小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「なぜBBCだけが伝えられるのか」(光文社新書)、既刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)など。


by polimediauk

ロンドン・テロと市民記者ー2


「ニュースはいつでもどこでも起きる。あなたに私達の目になってほしい」

 一体どんな写真、画像、動画が視聴者から送られてきたのか?

 BBCに送られた分の一部は、以下のアドレスで見ることができる。

 http://news.bbc.co.uk/1/hi/in_pictures/4660563.stm

 以下のアドレスでは、video と書かれた箇所をクリックすると画面が開く。右横にあるリストから選ぶようになっている。

http://news.bbc.co.uk/1/hi/technology/4663561.stm

 BBCは常日頃から、視聴者・読者からのニュース情報を募集してきた。「あなたのニュース、あなたの写真」というタイトルがついたBBCオンラインのサイトを見ると、「ニュースはいつでもどこでも起きる。あなたに私達の目になってほしい」と書かれている。

 そして、どんな情報が欲しいのか、送るときに気をつけることなどのアドバイスがある。

 最後は、「条件」の項になる。BBCにニュース情報を送るときは、この条件に合意しなければならない。

 「BBCニュースに情報を送るということは、その情報・材料の使用権をBBCに与えることに合意したことを意味する。情報・材料は、BBCが望む形で、他の世界中のメディアを通して、使用料を払わずに、出版するあるいは他の方法で使用される。(途中略)」「しかし、あなたには著作権が残されている。BBCはできうる限りあなたの名前をBBCのウエブサイト上に掲載する。BCは、送られてきた全ての写真、ビデオを使うことを保証できず、あなたのコメントを編集する権利を持つ」。

 これを踏まえて、BBCオンラインのピート・クリフトン編集長と読者とのやりとりを紹介したい。

 毎週金曜日、クリフトン編集長はコラムを書いているが、読者からのコメントも同時に募り、双方で議論をするような形をとっている。

 七月二十九日付のコラムでは、以下の発言をしている。

 「BBCは、テロ発生から数万のメール、ビデオ画像、静止画像、様々な情報などを受け取ってきた。読者からのこうした投稿は、決して付け足しの出し物ではなく、BBCのニュース報道の中心的役割を果たした」

 「批判も出てきた。サイトの読者の多くが、爆破が起きた時点で、読者からの情報を求めるとは、何事かという苦情の声をあげた。写真を送って欲しいと呼びかけることで、その人を危険な状態に置くことになるかもしれないし、写真を撮られたほうのプライバシーの問題もある。携帯電話で情報を送ることで、緊急時に必要とされる通信網を混乱させることにもなりかねない、と」

 「まず最初に言いたいのは、読者からの投稿を募る、というのは新しい現象ではない。大きな事件に遭遇した人々は、これまでにも、ビデオや写真を送ってきた。写真やビデオをとれる機械を携帯する人々が増えているし、何か起きればこうした携帯機器で写真をとるのが自然な行為になっている」

 「事故の様子を伝えるビデオや画像を、BBCは欲しい、というべきだろうか?私は、そうするべきだと思っている。こうした画像のおかげで、明確で正確な視点を人々が持つことができる。写真通信社からこうした画像を得ることができなかったのは、カメラマンが現場にいなかったためで、また、事件発生後直ちに、当局によって外部の人は現場に入れないようにされたからだ」

 「一般の人から画像を受け取った後、BBCは通常の編集ガイドラインに照らし、使うか使わないかを決める。もしショックが強すぎる、プライバシーの侵害がある、と見なせば、使わない。一般の人々を危険な目にあわせようとは思っていないし、市民たちがBBCのために傷ついた人のプライバシーに鈍感であってほしいとも思っていない。BBCが使った画像は編集ガイドラインにあったものだったと思っているし、読者がBBCと共有したいと思った画像を分別を持って使ったと思っている」
by polimediauk | 2005-08-24 16:28 | 英国事情