小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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アブムサブ・ザルカウイ容疑者を中心とした新刊本


 テロの資金の流れを書いた「Terror Inc.」という本をかつて出し、小説も書くというイタリア人の作家、ジャーナリストのロレッタ・ナポリオーニLoretta Napoleoniという人が新刊を出した。ヨルダンでの同時爆弾テロで急激に注目を浴びている、イラクをベースに活動をしていると言われるヨルダン人テロリストのアブムサブ・ザルカウイ容疑者について書いた本だ。タイトルは「Insurgent Iraq—Al Zarqawi and the New Generation(仮訳 反乱分子 イラクーアルザルカウイと新世代)だ。

 16日、著者の会見がロンドンであった。

 本はもらったが、最初の数ページを読んだだけなので、内容を正確に書くことはできないが、会見で出た話を、少し拾ってみる。

 「私は特にイスラム過激派の専門というわけではない。どちらかというと、テロのお金の動きとか経済関係をよく知っていた。あるテレビのドキュメンタリー番組を作ったことがきっかけで、この本を書くようになった」

 「ザルカウイ容疑者1966年生まれ。貧しい環境で育ち、16歳で学校からドロップアウト。性的暴行の罪で、刑務所に入る。その後、結婚。ジハードに関してロマンチックな思いを抱き、ひかれてゆく。1980年代後半、アフガニスタンに。政治をよく理解できず、戦闘にも参加できず(一説には、彼が戦闘に加わったという話もあったが、著者はこれを否定。アフガニスタンでは、ある団体で事務職員をしていた、という。)1991年から92年ごろは、ヨルダン政府の転覆を狙う。また投獄され、このとき、変化を遂げる。イスラム教過激思想への心酔か?」

 「2000年に、オサマビンラーディンに初めて会う。当初、ザルカウイ容疑者は、ビンラーディンに特に強い印象を持たなかったらしい。」

 「2004年、ファルージャで、米軍とイラクの抵抗勢力とが激しい戦いをしたとき、戦いの前後にファルージャにザルカウイ容疑者はいたけれども、戦闘があった時期には、ファルージャにはいなかった。戦ったというのは、伝説だ」

 「アンマンのテロはヨルダン政府転覆を狙う。自爆テロを告白した女性は、おそらく、直接はザルカウイ容疑者を知らないと思う。いかにもこのテロのやり方が彼らしい。いつも外国人をテロ犯に使う。ビンラーディンはヨルダンには興味がない」

 「イラク人をテロ犯に使うのは、安い。爆弾が国中にたくさんあるからだ」。

 「ザルカウイ容疑者は、新世代のテロリスト。ビンラーディンとは目指すものが違う。社会的なあるいは政治的な目的があるというわけではない。ヨルダン政府を倒した後は、自分たちの意にそう宗教的国家を作りたいと考えているだけだ」。

 この本の最初にある解説文から、若干とると、

 「ザルカウイ容疑者は、ビンラーディンなどの年長のリーダーたちに挑戦する、若く、教育程度が前の世代よりも低く、政治的意思の希薄な世代を率いている」。

 イラクで人質を捕まえ、仲間や自分の手で人質の首を切り、これをビデオ映像にして流す、ということをザルカウイ容疑者はやった、といわれているが、この残酷さにはわけがあって、世界中のイスラム教徒に向けて、「ここまで自分は覚悟している、ということを示すため、という理由があった。もう1つは、テログループの中でも仲間内の覇権争いがあって、例えばビンラーディンの向こうをはって、ここまでできる、という部分があった」としている。
by polimediauk | 2005-11-17 09:57 | イラク