小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「なぜBBCだけが伝えられるのか」(光文社新書)、既刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)など。


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ブレア氏の会見が今日だ!


生のブレア首相とは?
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ブレア首相の会見がイギリス時間(1月6日)の朝の10時から、始まる。日本時間の午後6時からで、おそらく1時間強ほど続く。

 興味のある方は、BBCのオンラインのニュースサイトhttp://news.bbc.co.uk/1/hi/default.stm を開くと、会見を生中継で見れる。毎月一度開かれる、定例会見だ。

 日本の小泉首相もアメリカのブッシュ大統領も定例会見はないようだから、めずらしい、ということになるのだろう。

 出席者は、殆どが国会記者証を持っている英ジャーナリストたちだが、外国人報道陣も出席できる。私が英外務省担当者から聞いた話だと、国会記者証を持っていない外国人記者には数席用意されているという。

 しかし、首相官邸の広報担当者のさじ加減でどうにでもできるようだ。外国人報道機関の世話は外務省の担当部署が見ているが、希望者が多いので、抽選になる。

 私はしばらく抽選から外れてばかりだった。しかし、例えば政治報道が専門の記者でも特集面担当の記者でも、一律に抽選という方法は公正な方法とはいえないのでないか、と外務省担当者に抗議をしたことがある。

 その後、首相官邸の広報担当者に別件で取材を何度かし、顔を覚えてもらった。その年、所属している外国プレス協会のクリスマス・パーティーで、担当者に「出たい」と言ったら、「何とかする」と言われ、その後は、結構当たる確率が高くなった。

 イギリスは、日本同様、「誰かを知っている」ということが重要なコネ社会だ。

 たいてい昼頃からの会見が多いが、始まる少し前、各国のジャーナリストたちがばらばらに集まってくる。入り口で各自の携帯電話をテーブルに置く。後ですぐ分かるように何らかの目印――ポストイットなどーーをつける人も多い。会談を上って会見室へ。

 30-40名ほどが入る部屋の座席は、基本的にはどこに座ってもいいのだが、最前列はテレビでよく見かけるイギリスの政治記者たちが座る。最初の質問も決まって、ここに座っているイギリスの記者を、首相があてる。

 会見は、ブレア首相が10分ほど何らかのスピーチをしてから、質疑に入る。質問をするには、まずブレア首相の目に留まらないといけない。

 ひとしきり国内の記者をあてると、ブレア氏は中東、欧州などを中心に選ぶ。アジア系は比較的視野に入らないようだが、全体の数が少ないのかもしれない・・・。

 
―どんな人か?

 会見場の生のブレア氏は、どんな人か?

 ジャーナリストたちとのやりとりでは、気さくというか、親しみやすい、フレンドリーな調子で話す人だ。砕けた言葉で話す・・・というのではなく、「だからそれは君も分かっている通り・・・」、「そうやって僕から言葉を引き出そうと思っても無駄だよ」など、仲間内で話すような雰囲気がある。仲間・・といっても、仕事仲間だ。友達では、もちろんない。

 話していて、ある言葉に二重の意味があることに気づき、自分で吹き出してしまう場面もしょっちゅうある。

 しかし、結果、ブレア氏から本音を引き出せたか?あるいは思わず、失言したか?というと、それはゼロと言っていいだろう。

 かつて弁護士だったというだけあって、水をももらさぬ答弁になる。頭が良くて弁が立つ。

 したがって、1時間強という長い時間をもらいながら、かつ、こうした会見が毎月開かれているという、メディア側にすればものすごい恵まれた状況にいながらも、公式見解以外の何ものも引き出せなかった・・・という結果になるのだった。

 それでも、何故ジャーナリストたちは会見場に行くのか?

 「万が一」、ブレア氏が本音を言ってしまうかもしれないから。1つ1つの言葉、表情に、ある政策の行方のヒントをつかみたいから。何か新しいことが出るかもしれないから。他のジャーナリストがキャッチしたのに、自分がそこにいないことで、何かを逃したくないから・・・・。などなど。理由はいろいろある。

 何かがあっても、なくても、とにかく、「その場にいること」が肝心なのだ。

 6日の会見で、ブレア氏が嫌がるだろうけれど記者たちが執拗に質問するだろうトピックの1つは、アジアの津波の件で、何故休暇中のブレア氏が何のメッセージも出さなかったのか?になりそうだ。

 ・・・多分、今回も失言や本音は出そうにないが・・ 。

(写真はBBCのニュースサイトより。)
by polimediauk | 2005-01-06 09:23 | 政治とメディア