ロンドンのテロ3 英国生まれのテロリスト?
ある可能性
BBCの7日の夜の時事解説番組「ニューズ・ナイト」の外交・防衛問題記者のマーク・アーバン氏が、諜報機関のMI5の筋から聞いた話として、ロンドンでのテロの加害者(たち)は、英国生まれのイスラム系移民か、あるいは英国に長年住んでいる人である可能性がある、とした。つまり、英国籍を持っているか、永住許可を持っているような人だ。
これで、「外国から来たテロリスト」という線は消える「可能性」が出てきた。まだ憶測の段階ではあるが。
一方、アル・カイーダかあるいはアル・カイーダに若干でも関連しているグループ・人物がテロを起こした、という可能性はストロー外相も既に、G8サミットが開催されているスコットランドで、BBCの取材に答える中で、明かしている。これが事実・真実とは限らないが、少なくとも英政府のトップレベルはそう見ている、ということだ。
これの根拠になったイスラム系のウエブサイトが、本当にアル・カイーダと関連しているのかどうか、「まだ分からない」とアーバン記者は続けた。
一方、ブレア英首相はというと、「英国生まれの」あるいは「英国に長年住んでいる」「イスラム教徒」で、「ごく一握りのイスラム過激派」がテロリストであると、信じているようだ。7日中に3度テレビで声明を発表したが、この点に言及しているからだ。もちろん、これも真実・事実かどうかはまだ分からないが。
英国には、「一握りの」「若い」「過激派イスラム教徒」たちが存在していることは確かで、一般的には、中流家庭で育ちある程度良い教育を受けた若者たちが、インターネットやモスクでの説教を通じて「目覚める」というパターンがある。
これは英国だけに限らず、欧州全般の1つの典型的パターンだ。
続けて「ジス・ウイーク」という時事物のBBCの番組を見ていると、元保守党の閣僚だったマイケル・ポーティロ氏が出ている。ポーティロ氏も他のコメンテーターも言っていたが、「ロンドン・イギリスは、IRAなどのテロに慣れている。今回のテロも、あるだろうということは予想されていて、いつあるか?が問題だった」と指摘。
警察や鉄道関係者も、「いざという時に備えて」十分に訓練をしてきた、という。
ポーティロ氏は、「今回のテロで英国人が生活様式を変えるとは思えない」と、割と「覚めた目で」事態を見ている、と分析した。
同番組に出ていた、元クリントン米大統領のアドバイザー、ジェームズ・ルービン氏が、「今回のロンドンのテロで、G8の会議の雰囲気ががらりと変わるだろう。アメリカでの2001・9・11の時のように、各国のリーダーたちがまた熱く一丸となるだろう」と予測。「最近は、アル・カイーダに対するテロの戦争の機運が、若干薄まっていた。今回が、また盛り上がるためのいい機会になる」。
ポーティロ氏や他の出席者はこれに同意しなかった。
G8が開かれているスコットランドで、米国民向けに記者会見をしたブッシュ米大統領は「テロの戦争」の必要性を再度繰り返していたが、「テロの戦争」war on terrorとは、「テロリズムに対する闘い、テロの撲滅」とは若干違って、ブッシュ氏が9・11の後に言い出した概念・・・といったような意味合いもあるかと思う。(この場合、特定の国が敵となる場合が多いようだ。)
自分の国でテロが起きるのを防ぎたいというのは誰しもが思うであろうが、フランスにしろ、英国にしろ、ロシアにしろ、ドイツにしろ、それぞれの国にはそれぞれの利害があって、選挙民にもそれぞれの思いがある。合法か違法かでもめにもめたイラク戦争、自爆テロが増えるばかりのようなイラクの現状の前では、2001・9・11の直後のように、G8のリーダーたちが、アメリカの下に(あるいは英国の下に)「熱く」結束する・・という予想は、私自身、英国にいると、どうも夢物語に思えてならなかった。
「ジス・ウイーク」の1つ前が「クエスチョン・タイム」という番組で、南アフリカ共和国のヨハネスブルグからの放映。これは、会場に視聴者とパネリストを呼び、視聴者が政治家などのパネリストに思い思いの質問をする、というもの。
G8が議題に上ったが、かつてアフリカ諸国を植民地化していた英国に対する厳しい批判が、視聴者から相次いだ。「アフリカ支援というけど、今アフリカが貧しいのは、英国が、植民地時代にたくさん盗んでいったからだよ」と言ったのは若い女性だった。
また、ムガベ大統領のジンバブエで人権蹂躪がおこなわれている、とするにも関わらず、何故、英国は難民申請者をジンバブエに送り返そうとしているのか、「言行不一致」と指摘された。
なかなか迫力があり、中国で反日感情が高かったときに、二つの国の国民同士が直接意見を交換できるような生番組があれば、随分ガス抜き(古い言葉だが・・・)ができたのではないか?と想像した。