小泉氏のタイムズ・インタビュー +トムソン編集長の戦略
今年中には靖国を参拝するのですか?小泉: そういったことは、言わないでおいたほうがいいと思う。これは、中国側も理解してくれている。
alfayoko2005さんにご指摘いただいた件で、28日付タイムズに小泉首相のインタビューが載っている。一部、読売新聞に翻訳されていた。靖国神社への参拝の件で、「今年中に」といいう箇所があると、今(午後10時ごろ)、朝日ニュースターというケーブル(だと思う)の番組でいっている。コメンテーターが、「これは本当かどうか分からない。イギリスの新聞でしょう?意味を取り違ったのでは?」という。
外国の新聞だから、相手(日本人)の言うことの意味を取り違えている・・・こういう発想もなかなかすごい(馬鹿にしている?)が、まずは何を言ったのか、インタビューを書き取ったものを、タイムズのウエブで掲載しているので、興味のある方は見ていただきたいがhttp://www.timesonline.co.uk/article/0,,3-1801759,00.html、以下に訳してもみた。
言葉だけ追うと、「今年中に行く」ということは明記は、ない。しかし・・・判断は一人一人にゆだねたい。
その前に、読売新聞の記事から。
衆院解散・自民大勝、首相「歴史的」を強調…英紙に
「参院で法案が否決され、衆院が解散になったことは今までもなかったし、当分ないだろう。歴史的解散だったのではないか」
小泉首相は28日付の英タイムズ紙(電子版)掲載のインタビューで、参院で郵政民営化関連法案が否決され、衆院解散に踏みきったことの歴史的意義を強調した。
首相は、衆院選で自民党が大勝したことにも、「参院がかなり意見を変えてきており、歴史的であるかもしれない。衆院選で、郵政民営化という政界の奇跡が起きそうな状況だ」と語った。
年内に靖国神社を参拝するかどうかについては、「中国の首脳は私の意思を知っている」とし、参拝する考えを示唆した。
来年9月で切れる自民党総裁の任期延長論については、「(残り)1年でやめると言ってきている」と述べ、改めて退陣する考えを示した。ポスト小泉の能力があると見ているのは何人かを尋ねられ、「4人ないし5人だ」と答えた。
(読売新聞) - 9月28日21時42分更新
靖国参拝の時期に関し、「いつ行くなど、こちらの意志は公的に発言しないほうがいい。それを(公的に表明しないこと)については、中国側もそう理解している」という部分を、私は興味深く読んだ。
とりあえず、以下が全部の訳。微妙かもしれない部分は英語を残した。ご参考までに。
――
(インタビューは火曜日に官邸で行われた。)
―(総選挙は)驚くべき勝利になりましたね。これほどの勝利ですから、ひと夏で辞任するということはないのでしょうね?
小泉:もちろん、だれもこれほどの勝利を実際には予想していなかった。しかし、これまでにも、ずっと、私は1年で退陣する、と言ってきた。だから、最善を尽くし、任期の終わりまでつとめて、来年の9月には辞任するつもりだ。
―改革を行う、という使命があるのなら、あと1年では必要なことをすべてやり終えることはできない、とは思いませんか?
小泉:私が思うに、これはどの首相もそうだと思うが、首相が達成するべき仕事に終わりはない。しかし、私の任期終了までには、必要なことを終えることができると思う。
いつも言ってきたのは、私の最優先事項は、私の内閣の最高のゴールは、郵政の民営化だった。 これが改革の最後のよりどころだと言ってきた。もし実行できれば、政治の奇跡だと思う。その奇跡が今起きようとしている。
首相に就任したとき、郵政は民営化しなければならない、民営化されるだろう、と言ったが、多くの人が(実行に)疑いを持っていたと思う。こうした疑いの念を持つのは理解できないわけではない。民営化に反対したのは野党だけではなかったし、実際には、与党の中でも反対があった。民主主義国家で、国民が(民営化の)実効性に関して懸念を持ったとしても驚くにはあたらない。
政治家になって30年だが、政治的現象として、みんなが反対した法案が、突然法案の支持に回る、といった瞬間があると思う。この瞬間が今まさに来たのだと思う。実際、8月8日、この法案は死んだのだと思う。まさか生き返るとは誰も思わなかったんだ。
―自分の歴史上の位置を意識しますか?
