉のステーキ?大丈夫だ。馬の脂肪?ちょっといやだ。しかし、薄生の、噛みにくい・・・(馬のペニス?)。
 
 一日中、(注:もし食べたのが馬の肉だったら?という)遠いノイズに悩まされた。このノイズが消えない。」

(終わり)
by polimediauk | 2005-05-17 17:25 | 日本関連