小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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新型ガーディアン、発行部数を40万部に回復


 9月中旬、縦に細長い「ベルリナー型」に紙面のサイズを変えた英ガーディアン紙の9月の発行部数が久しぶりに40万部を超えた。前回40万部を超えたのは2003年5月だった。英新聞の発行部数を記録するABCの報告を各紙が14日紙面で伝えた。(ある月の発行部数は次の月の中旬頃にABCが発表する。)

新型ガーディアン、発行部数を40万部に回復_c0016826_459443.jpg ガーディアンの9月の発行部数は40万4,187部で、売り上げは1年前と比較して7.4%上昇した。ちなみに、昨年8月の発行部数は34万1,968部だった。

 左派系ガーディアンのライバル紙となるインディぺデント紙は前年に比べて約1%発行部数を減少させ、26万2,552部だった。日本の全国紙と同様の大判ブロードシート紙であるデイリーテレグラフ紙は、ブロードシート紙(高級紙)の中で最大の発行部数を誇るが、9月はやや部数を増やし、90万4,283部だった。

 インディペンデント紙と同様に小型タブロイド判に紙面のサイズを変えて発行部数を伸ばしてきたタイムズ紙は69万9,425部で、前年同月に比べて、6%の上昇だった。一方、経済紙のファイナンシャル・タイムズは殆ど変わらず43万8、538部だった。

 発行部数が下がり続けてきたガーディアン紙は、9月12日、ベルリナー判になった。フランスのル・モンド紙などと同様の大きさだ。

 ガーディアン紙は新サイズ発行のために、8000万ポンド(約160億円)を使っている(ガーディアン紙によると)そうである。

 英国に帰ってきて、ベルリナー判の紙面を手にしてみての印象だが、横幅が大分縮小されて細長くなったので、手に持ちやすい。フォントも、軽い自体に変わったようだ。

 ただし、実際に紙に印刷してあるガーディアンに比べると、ウエブ上で見れる紙面そのまま(デジタル判)の方が、色が鮮明で「きれいだな」と思う。

 紙に印刷されると、色味がやや抑えたように見える。(あくまでもデジタル判と比較した場合だが。)結果的に、デジタル判の方が、見栄えはいい。(実際に手に取れる紙の新聞のほうが、読みやすいことは歴然としているだろうけれども。)

 紙が「本家」と見るのが普通だろうし、デジタル判も購読が可能だが、やはり紙で何部売れるか、が勝負になるのだろう。しかし一方で、余談めくが、ガーディアンのアラン・ラスブリジャー編集長は、事あるごとに、「ネット(ウエブサイトでアクセスできるガーディアン)と紙の新聞のどちらを取るか?どちらが本当のガーディアンなのか?と聞かれたら、自分としては、ネットの方、といいたい」といった発言を繰り返している。あくまで余談だが。

 もう1つ気づいたのが、やはり紙面のサイズが小さくなったので、広告が今まで以上に大きく見えてしまう。大判ブロードシート紙のデイリーテレグラフを開くと、大きな広告が、心なしかガーディアンのようには目立たない。新型ガーディアンの場合、どうも、大きな広告がやや重そうに見える。小型タブロイドとなったタイムズやインディペンデントも、最初の頃は同じような感想を持ったとは思うのだが、既に目が慣れてしまったのと、両紙がそれぞれに工夫をしているので、大きな広告が目立たないようだ。(いかに、小さな紙面上に、圧迫感をもたせないように大きな広告を出すかにかなり知恵を働かせているのだと思う。)

 驚いたのが、ガーディアンでは今まで、「G2」というタイトルで、フィーチャー記事をまとめた小冊子を紙面に挟んでいたが、これがものすごく小さくなっていたこと。これまでは、B4ぐらいの大きさだったが、今回はA4サイズの小冊子となった。通常、このサイズはテレビガイド(新聞についてくる)などに良く使われている。

 それにしても、保守系テレグラフ紙が、ぱっと見ただけでも、どうも品がないように見えるのは何故だろうか。1面の写真の選び方や色使い、三面にゴシップ的なトピックを大きく載せるなど、残念な印象がぬぐえない。


(写真はガーディアンの10月1日号表紙。DVDがついてくる、などの販促も、ガーディアンに限らず、英各紙はかなりやっている。)
by polimediauk | 2005-10-17 05:18 | 新聞業界