小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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物足りない英メディアのEU憲法報道

 今、オランダ・アムステルダムからイギリスに戻る途中で、まだじっくり英メディアの報道をすみからすみまで見た・読んだわけではないのだが、EU憲法のフランスでの国民投票の今後に関する報道が、やや物足りない。

 フランス国民がノーというだろうという点は、以前から言われていたが、結果が出た後の、ブレア首相やストロー外相の返答がちょっと情けなく聞こえる。つまり、フランスがノーといったので、2006年にイギリスで予定されていた国民投票を、やらないかもしれない、というものだ。「投票するべきEU憲法がない、実体がないものになっていれば、イギリスで国民投票をしても仕方ない」〔内心は、ほっとした)という説明である。

 これに対し、「おかしい」という声が、ざっと英報道を見た限りでは、見当たらなかった。(以前に、予測記事の中で、1つ読んだように思うが。)

 つまり、2つの論点があって、1つは、EU憲法を批准する方法は、各EU加盟国が自由に決められる。議会を通してもいいし、国民投票でもいい。イギリスは、国民投票で批准することにした。イギリスは元々反EU感情が強いので、本当は議会で討議の上、批准、という形の方が安全なようにも思うが、とにかくブレア首相は、国民投票の方を選択した。

 そして、フランスがノーということで、「じゃあ、場合によってはイギリスでは国民投票は、なしかもしれない」というのは、民主主義の観点からは、どうなるのだろう?これが最初の疑問だ。

 つまり、「フランス国民はノー」という意思表示をした。フランス政府はこの答えが気に入らなかったかもしれないが、これで白黒はっきりした。イギリス国民には同様の機会が与えられないのか?ということだ。今国民投票をしたら、ノーという確率は高い。しかし、それでも、「国民の意見を聞いた」ことになる。

 もう1つは、「フランス」がノーといったら、それで終わり、ということでいいのか?という点だ。

 これに関しては、BBCも触れていたが、確かにフランスは欧州統合の中心役だった。しかし、昨年5月に東方拡大して、ポーランドなどの新しい加盟国ができた。新しいEUを目指しているはずだ。そんな時、「フランス」が大きな発言権を持つ、ということで、いいのだろうか?現時点で、(ざっとみた限りで恐縮だが)、「フランスがノーといったから、わが国ではもう国民投票はしない・・かもしれない」という声を、他の国からは聞かない。

 ・・・というようなこと、それに加えて、EUの将来はどうなるのか?などの本質的な記事が読みたいものだ。

 どこの国でもそうだとは思うが、ある一定の方向に世論が流れると、他の意見が出ない、といった一種のパニック報道、閉塞報道が起きるときがある。ちょっと残念だ。
by polimediauk | 2005-06-01 03:05 | 新聞業界