小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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思わず手にとる無料紙メトロ

フリーペーパーが躍進

  イギリスも含めた欧州では無料新聞・フリーペーパーが大人気だ。

 それぞれのコミュニティーのニュースや広告を載せたフリーペーパーはこれまでも存在していた。しかし、今回伸びている無料新聞は、有料の一般紙と見た目が殆ど変わらない。国際的ニュースも交えた1面、国内ニュース面、外電面、特集面、スポーツ面と、体裁が普通紙と同じだ。

 それぞれの記事が比較的短く、読みやすい。「20分で読める新聞」がキャッチフレーズだ。編集方針が中立なので、偏りがなく、さらっと読んで内容がすっと頭に入る。かつ、主に通勤客相手なので、通勤圏の娯楽情報なども入り、身近な感じを与える。

 読者層のターゲットは20代から40代半ばぐらい。広告もこうした年齢層に合わせたものが入る。

 毎朝、駅の改札口近くに置かれたスタンドに、うずたかく積み上げられているので、一部を取って電車に乗る人が多い。読み終わったら、電車の座席などに置いておくと、乗ってきた人がそれを拾ってまた読む。

 全ての制作費は広告費でまかなわれている。主に通勤客ということで、大体の年齢層や可分所得が大体分かるので、その層を狙った広告及び広告のタイアップ記事が載る。読む方も自分の生活に密着した広告を目にし、ますますメトロが身近に思える・・心憎いほどうまいビジネス・モデルだ。

―メトロ

 元々1990年代にスエーデンで始まった無料新聞「メトロ」がこうしたフリーペーパーの元祖・典型なのだが、イギリス上陸の直前、「ロンドン・イブニング・スタンダード」紙などを発行しているアソシエーテッド・ニュース社が全く同じ名称でフリーペーパーの発行を開始。現在まで、元祖メトロのイギリス発売は起きていない。

 そこでイギリス版「メトロ」の話になるのだが、年々発行部数を伸ばし、イギリス全体では90万部近く、ロンドン近郊では40万部強を発行している。

 高級全国紙のインディペンデントがタブロイド判で発行部数を伸ばしたとはいえ26万部、ガーディアン34万部ほど、タイムズ60万部などと比べると、大成功といってよいかもしれない。

―何故伸びる?

 ここで疑問になるのが、有料新聞の発行部数が落ちるばかりなのに、何故無料新聞メトロは拡大を続けているか?だ。

 発行部数が落ちる理由を「若者の新聞離れ」としてきた有料新聞。しかし、メトロを手にする読者の70%以上が20代―40代前半だ。また、朝9時ごろには駅のスタンドに置いているメトロは全てなくなってしまい、車内に残っているメトロを他の乗客が拾ってまた読むという光景を見ていると、「若者だって新聞を読む」「新聞離れ云々は若干眉唾かもしれない」と思えてくる。

 結論としては、新聞離れはあるだろうが、それは既存の有料の新聞を読まなくなっているのであって、新聞を読むという習慣がなくなったわけではないのだ。

 メトロは無料だ。だから人々は手に取るのだ・・という見方もある。

 しかし、20代―40代の都市圏通勤者が、「お金を節約したいから有料新聞を買わないのだ」とは、どうしても言えないだろう。イギリスの新聞は高いものでも一部120円ほど。100円、80円などがざらだ。物価は日本並みなので、決して高い値段とは言えない。

 それでは、何故?

 小型タブロイド判で持ちやすい、手軽、無料、駅にあるので手に取りやすい、広告が読者のニーズにマッチしている、などの理由のほかに、もっと大きな決め手がある、と私は思っている。(続く)


 
by polimediauk | 2005-01-13 06:02 | 新聞業界