小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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雑感 フランスの暴動 右派ル・ペン氏のインタビュー

雑感 フランスの暴動 右派ル・ペン氏のインタビュー_c0016826_1743281.jpg今朝、BBCの朝のニュース番組「TODAY]を聞いていたら、フランスの極右派と呼ばれる、ル・ペン氏のインタビューがあった。英国人のキャスターが質問をして、彼がフランス語で答え、ボイス・オーバーで英訳が入る、という形。

ル・ペン氏は、今回の一連のフランスの暴動が、大量な移民の流入を許したからだ、としている。個々の移民が悪いというよりも、フランスの過去の政治家が悪い、と。

そして、こういう若者達からは、フランス国籍を剥奪するべきだ、とも述べた。

英国側のジャーナリストは、「親の世代が北アフリカから来たかもしれないが、若者は既にフランスで生まれ、フランス国籍。どうやって、国籍剥奪のようなことが可能になるのか?」と聞くと、「法をおかしたら、何らかのペナルティーがあるのは当然だ」という。

「こういう暴動が起きるのも、移民の若者の間で失業率が高いなど、社会的経済的要因があるからではないのか?こうした要因を取り除くのが先決だとは思わないか?」とジャーナリストが聞く。また、「英国でも同様の暴動が起こる可能性はあると思うか?」と聞き、ル・ペン氏は、「ありうると思う」と答えている。

もう一度後で聞こうと思うが(ウエブ上から、再度聞くことができるので)、ル・ペン氏の発言内容の解釈は別として(こちらのほうが重要なことではあろうが、他の点が気になったので)、英国の論理、英国の考え方、英国ジャーナリストの決まりきった質問の仕方で、フランスの現状が分かるかなあと、思っている。

フランスと英国(そしてオランダなど)の移民の状況が違うのか?どんな背景要因が違うのか?これを今もう少しはっきりさせたい、と思っているが、英国ジャーナリストのフランスの状況に関する質問の仕方、質問の前提などを、これまで聞いていると、この特定のジャーナリストに限らず、紋切り型多く、疑問を感じている。

「フランスで移民が中心の暴動があった」、「背景は社会的・経済的要因」「だから、社会的・経済的要因を直せば良い、直すべきだ」「どうして、今まで何もしなかったのか?」・・・という論理の流れだ。(「簡単なことじゃないか、どうしてしないのか?」という声が聞こえてきそうだ。)

フランスの外にいれば、こういことを指摘するのは、たやすいのではないか?しかし、中に入ると、なかなかうまくできない、という部分があるのではないだろうか。どうも、いろいろな物事を簡単に考えすぎているような気がしてならない。

英メディアを通して、フランスの暴動の様子を追っているわけだが、これだけで、ちゃんと状況が分かるだろうかなあ?と、今、一抹の不安がある。イスラム教の話にしても、英メディアだけを見ていると、意外とたよりにならないなあ、と思ったことが何度か、ある。

以上、雑感めいた話になったが・・・。
by polimediauk | 2005-11-09 17:40 | 欧州表現の自由