小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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情報が欠けているかもしれないと思うとき

 ロシアのプーチン大統領と言論の自由などの関係なのだが、一度、たまたま見たNHKの夜のニュース番組で、やや物足りないものを感じたことがあった。(ベスランでのテロのニュースをトピックにしたものだった。)プーチン大統領への批判で、やや物足りないような、何か情報が欠けているような思いがしたのだった。NHKのほかの番組あるいはNHK以外の別のテレビ局では、このときたまたま目にしたニュース報道よりも、深いものが報道されている可能性はおおいにあり、たまたま私が日本にいなくて見れなかった可能性もある。

 ・・・というようなことを以前このブログで書いたとき、稲垣さんというジャーナリストの方からのコメントがあり、はっとする思いがした。

 つまり、英国では(米国でもそうかもしれない)、プーチン大統領に関しては、「人権を無視する人」「報道の自由を許さない、暴君」というイメージ、あるいは批判があり、これはしょっちゅうテレビやラジオ、新聞で報道されている。

 英国のこうした見方があたっているのかどうか、ロシア語が読めないので、本当には、自分自身は分からない。しかし、こうした批判を裏付ける報道が大量にあり、ロシアのある新聞社の編集長がいかに当局によって弾圧されたかをつづったドキュメンタリードラマなどを見ていると、控えめにいっても、「いくばくかの真実」がある、と一応判断するしかない。

 NHKのニュースを見たときに、プーチン大統領のこうした実情あるいは定説となっている批判がまったく欠けている様に感じ、もしかしたら、日本では「批判」が十分に報道されていないのではないか?と心配になった。「故意に」批判的部分を出していない、ようにもやや見えた。現地からのレポートが入ったものだったので、現地の特派員だったら、分かる(はず)、と思ったからだ。

 このNHKの報道そのものがどう、ということではないのだが、「報道されるべきことが十分に報道されていない」ようなことがあるとしたら、さびしいなあと思ったのだった。

 稲垣氏のコメントによると、、「人権を無視する人」「報道の自由を許さない、暴君」というイメージは:

 
これは、正しいイメージだと思います。実際ロシアのテレビ局は完全にプーチンに操られていて、学校占拠事件でも5分ほど事件のニュースを流しただけで、あとはバラエティとかドラマとか通常の番組を流してました。それを「ロシアのジャーナリズムの死だ」と批判したイズベスチヤ紙のシャキーロフ編集長は、その翌日、プーチンの意向でクビにされました。


また、「人権を無視する人」というのも本当です。学校占拠事件より先に、モスクワで劇場占拠事件というのがあった際も、特殊部隊が「神経ガス」をまきながら突入して犯人たちを射殺したんですが、ガスで人質の多くが人事不正に陥り、120人以上が病院で亡くなりました。しかも病院側が治療のため部隊にガスの種類を教えてくれと頼むと、「機密だから教えられない」との返事で、人質たちは見殺しにされたのです。ノーバヤ・ガゼータ紙のアンナ・ポリトコフスカヤ記者によると、この毒ガスの選定はプーチン大統領自らが行なったとのこと。(彼女の著書「プーチニズム」より)

僕も実はフリーライターをしてまして、ノーヴァヤ・ガゼータの編集長にもインタビューしたのですが、ロシアは今、ますます人権がなくなり独裁が強まっているとのことです。「テロとの戦い」を口実に州知事まで大統領が自ら指名できるようにしてしまったし…例を挙げたら枚挙に暇がありませんが…


 ーーーコメント引用終わりーーー

 私がはっとしたのは、稲垣さんのご指摘部分は、私が英メディアで見た、知った(従って、英国民の一般的知識ともなっている)プーチン大統領やロシアの状況にぴったりと符号するからだった。

 
by polimediauk | 2005-09-18 14:49 | 欧州のメディア