「ガーディアン」ベルリナー判他 新聞業界「エコノミスト」の見方
http://digital.guardian.co.uk/
ガーディアン東京特派員から本物を見せてもらった。ネット上で26日分まで無料で読めたのだが、やはりネットで見るのと、実際に手にした感じは違う。
ネット上の方が、紙面(画面)のカラーが鮮やかで、きれいだったように思う。紙で見ると、全体的に、やや抑え気味に見える。センスが良い感じにも見えた。今日の紙面を若干載せてみる。



やや抑え気味でセンスがいい感じ・・というのは、目立つには、単純に考えて派手な色を使え ばいいのだろうが、そうしなかったのかな、と思ったからだ。やはりプロのデザイナーの人がやって、統一感を出したのだろう。これからも、おそらく変わっていくはずだ。(日本の編集デザイナーの人から見たら、ガーディアンの新紙面は、どう見えるのだろう?いつか誰かに取材させていただきたいものだが・・・。)
さて、少し時間が経ってしまったが、ガーディアン新紙面までの経緯に関して、「エコノミスト」(9月10日号)が短い記事を出していた。以下は大体の訳。(Paper Tigersというタイトルの記事)
「・・・ブロードシート(日本の朝刊サイズ)から小型タブロイド判に大きさを変更した英タイムズ紙は、今月から価格を5ペンス(10円)あげて、一部60ペンス(120円)となった。さらに、CITY A.M.という名前で、経済記事を読む読者のための新しいフリーペーパーを発行している。
表面的に見れば、タイムズ紙の値上げは自信の表れ、といえるかもしれない。ニューズ・インターナショナル社のレス・ヒントン氏は、タイムズはジャーナリズムに投資をしてきたので、価格をあげても、発行部数にはほとんど影響がないのだ、という。
しかし、新聞の価格上昇は、メディア王(でタイムズを所有している)ルパート・マードック氏が、マーケットシェアを得るために巨額のお金をつぎ込んだ新聞の安売り競争が終焉したことも意味する。
1993年、マーッドク氏はタイムズを一部30ペンス(60円)に値下げ。発行部数は2倍になった。犠牲になったのが他の2つの高級紙(クオリティー・ペーパー)インディペンデントとデイリー・テレグラフだった。
その後、いわゆるクオリティーペーパーと呼ばれてきた新聞の読者は激減し、生き残っている新聞は、価格がいくらかなどあまり気にしないのかもしれない。それに、マードック氏は、新聞でお金を失う事にあきた、という点もあるかもしれない。ある内部事情を知る人の話によれば、「5ペンス(10円)価格をあげたからといって、損失がなくなるわけではない。しかし、収益をあげるための重要な一歩だ」。
新聞を買って読む読者は減ったが、ただで読む読者は増えている。
今年年頭、マードック氏は、アソシエーテッド・ニューズペーパー社が発行している日刊のフリー・ペーパー、メトロのせいで、氏が発行するタブロイド氏のサンが売れなくなっている、と不満を述べた。アソシエーテッド・ニューズペーパー社は、有料のタブロイド紙デイリー・メールを発行している。
また、無料新聞を読む若者が増えているならば、こうした人々はそのうち有料の新聞を読むようになるのでは、と期待する人もいる。
ほとんどのフリーペーパーは(通常の有料新聞のように)総合的トピックを扱っており、経済や金融に特化したフリーペーパーがビジネスマンなど専門職で働く人々の気を引くのはかなり難しい。
CITY A.M.のチーフ・エグゼキュティブのジェンス・トープ氏は、ファイナンシャル・タイムズが失った読者をとりこみたい、としている。ファイナンシャル・タイムズはピアソン・グループの傘下にある。ピアソン・グループはエコノミストの所有者の一つでもある。
トープ氏によれば、ファイナンシャル・タイムズは、総合的なブロードシート紙になりすぎて、経済や金融に集中しなかったために、読者が離れた、という。
しかし、今のところ、CITY A.Mは、フィナンシャルタイムズどころか、どの有料高級紙の経済面と比べても、記事の深みや真剣さにおいて、まだまだ、といったところだ。
世界中でフリーペーパー「メトロ」(英国のメトロとは別物)を発行している、スエーデンの会社メトロ・インターナショナルは、英国金融街向けに、無料の経済紙を発行できないものか?と、策を練っていると言う。CITY A.Mのトープ氏は、かつてメトロ・インターナショナルで働いていた。果たして、氏のかつての会社がCITY A.Mをしのぐような無料の経済紙を発行するようになるのだろうか?
「ガーディアン」が全ページがカラーのベルリナー判を発行することにしたのは、若者にアピールすることがねらいだ。若者、特に女性たちは、ブロードシート紙のかさばる大きさ・厚さを嫌うといわれてきた。小型タブロイド判になったインディペンデントやタイムズ紙は、見事発行部数を伸ばすことができた。
しかし、「同じ方向に進んだとしたら、1面を侮辱するような事につながっていったと思う」というのは、ガーディアン・ニューズペーパー社のキャロリン・マッコール氏だ。「1面に入る記事や見出しが減るから」だ。(注:1面に1-2本の記事をセンセーショナルな見出しで載せる、というのが大衆紙・タブロイド紙のやりかた。ガーディアン編集長ラスブリッジャー氏は、タブロイドにはなりたくない、という点を繰り返し表明している。これは効果的1面を作っているインディペンデント批判でもある。)
新たな印刷機械を入れ、マーケティング費用を入れると、ガーディアンは新フォーマットに8000万ポンド(約159億円相当)をかけた。ベルリナー型への移行を成功と呼ぶには、かなり部数を伸ばす必要があるだろう。
(終わり)(最初と最後にややカットあり。)
ー忘れてはいけないこと
ガーディアンの判型変更で、忘れてはいけない重要な点があった。
それは、ガーディアンは発行部数が落ちる一方で困っていた、という事情だ。インディペンデントとタイムズに押され、発行部数上昇をどうしても実現できないでいた。
日本新聞協会が出している新聞協会報9月20日号の記事が、英誌プレスガゼットからの情報を紹介している。
(引用)
一方、英誌プレスガゼット電子版は「ガーディアンは、2003年9月、11月にタブロイド化したインディペンデント紙、タイムズ紙との競争下、過去10年間で最悪の部数減を経験したところで判型変更を迎えた。今年8月には、1978年以来最低の35万8345部(前年比3.44%)にまで落ちていいた」、と伝えている。
(引用終わり)