小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


by polimediauk

タイムズ紙のブッシュ大統領インタビュー


9・11の重み

 6月30日付けのタイムズ紙にブッシュ米大統領のインタビュー記事が載っている。

 途中から一問一答になっており、インタビューの全部を書き取ったものもウエブサイトからダウンロードできるようになっている。 (www.timesonline.co.uk)

 2001年9月11日のテロの衝撃と「テロの戦争」部分のみを紹介したい。

 タイムズ:大統領、昨晩、あなたはイラクと9・11のつながりについて言及されましたね。しかし、イラクは聖戦者たちの避難場所になっているという証拠があります。CIAの調査書でも、(イラク戦争開戦以前よりも)危険な場所になっているとそうですが?

 ブッシュ大統領:そうは思わない。反対だと思う。テロの戦争に勝つということは、戦場に出かけて、そこで終わるということだ。そうなったと思う。「よし、闘おう、ここが戦場だ」と。私が言いたいのは、憎悪のイデオロギーがあって、このイデオロギーの下、過激派は日々人々の生活を、何百人ものイスラム教徒の生活を、支配する世界観を持つ。彼らは、中東の政府を倒したいという意志を持っている。アメリカに撤退してもらいたいと思っている。暴力を利用することに関心を持っているのだ。結局、9月11日以降、何が起きたかを見てほしい。タイムズの読者にわかって欲しいのは、アフガニスタンにまだタリバンがいたら、一体どうなっていたか、という点だ。

 私たちはアメリカを守る、そしてサダム・フセインを倒すということを決定した。聖戦者たちはイラクに来て、私たちと戦う決定をした。理由があったのだ。もし私たちが、アフガニスタンでそうしたように、イラクで成功すれば、彼らのイデオロギーにとって、大きな打撃となる。〔米軍の中東担当コマンダーのジョン・〕アビザイド氏が、テロの戦争が始まったばかりのころ、とても興味深いことを話してくれた。アビザイド氏は能力がある男だ。アラブ系アメリカ人で、深みと理解力のある人間だ。アフガニスタンとイラクでアメリカが勝てば、それは終わりの始まりだ、と彼は言った。テロの戦争のことを話していたときのことだ。もし勝たなければ、始まりの始まりになる。これが私の見方だ。

 テロの戦争を直接的に体験したのが、9月11日だった。前回、欧州に行ったとき、欧州の多くの人が悲しみの瞬間として9月11日を捉えている、と言った。「瞬間」なのだ。私にすれば、9月11日は、私がそして多くのアメリカ人が世界観を変えることになった大きな戦争の結果としての攻撃だった。世界のありようを変えた歴史的瞬間の1つだったと思う。私がこの大統領執務室にいる限り、9月11日の教訓は決して忘れないし、冷血な殺人者たちに対する地球規模の戦争の中にいる。

 現在のイラクではこうした戦争が起きている。アメリカは、イラクで勝つ。勝つ、というのは、1つには(聖戦の首謀者を)探し出し、裁きを受けさせるからだ。2つめにはイラク人をトレーニングして自分たちで戦えるようにする。イラク人たちは外国軍が国内にいてほしくないと思っている。自由を目指す前進を止めてしまうからだ。人々は自由になりたがっている、という考えが正しいものであることは、800万のイラク人が選挙で投票したという事実が実証してくれた。

 率直に言って、世界中の知的エリートたちから「全員が自由になるわけはない」と言われたが、私はこうした考えを受け入れることを拒否してきた。そう思わないからだ。もちろん、ご存知のように、露骨な理想主義者だとレッテルを貼られているのは知っている。

 しかし、私はそんな露骨な理想主義者なのだ。それは、人々が、宗教やどこから来たかには関係なく、自由になりたいと思っているだろうと信じているからだ。中東の女性たちにはもっと力が与えられるべきだと思っている。最終的には聖戦主義者の暴力を生み出してしまうような、望みのない状況を作り出す政府を受け入れることはできない。あるイデオロギーを究極的に打破するには、より良いイデオロギーを与えることだと強く信じている。歴史がこれを証明してきた。

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 心から、自分のやっていることが正しいと信じている、という部分が伝わってくる。

 このインタビューと直接関係はないが、9・11の衝撃は米国に住んでいる人でなければ、本当には分からないのではないだろうか?イラク戦争に賛成するのも反対するのも、米国に住んでいる場合には賛成・反対の重みが違うように思う。(もちろん、イラクの人はまったく違うレベルで様々な深い思いがあるだろう。)
 
 インタビューの中の、ちょっとしたこぼれ話を付け加えると、G8サミットが7月6日から8日までスコットランドで開催される。ブッシュ氏も出席するわけだが、食べたくないものは、スコットランドの有名な食べもの1つ、ハギス。これは、羊の臓物を刻んで胃袋に詰めて煮込んだ料理だが、「どうやって作られるかを聞いてから、食べたくなくなった」という。男性がはくキルトもはきたくないそうだ。ゴルフをする時間はとれそうにないので、せめて、ローラ夫人とスコットランドの霧の中を散歩したいそうだ。

 
by polimediauk | 2005-06-30 18:45 | 政治とメディア