小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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アルジャジーラ英語放送 準備進む

スタートは、来年早々か

 カタールに本拠を置くアラビア語の衛星放送アルジャジーラが、今年年末から英語でも放送を開始する、というニュースが報道されてから久しいが、詳細がなかなか伝わってこない。当初、11月に開始、とされていたが、現在は来年早々と言われている。

 英語放送の本部もカタール・ドーハになるが、アルジャジーラ・インターナショナルのロンドン支部やドーハ本部の広報部に連絡先を登録しておくと、役員にだれそれが決まった、などのミニ・ニュースは入ってくるものの、あえて報道するようなおもしろい内容が、まだない。「時期が来たら、正式に記者会見を開く」というのが、今のところ、広報部の公式見解だ。英語放送のトップはITVというイギリスのテレビ局にいたナイジェル・パーソンズという人で、できればイギリスで会見を開いて欲しいものだが・・・。

 6月4日付けのタイムズ紙に、英語放送の記事が出ていた。〔以下は大体の訳〕。

 「アルジャジーラ英語放送(アルジャジーラ・インターナショナル)は、現在スタッフを雇っている最中で、放送開始は来年早々の予定だ。約250名のスタッフを雇用する予定で、欧米のメディアがカバーしない視点を提供する、としている。」

 「アルジャジーラ・インターナショナルのマネジング・ディレクターであるナイジェル・パーソンズ氏によると、『情報の逆の流れを作りたい。開発途上国から発信される初めての英語放送になる』」。

 「アルジャジーラは9年前に放送開始。世界中に400万人の視聴者がいる。中東諸国に住む国民の声を代弁するメディアとして、他の放送業者では提供できない情報を提供した。特にアルカイダやウサマビンラーディンのビデオを放映したことで有名になり、これがもとで反アメリカという評判を得た。特にこの姿勢を強く持っていたのが初代マネジング・ディレクターのモハメド・ジャッシン・アリ氏で、アリ氏は2003年にアルジャジーラを追われている」

 「英語放送に関しては、パーソンズ氏は、『反アメリカにはならない』という。ビンラーディンがアルジャジーラにテープを持ち込んだのは、アルジャジーラが幅広い視聴者を持っているからで、「アルジャジーラはテープの全貌を放映したわけではない」とした。」

 「イラク戦争で、欧米の軍隊に従軍記者として参加したジャーナリストたちは、『戦争の片側の見方だけを提供したと思う。アルジャジーラ英語放送は、『両方の側を報道したい』」(注:現在、アルジャジーラはバグダッドから追放されているので、直接の報道はできない状況だ。)

 「ライバルのメディアはアルジャジーラ英語放送をどう見ているのだろうか?あるBBCニュースの役員は、『私たちとは異なる視点の報道ができると思うので、歓迎する。イラク戦争の時に、アルジャジーラの番組を見て、自分たちの番組の報道が殺菌された報道に見えた』と語った。」

 「アメリカ側に、アルジャジーラ英語放送は中立だということを納得してもらうのは、困難な仕事かもしれない。『アメリカでは、アルジャジーラがどんな放送か、完全な誤解をしている人もいる』とパーソンズ氏。」

 「現在のところ、4000人がアルジャジーラ英語放送での勤務に応募したという。ドーハ以外には、ロンドン、ワシントン、クアラルンプールに支局を開設予定だ」

 「ちなみに、世界の衛星英語放送を比較してみると、BBCワールドは本部がロンドン、250人の特派員を含め、3400人のスタッフが働く。世界には58支局があり、世界中で2億6600万の家庭が視聴。放送開始は1995年。米CNNは本部がアトランタ。118人の特派員を含め、スタッフは4000人。36支局があり、2億6000万の家庭が視聴。放送開始は1980年となっている。」
by polimediauk | 2005-06-05 00:59 | 放送業界