小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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米SNDが選んだ、ベストな新聞デザインとは?

 少々前になるが、雑誌「新聞研究」(今年7月号)に世界の新聞のレイアウト(デザイン)について、書いた。以下はそれに補足したものである。

 新聞のレイアウトは、それぞれの地域によって違う。カラフル、アート、遊び心ーそんな言葉が浮かんでくるのが、今回紹介する世界の新聞だ。


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わかりやすさを考える 
デザインで訴求力を高める
<米SND「世界の最優秀デザイン新聞賞」の巻>


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(ドイツのヴェルト・アム・ゾンターク紙の紙面。赤いコードはこの次の3ページにわたり、続く)

 世界各国でニュースメディアの紙面制作にかかわる約1500人が所属する非営利組織「ニュースデザイン協会」(the Society for News Design=SND、本部米フロリダ州)は、今年2月13日、第34回「世界の最優秀デザイン新聞賞」の受賞者を発表した(デザイン=紙面構成のこと)。

 1979年発足のSNDは毎年、優れた紙面の新聞を選出している。会員の中から推薦で選ばれた20人余が審査員となる。

 審査には5つの基準がある。「ニュース価値」、「情報をいかに編集したか」、「情報をどのように構築したか」、「美的体裁」、「革新性」だ。

 これ以外に、SNDが最優秀作品を選ぶ時の一般的な基準がある。

 新聞賞発表の際のプレスリリースを見てみよう。

 例えば、「文字の字体(フォント)が統一されていること」、「記事の重要度に応じて順列をつけた配置にしていること」、「余白を生かしていること」などが「良い」とみなされる。また、「見た目がすっきりとしていること」が大事な一方で、「インパクトがあって、記事(=伝えようとしていること)を読ませること」はそれ以上に重要となる。

 芸術的なポスターのような美しさばかりでは、情報を伝え、考える機会を提供する新聞の機能が不十分になってしまう。

 実際の受賞作品と審査員評を見てみよう。

―余白を効果的に使う

 今回の受賞者はスウェーデンの日刊紙「ダーゲンス・ニュヘテル」、ドイツの日刊紙「ツァイト」、ドイツの日曜紙「ヴェルト・アム・ゾンターク」、カナダの週刊新聞「グリッド」、そしてデンマークの日刊紙「ポリティケン」だ。

 紙面を実際に見ないと感覚がつかみにくいと思うので、ウェブサイトで具体例をご覧になっていただければ幸いである。

 スウェーデンのダーゲンス・ニュヘテル(上記サイトのスライド2から20)はタブロイド版の日刊紙だ。その紙面の特徴は、審査員によれば「硬派と軟派のトピック、長短の記事が混在していること」。通常の大型ブランケット判よりも紙面のサイズが小型になるが、写真使いの巧みさでまるで大判を広げたような迫力を持つ。

 紙面には記事がたくさん詰まっているものの、余白空間をうまく使い、視覚に訴える(=ビジュアル)要素(写真、イラストなど)が生きているという。

 ドイツのツァイト紙(スライドの22から41)は「長い記事を掲載し、すべての人を満足させようとは思っていない」のが特徴だ。この新聞も紙面の「余白部分の使い方が絶妙」で、重要な要素を引き立たせ、かつ視覚ツールが目に迫ってくる、と審査員は指摘している。

 「それぞれの紙面が美しく、1つの作品となっているが、同時に、深みのある内容が掲載されていると読者が感じるようになっている」。ツァイト紙が最優秀デザイン賞を受賞したのは、今回で6回目となる。

 2011年に創刊されたばかりのカナダ・トロントの週刊新聞グリッド(スライド42-72)の特徴を審査員は「楽しい、知的、大胆、信頼が置ける、洗練されている、若い」と表現した。

 読者の声を紙面に積極的に反映し、地方色を出す工夫として地図や画像で注目の場所を掲載。犬についての特集記事を出した号は、「グリッド(The Grid)」という新聞紙名を犬の怒鳴り声「grr」をもじって「The Grrid」に変えたことも審査員を微笑ませたようだ。

―「こうあるべき」という約束を自ら破る 

 前回に続き、最優秀デザイン新聞賞を受賞したのが、デンマークのポリティケン紙(スライド74から98)。「印象的な写真使い、興味深いトピック、挑戦的な編集、強い遊び心」が決め手となった。中心になるのは記事だが、ビジュアル・ツールを自在に使って、独特のトーンを出した。「挑戦的」、「遊び心」とは「新聞紙面とはこうあるべき」という約束を自ら破ることを意味するようだ。

 紙面いっぱいを手書きの漫画で埋めた実例(以下はその一部を拡大したもの)がある。記事の内容を際立たせるためにツールを柔軟に使う、そのために編集部員がじっくりと想像力を働かせるーこれがポリティケンの秘密のようだ。
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 1つの紙面にいくつもの記事を入れたり、次の面に誘うための導入を入れたりする新聞が多い中、ドイツの日曜紙ヴェルト・アム・ゾンターク(スライド99から122、上記写真掲載)はほとんどの場合、「1つの紙面で1つの記事を原則としている」。また、長い記事が読者を退屈させないよう、作り手が知恵を絞る。

 例えば、余白空間や大きな写真を駆使する。文字のフォントは2つに絞り、統一感を出す。イラストを頻繁に使い、ある面で使ったイラストを発展させた形でほかの面に新鮮な形で使う。08年に最優秀賞を受賞した同紙の紙面構成は「一つの文化の域に達している」と審査員は書いている。(終)
by polimediauk | 2013-09-07 15:17 | 新聞業界