小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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英国、原発建設へ一歩 「Uターン」?


メディアがドラマチックに報道すると・・・

 2020-23年ごろには、英国の原子力発電所の稼動が全て終わることになる。現在のところ、英国は25%ほどを原子力発電にたよっている。発電所を建設する場合、計画から建設までに10-15年ほどかかるため、もし原子力発電を完全にあきらめるのでなければ、早々に計画を立てないといけない状況にあった。

 そこで、今週、ブレア英首相が原子力発電所新設への第一歩を予感させるような発言をしたため、英新聞各紙、テレビ局はこれを「Uターン」、「政策転換」として紹介。かなり批判的に扱われた。

 しかし、かつて労働党が原子力発電に反対の立場をとっていたとはいえ、ビジネス界との関係を深める方針をとってきたブレア政権の流れ、そして、「エネルギー白書」(2002年ごろ発表)を見ても、常に発電所新設の含みを残した文章表現をしており、ある意味では、少しずつ、本音を出していた。否定も肯定もしないが、その心は、というと、「新設したい」という気持ちがにじみ出ている表現だった。

 原子力発電所の新設は、政治的に正しくない・ポリティカルコレクトではない、と見られているので、ブレア氏が新設をほのめかす方向を口に出しただけで、大騒ぎ、となる。コストや廃棄物のことばかり言っても、フランスではエネルギー源の80%を原子力にたよっている。やっているところは、それぞれの方針でやっている。

 将来の年金制度に関する答申が昨日でたのだが、これも大蔵大臣のブラウン氏が、答申が出る前に批判したことを、メディアはかなり繰り返して報道。答申を作った人の面子がつぶれる、という部分を、ドラマチックに書き立てる。

 わざと事態をドラマチックに報道し、本当の問題から焦点をずらす・・・こういうことは、特定の国だけに起きているわけではないのだろうが、少なくとも英国はそんな国の1つのように思う。

 24時間ニュース報道をしないといけないので、仕方がないことなのだろうか。

以下は、時事の関連記事。
2005/11/29-21:51
「原発も選択肢」=グリーンピース、天井から抗議-英首相
 【ロンドン29日時事】原子力発電所の段階的廃止を打ち出していた英政府が近く政策転換を行うとの見通しが高まる中、ロンドン北部の会議場で29日、ブレア首相と国際環境保護団体グリーンピースの一触即発のニアミスが発生した。演説会場の高さ16.5メートルの天井によじ登って抗議の垂れ幕を掲げたグリーンピースに対し、ブレア首相は会場を変更、「原発もエネルギー政策見直しの選択肢だ」と訴えた。
 英政府は最近、将来のエネルギー不足に備え原発を新設する政策転換を示唆し始めている。これに対し、天井に上ったグリーンピースのメンバー2人は「核は間違った答えだ」と抗議。首相の演説は結局50分遅れで隣の部屋で行われた。(了)

by polimediauk | 2005-12-02 01:44 | 政治とメディア