同時爆破テロを、在ロンドンの各国の記者たちはどう受け止めたのか? 雑談から
「もう記者の仕事はしたくない」
18日、ロンドンにある外国プレス協会でBBCの記者たちと協会メンバーのジャーナリスト達との懇親パーティーがあった。雑談めいた話になるが、今回の爆破テロに関し、それぞれの視点があった。
インドのタイムズという新聞の特派員で10年ほどロンドンに住む女性記者は、爆破テロの実行犯とされる4人のうちの3人がパキスタン系英国人だったということで、「英国のパキスタン人は自分たちでコミュニティーを作り、孤立化している。年齢の高い人は英語が旨く話せない人もいる。多くがパキスタンでもどちらかというと田舎から来ているので、都市生活に慣れていない。イングランド北部のブラッドフォードなどの『アジア人』コミュニティーを訪ねてみて欲しい。貧しくて、固まって住んでいるから、通りにいると、怖くなる」。随分と偏見に満ち満ちた意見に聞こえるが、「インドの」記者の発言ではこういう風になってしまうのだろうか。
モロッコ人のジャーナリスト(在英30年ほど)は、「随分コメントを聞かれて、ものすごく忙しかった。何故今回の事件が起きたか?ああいう青年達は社会から疎外されている部分がある。でも今回、ある意味では外国のテロリストでなくてほっとしたんだ。英国人だったから、これからどうするべきかを考えるいい機会になると思う。今回の青年たちは、とても頭がいい。大学に行っているし、G8が開催されているときに爆破テロを行った。おかげで、G8が全く目立たなくなった。目的を達した。ものすごく頭がいいやり方だ。これからも起きるか?起きない、とは言えない」。
イラン人の女性ジャーナリストは、「あの青年達はまだ子供のようなもの。裏で操る外国のテロネットワークを撲滅しない限り、駄目だ」。
日本人特派員「テロ事件勃発以来、ものすごく忙しい。時間を争って原稿を出している。競走はかなり激しい。あまり寝る時間がない」。
スペインのラジオのジャーナリスト「英国人のテロ事件後の反応に驚いた。スペインだったら、人々は泣き叫ぶ。英国人は冷静だと思った」。
フランス人の経済紙のジャーナリスト「普段は英仏間でいろいろあるが、今回は気持ちが一つになったと思う。大戦の時を思い起こさせた。それは、窮乏に耐えながらも、一丸となって戦う、というスピリット」。
香港のテレビのジャーナリストは「朝の9時ごろ、あのテロが起きたとき、もう会社で働いていた。あわてて現場にかけつけて、レポートした。すごい状況になっていた。もう記者の仕事はしたくない。ああいう現場をリポートするような仕事は、いやだから。」
昨日のブログで書いた、BBCの「ニューズナイト」で、オランダのテレビのプロデューサーにインタビューをしたキャスター(こちらではプリゼンターという)のギャビン・エスラー氏もいた。
エスラー氏がインタビューしたのは、昨年殺害されたオランダの監督テオ・ファン・ゴッホ氏の友人だったプロデューサーのハイス・ファン・デ・ウエステラーケン氏。殺害実行犯は若い移民2世で、イスラム教過激派グループのメンバーとされる男性だった。「自国で生まれ育った」「イスラム教徒の移民」という点が、英国とオランダの事件の共通点だ。
エスラー氏は、どうもインタビューがうまくかみ合わなかったと言い、「ファン・デ・ウエステラーケン氏は全く別なことを考えているようだった」と述べた。「あまりオランダの事件のことは知らないが」と付け加えた。
英国政治やメディア業界では、他の欧州の国に関する知識や関心が意外と低い(あえて「意外と」とつけるが)ことに、やや驚く。外国では中東やアフリカなどに関する知識のほうが深いかもしれない。アメリカや、欧州でもフランスなどだとしょっちゅう話題に上るがオランダとなると、一気に知識・関心は低くなるようだ。例えばだが、フランスで何かの件で取材したいとき、英ジャーナリストらに聞くと、誰かしらを(少なくとも知っている誰かを)知っている。しかし、オランダとなると、また話は違ってくる。