小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「なぜBBCだけが伝えられるのか」(光文社新書)、既刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)など。


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ロンドンのテロ4 ブレア首相の認識


「ルーツを解決する」

 BBCの朝のラジオのニュース番組「TODAY」で、ブレア英首相が、午前8時40分頃から(日本時間午後4時40分頃)インタビューされた。番組のウエブサイトhttp://www.bbc.co.uk/radio4/today/listenagain/で後で聞けるようになると思うが、最後の数分でテロの犯人に関する言及があった。

 まず最後のコメントから紹介すると、ブレア首相自身は、犯行を誰が起こしたのかに関して、現在のところは「分からない」。しかし、「アル・カイーダ系」である証拠がある、と述べている。

 その少し前のコメントでは、「イスラム系」「過激派」であることを想定して話が進む。

 そして、「実際に起きた問題の解決も重要だが、ルーツにある問題を解決することが重要だと思った」と述べている。

 「ルーツにある問題とは?」と聞かれ、今回のテロが起きるような環境、状況を解決することだ、として、具体的には「中東問題」(パレスチナ、イスラエル問題)と、「社会の中で過激派が生まれるような状況」というようなことを答えている。

 つまり、社会の一員として受け入れられていること、孤立化させないこと、など、英国のイスラム教徒のコミュニティーに属する若い人が過激派にならないように、という意味を示唆した。

 ここを聞いて、私は少し、一安心した。つまり、衝撃度は随分違うかもしれないが、2001・9・11以降、ブッシュ大統領が「テロの戦争」を提唱し、「テロには武力で対抗する」という態度を示したのとは、大きく違うからだ。
 
 イラク戦争を起こしたから、ロンドンのテロが起きたと思うかどうか?を聞かれ、「ロシアでもベスランのテロが起きた。バリ島でもテロがあった。イラク戦争があったから、ロンドンテロが起きたとは思わない」として、しかし、2001・9・11のテロから始まった、続けた。(しかし、もちろん、「ルーツになる」ような問題は、これ以前からあったわけだが。)

 日本の何人かの人からも、イラク戦争と今回のテロの件のつながりを私自身聞かれたが、確かにこれを言う人も(政治家のギャロウエイ氏など)いることはいるが、イラク戦争は2003年3月だった。2005年7月のテロに直接結びつけるのは、いささか苦しい。開戦前夜までにかなり反対派がデモを起こしていたが、もし起きるとすれば、あの時か、「違法の戦争だった」という議論が盛んだった2004年であれば、また違ったかもしれないが・・・。イラクが泥沼状態に陥っていることは確かであろうし、イラク問題で今回のテロ、というつながりが「遠因」といえないこともないだろうが、「何故、今?」という観点からすると、ややつながりが弱いと思う。

 
by polimediauk | 2005-07-09 17:17 | 政治とメディア