小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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ロンドンのテロ6 実行犯が自爆

何故、犯行に走ったのか?

 気のせいかもしれないが、日本の新聞・通信社の今回のロンドン・テロに対する報道が、かなりすばやい。先を争って報道しているようだ。私がさっと見た限りで、一番早くて詳しかったのが読売新聞だった。以下が日本時間が午前1時50分ごろのもので、産経や時事通信が2時から3時ぐらいの報道になっていた。(読売よりも早いところもあったのだろうか?)

 以下が、とりあえずの状況としてはすべて入っている。この記事後に、「現地情報」(テレビからとった分析と若干の最新情報)も入れてみた。

 まず、基本情報だが:


英テロ実行犯4人特定、全員が自爆死か
 【ロンドン=土生修一】ロンドンの同時爆破テロ事件で英捜査当局は12日、地下鉄3件、バス1件の計4件の爆破事件の実行犯と見られる4人すべてが、現場で死亡した可能性があると発表した。

 うち1人については死亡をほぼ断定した。残り3人については、確認作業を行っている。

 この4人のうち3人は英国中部ウエストヨークシャー州の出身で、残り1人の出身地は不明。

 捜査当局は、事件に関連して、6件の逮捕令状をとった。

 当局によると、監視カメラの映像などから、実行犯の4人は、事件発生当日午前8時半、列車でロンドンのキングスクロス駅に集合したことが分かった。それぞれ爆発物を持って地下鉄とバスに乗り込んだと見られる。所持品や検視結果などから1人は、オルドゲート駅で死亡したことが分かった。これにより、4件とも自爆テロの可能性が強まった。

 また捜査当局は12日、同事件に関連した疑いで同州出身の男性1人をロンドン市内で逮捕した。

 このほかにロンドン北郊のルートン駅近くで、犯行に使われたとみれる車1台を押収した。

 英PA通信は、逮捕されたのはパキスタン系で英国生まれの20代前半の男性だと報じた。

 逮捕者の出身地である同州リーズ市周辺は、イスラム教徒が多い地域で、同市からは、今回の地下鉄爆破事件の現場であるキングスクロス駅へも鉄道で直行できる。

(2005年7月13日1時51分 読売新聞)


 「現地情報」だが、私自身、及び知人などの反応を聞いてみても、実行犯の身元が大体判明した時点で、いろいろ共通した感想が出てきた。

 まず、かなりショックを受けている。思っていた通り、イスラム系であること(パキスタン人ということで、ほぼイスラム系と分かる。最初から決め付けているわけでなく、前後の報道、報道の仕方、などから、あきらかにイスラム教徒であることが分かるのだ)、英国籍保持者であること、若い男性であること、など、最初からそう言われていたが、分かってみて、ますますショックである。

 どうしてテロを起こしたのか、その社会的バックグラウンドなどが、英国に住んでいる人だと、ぴんときてしまう。ある程度いい教育を受けた人である可能性もある。恐らく、近くのモスクかあるいはインターネットで過激思想、聖戦・ジハード、自爆テロなどに心酔していった・・・、など。

 つまり、「すぐ隣にいたかもしれない」「普通の」人たち、男性たち、なのである。

 実行犯は亡くなっている可能性が高い(1人逮捕された人がいるが)ということで、「本当はどうだったのか」を本人から聞き出す可能性もなければ、テロを起こした罪を、禁固刑でつぐなわせるといった可能性も消えた。

 遺族からすると、怒りの矛先がないのである。謝罪も、改心も、ざんげも、何もない。やりきれない。

 どうやったら、若いイスラム系男性たちが、このような行為に及ばないようにできるのか?

 午後7時からのチャンネル・フォーというニュース番組で、ジョン・スノーというキャスターが、「何故こういうことが起きたのか?若いイスラム系男性の心に何が起きたのか?」を必死になって聞き出そうとしていた。

 ゲストの1人が、タリク・ラマダンTariq Ramadan というイスラム教の学者だった。私は詳しく知らないが、米国政府から入国を拒否されている人だそうである。

 彼の説明によれば、2つの理由がある。1つは、「こうした人々は、イスラム教を正しく理解していない。いかなる理由でも私はテロという犯罪行為を支持しない」として、もう1つの理由は、「イスラム系の青年たちは、仕事がなかったりなど、社会的な問題を抱えている。これを解決しなければならない」。

 そして、こうしたテロが起きたときに、「宗教の問題」として、片付けてしまってはいけない、と繰り返した。

 彼の説、及び英国や欧州に住むイスラム系の人々の境遇をここで詳しく書くことができないが、それぞれ、深い。

 私が最近行ってきたオランダに比べれば、英国のイスラム教社会は、はるかに発言力を持っていると思うし、街中にいても風景に「なじんで」おり、それほどネガティブな環境で生きているとは思えないが〈自爆テロを起こすほど、という意味だが)、それでも、やはり、「違う」「許せない」と思う部分を見つける男性たちもいるのかもしれない。若い人は19歳ぐらいであったという。


 しかし、それにしても、社会に対する不安、不満を「爆弾テロ」という形で実行にうつす・・・ここがどうも、何らかの幻想にとりつかれている、誰かに「だまされている」ような気がしてならない。自分自身の、あるいは家族の、コミュニティーの、国の・・・様々なレベルの問題に対する怒りを、「テロ」で解決できる、何かを達成できる・・・と教えたのは、一体誰なんだろう。

 思考のジャンプをさせたのは、誰なのか?

 一方、議会の建物が、現在厳重警備中で誰も中に入ったり外に出たりできなくなっているという。これも午後8前後の話だが。

 

 

 
by polimediauk | 2005-07-13 05:09 | 政治とメディア