小泉: 衆院の解散に関して言えば、参院で法案が否決されたからといって解散になったことは、過去なかったと思う。この点からは、これは非常に歴史的な解散とも言える。
また、ある法案に反対していた人が、同じ法案を後で支持することに変わった、ということもあまりないだろうと思う。 そういう意味では、これは歴史の記録に残るような現象とも言えるし、小泉という名前は時の首相として残るかもしれない。
―郵政の改革というのは、行政上の話というよりも、象徴だったのではないですか?
小泉: : かなり複雑な様相があると思う。自民党が勝ったのは、私の過去4年間のやってきたことへの評価と、これまでに私が進めた改革への国民からの支持、それに郵政民営化への支持だったのだと思う。こうした要素がすべて影響したと思う。
日本を景気後退から抜け出させ、景気回復を実現していった私のやり方が、与党の中で摩擦を引き起こしたと思う。例えば、銀行業界の不良債権の処理で使った方法や、景気後退の時期に公共事業を減らしたことで、これは過去からの完全な決別だった。
自民党総裁、日本の首相になる、ということは、与党内から強い支持があったことを、慣習として、意味していた。私の場合は、大きな与党の派閥の中の摩擦の中で、首相になった。この点で、私は非常に珍しい首相だと思う。
欧米では、「これが民主主義なのか?」と問う声があるのは事実だ。結局、首相になり、党首になる人物がその地位を得るのは、自分の政党からの強い支持があって、そうなる。野党ばかりか与党内とも闘いながら首相であるというのは、何かおかしいのではないか、というわけである。
私に反対をする人たちはいるし、与党内の指導者たちは、私を独裁者、「ヒットラー」とも呼ぶ。私は選挙で選ばれたのだから、これは非常に奇妙だ。現職についたのも、選挙を経た後だ。
選挙戦中、私は、郵政民営化に反対した参院議員たちは日本国民がこの法案に反対していると信じて、法案に反対したのだ、と言った。「もし私が勝てば、参院の反対議員たちは、国民も法案を支持していると分かり、立場を変えるだろう。だから、勝たせて欲しい」と言った。最後には、総選挙の結果を見て、反対をしていた参院議員たちは、驚くべきスピードで支持に回った。
この選挙は、国会での結論を、国民が変えてくれるよう、頼んだ選挙だった。結果、そうなった。この点から、非常に歴史的選挙だったと思う。
―もし、来年の6月、世論調査で、80%の人が首相の座にい続けて欲しいと願うとき、こうした声を無視するのでしょうか?
小泉:(笑い。)世論調査がそんな結果を出すわけないよ、70%や80%の人が私に続投して欲しい、というなんて。
ー過半数以上がそう言えば、考えますか?
小泉:そんな可能生に私が頭を悩ませる理由は全くないと思う。その頃になれば、9月には自民党総裁選挙になるので、6月には、候補者が選挙キャンペーンを開始している。
―女性が次の首相になる可能性は?
小泉:近い将来、首相候補になる可能性のある女性を本当に考え付かない。
―候補者は何人ぐらいいると思いますか?
小泉:4人か5人だと思う。
―日本は第2次世界大戦(での行い)に関して謝罪をしましたが、海外では、日本がまだ謝罪していない、と未だに見ている人もいます。第2次世界大戦における日本の立場を世界に明確にするために、何らかのセレモニーを行うことは考えていますか?
小泉: 考えていない。実際のところ、戦後の日本の過去60年の軌跡を見れば、日本が過去を反省し、後悔していることを、人々は理解していると思う。
中国や韓国との関係を言っているのだね。しかし、これまでにないほど、日本とこの2国との間では、すべての分野において交流が起きている。
中国が私の靖国参拝に反対をしているのは、政治的な理由だろうと思っている。
I would assume that it’s for political reasons that China is opposing my visits to the Yasukuni Shrine.
―中国内部の政治的事情でしょうか、それとも外部に対する政治的事情でしょうか?
小泉:国内の事情だ。それに、中国は、日本が政治的に影響力を増すことを歓迎していないのだろうと思う。例えば、中国は日本が国連の常任理事国になることに反対だ。それは、中国は国際的な舞台での日本の影響をチェックしたいからだ。 Internal reasons. In addition I would assume that China doesn’t welcome a growth in Japan’s political influence. They are opposed, for example, to Japan becoming a permanent member of the UN Security Council because they want to check Japan’s influence on the international stage.
―何故、靖国参拝に関する意向をはっきりさせないのですか?
小泉:実は、中国側は、私の考えを既に知っている。本当に、中国の指導部は、私の意向を認識していると思うし、しかし、もちろん、他国の立場も考慮にいれないといけない。従って、公にするようなことじゃないと思う。常に、他国との関係を考慮にいれることを心に留めるべきだ。
Actually the Chinese already do know my thoughts. Indeed I believe Chinese leaders are aware of my intent, but then of course you have to be considerate of the others’ position as well. So I think it’s not something that we should make public. We always have to bear in mind relations with other countries.
