外国特派員から見たロンドン
「国際的」「物価が高い」
東京の大手町にある外国特派員協会に相当するものが、ロンドンの外国プレス協会になる。一種のクラブのようなものだが、協会の建物では会見なども多く開かれている。
この協会を通して今までに会ったジャーナリストの中では、なぜかドイツから来た特派員たちにはロンドン生活を楽しんでいる人が多く、中国の場合、ややイギリスに関して批判的〔帝国主義の名残など〕な人が多かったように思う。偶然かもしれないが。
日本からの特派員で、イラクに行って帰ってきた人と会ったときに、「ロンドンは〔イラクやアメリカ・ワシントンに比べて〕退屈だ。何も起きていない」という感想を聞いた。確かに、弾が飛んでくることはなく、大きな政変もないし、平和といえば平和だが。
インディペンデント紙の6月27日号が、数名の外国特派員に、ロンドンをどう思うか?を聞いている。ほとんどが好意的な意見だが、もし「イギリスに関してどう思うか?」と聞いたら、厳しい分析・意見が出たのではないかと思う。
「ロンドンは、世界中で最高にすばらしいトピックが常に存在する場所とは言えない。しかし、最高に楽しめる、かつその声が世界に届く場所だと思う。ドイツでも、ロンドン発の報道への関心は高まっている。英国は欧州の経済的奇跡を成し遂げている。その強みは賞賛に値するが、弱点もある。ロンドンは多くの記事の豊富な情報源だ。ネットワーキングは簡単だ。ニューヨークに匹敵するくらいの生き生きするアート・シーンもある」。(ドイツのデル・スピーゲル紙のマチアス・マツセック氏)
「最初に驚いたのは天候だ。言われているほどひどいとは思わないが。スペイン人がイギリスの生活に関して高い関心を持っていることにも驚いた。関心が高すぎる!独ハノーバーで肉屋が老女を殺しても誰も関心を持たないが、これがロンドンのピカデリー・サーカスで起きたとなると、マドリードの同僚は細かいところまで知りたがる」。(スペインのエル・パイス紙のウオルター・オッペンハイマー氏)
「ロンドンで生活するのは高額だ。北米から来る特派員はロンドンに赴任するとなると、躊躇する。ロンドンはニュースが発生する場所。アングロ・アメリカ文化の偏見があるからだろうが。公平に見ても、ロンドンにはたくさんニュースがあると思う。イギリスにはビジネスや公共サービスの斬新なアイデアが生まれる文化がある。ロンドンには、ニュースを作る政治的議論があると思う」。(カナダのグローブ&メールのダグ・サンダース氏)
「ロンドンはニューヨークタイムズの海外支局の中でも最も忙しい支局だ。イギリスはアメリカ人にとって魅力的な国だし、政治、文化、芸術、劇場、時事、知的議論を追いかける記者にとって、報道するネタが一杯だ。ブレア首相とブッシュ大統領が連携しているので、原稿に切迫性がでる。ロンドンは、欧州、中東、そのほかの世界の国々とつながる場所でもある」。(米ニューヨークタイムズのアラン・コーエル氏)
「オーストラリアのプレスにとって、ロンドンはとっくの昔にワシントンに首位の座をとられている。今はアジアの方が報道の焦点だ。しかし、今でも重要な場所であることは確かだ。ロンドンから、イギリスだけでなく欧州全域をカバーする。利点は、英語が使える点と、飛行機の連絡がいいことだ。悪い点は生活費が異常に高い点と、使い勝手の悪い地下鉄、公的サービスだ」。(ザ・オーストラリアンのピーター・ウイルソン氏)
「発達したメディア、世界中のリーダーの訪英、トップレベルの会議、著名なシンクタンクの存在など、ロンドンはジャーナリストにとって天国だと思う。イギリスの交通機関、通信網などにも感銘をうけている。予期していなかったのは、インタビューのアポイントがとりにくいことだ。ロンドン支局は中国の人がイギリスに関して知識を得るために大きな役割を果たしている」。(Xinhua New Agencyのリー・ジガオ氏)
このほかにもあったが、リップ・サービス部分が多いようにも思う。嘘は言っていないと思うが、表立ってネガティブなことは言えないのだろう。一方、人によって全く反対の印象〔交通機関など〕を持っていることが、分かる。
私自身の印象は、確かにロンドンは国際的で、ここにいると、欧州、アメリカ、中東、アフリカなどの問題が身近に感じられる。アジアは主に中国に関する関心が非常に高い。中国の記者で、取材のアポイントがとりにくい、とあったが、逆に私はとりやすいように感じてきた。ただし、休暇をばらばらの時期にとる人が多く、予期せぬときに相手が出社しておらず、連絡がつかない、という事態は何度も経験した。日本人としては、日本にもっと興味を持って欲しい、と思っている。