―今年中には靖国を参拝するのですか?
小泉: そういったことは、言わないでおいたほうがいいと思う。これは、中国側も理解してくれると思う。 I think that sort of thing is best left unsaid. That [is something that] the Chinese also understand.
―時として、日本の国粋主義と、戦後の国としてのアイデンティティーの発達とを混同する人がいますね。気になりますか?
小泉:それは誤解だ、本当に正しくない。今私たちが目にしているのは、全く国粋主義というようなものではない。日本国民は、過去について非常に深く反省をした。第2次世界大戦について遺憾に思っているし、世界中の誰よりも強く、日本人は、絶対に再び戦争を起こしてはいけない、と思っている。他の何よりも平和を愛している。
―景気は回復したのでしょうか?
小泉:景気回復の時期は、過去最長だ。しかし、インフレを克服していないし、正式にインフレを克服するまでは、正式に景気が回復した、とは言えない。
―前にお会いした時、夜は4-5時間眠るとおっしゃいましたね。今は選挙も終わり、もっと長い時間、もっと心安らかに眠っていますか。
小泉:(笑い。)長さは変わらないかもしれないが、多分、選挙の時と比べて、もっと深い眠りだし、それほど頻繁に途中で起きなくなった。
―退任したら何をやりますか?ガーデニングですか、それとも音楽をきいたり?
小泉:そんなことを考えるところまで、まだいっていないよ。今いえるのは、来年の9月までは首相としてベストを尽くすことだ。一旦やめたら、きっとたくさんやることがあると思う。
首相としては、音楽を聞くのが楽しいが、ベッドでCDを聞くぐらいだ。やめたら、コンサートや映画に行ったりするよ、DVDで映画を見るんじゃなくて。それと、首相でいるうちは、やることすべてが公務になる。首相でないと、自分を楽しませる方法はたくさんある。
―今、何を読んでいらっしゃいますか。
小泉:約400年ぐらい前の、戦国時代の歴史に関する本を読んでいる。
―現代に通用するような教訓はありますか?
小泉: 厳しさについてかなり学んでいる。戦国時代のサムライがどんなに厳しい生活をしていたか。毎日、死と直面している。教訓はたくさんある。
―どの人でしょうか。
小泉;織田信長、豊臣秀吉、徳川家康のことだ。この3人は、当時の歴史上、複雑な混乱を作り出した。
―イギリスの与党・労働党が日本の自民党に似ている、という人がいます。本当の野党が党内にいるからです。そう思いますか。
小泉: 日本では、与党は与党で、野党は野党だ。
私の内閣で難しかったのは、与党の中で私の政策に心の中では反対していても、その政策を支持するように強制しなければならなかった点だ。小泉は自民党の総裁で首相だし、日本の国民が(郵政民営化を)支持した、という現実に直面している、心の底では私に反対している与党内のメンバーのことだ。こういった人たちの気持ちを変えるように、かなりのエネルギーを使ってきた。この点で苦労した。
(以上・言葉の分かりやすさのため最後のコメントをやや意訳。他はほとんどそのまま。)
ータイムズ・トムソン編集長の戦略
次に入れたいと思っているが、タイムズのロバート・トムソン編集長は、今、東京に来ている。28日開催の読売メディアフォーラムというイベントのパネリストの一人だった。このインタビューも東京特派員とともにやった、ということだ。
これまでにも、何かのイベントに出席しながら、独占インタビューを東京特派員とともに行う・・・というパターンをやっている。イベント出席は別としてもファイナンシャル・タイムズのアンドリュー・ガウアー編集長も(日本に限らずブッシュ大統領インタビューなど)、似たようなことをしている。
読売の英字紙「デイリーヨミウリ」にも、しばらく前から、サプルメントとして、タイムズの紙面が入っている。
実際のトムソン編集長は、ひょろっとした感じで、物静か。非常に恥ずかしがり屋に見える。ちょっと赤面しながら、パネリストとして冗談などを言っていた。
タイムズはメディア王ルパート・マードック氏が所有しており、トムソン氏は、マードック氏のあやつり人形、とも言われている。もともとは、ファイナンシャル・タイムズの敏腕記者だった。
「競争が激しい」とトムソン氏が機会あるごとに言う英新聞業界で、やっていくー。やはり相当な人なのだろう。