連日、新型コロナウイルスによる新規感染者が5万人前後記録されている英国。
一筋の光となっているのが、ワクチンだ。
11日の会見で、ハンコック保健相は約230万人に約260万回のワクチンが打たれたと発表した。現在のワクチンは2回が1セットになっているが、約230万人の中でその大部分(約200万人)が1回目のワクチン接種を終了した人である。
以下は会見時に使われたスライドの1つだ(スライドでは、「220万人以上が1回目の接種を受けた」という表記になっている)。
英国はイングランド地方(人口の約90%が住む)、ウェールズ地方、スコットランド地方、北アイルランド地方に分かれている。
上のグラフでは、一番上がイングランド、その下がウェールズ、スコットランド、北アイルランドの順となっている。左側の数字が1回目のワクチン接種を受けた人で、右側が2回目の接種も受けた人の数である。
英政府は、2月中旬までに医療サービスの職員、高齢者施設の入所者や職員などの他に70歳以上の人すべてがワクチン接種を終了することを目標としている。人数は約1500万人。
なぜ高齢者を優先しているかというと、感染して入院する人の88%以上が高齢者になるからだという。
そして、今年秋までには英国の成人全員(約2100万人)がワクチン接種を済ませているようにする。
医療サービスの職員の他にボランティアを含めた約8万人が接種作業を担当する。
どのワクチンか
今、英国で使われているコロナのワクチンは、米ファイザーと独ビオンテックが開発したワクチン、そして英アストラゼネカとオックスフォード大学のワクチンだ。3番目のワクチンは米モデルナが開発し、先週、緊急認可が下りたばかりだ。モデルナのワクチンが稼働するのは、春以降になる見込みだ。
ファイザーの方のワクチンはベルギーの会社が生産し、輸入している。アストラゼネカのワクチンはオックスフォード州のオックスフォード・バイオメディアカ社とスタフォードシャー州のコブラ・バイオロジックス社が生産したが、現在使われている分は欧州大陸で生産されたものだ。
アストラゼネカのワクチンの方は通常の冷蔵温度で保管できるため、冷蔵庫付きのトラックやクール便のような形でワクチン接種場所に運ばれることになる。ファイザーの方はマイナス70度で維持する必要があり、特別な保管容器・移動設備を使う。モデルナのワクチンはマイナス20度での保管となり、これは通常の冷蔵容器で対応できると言われている。
ワクチンの接種場所は、イングランド地方の場合、一般医がいるクリニック(約1000カ所)、薬局(約200カ所)、病院(約200カ所)、ワクチン接種センター(7カ所)になる。ほかの地方でも同様の体制となっている。
英国はアストラゼネカのワクチンを1億回分注文しており、2回が1セットなるため、5000万人分にあたる。ファイザーの方は4000万回分を注文しており、2000万人分に相当する。英国の総人口は約6700万人で、英国に住む人全員をカバーできる計算となる。
政府のスライドによれば、家の外でほかの人との物理的接触を避けるようにしているという人は89%、家の外でマスクなどで顔を覆っている人が97%、自宅に戻ったとき、石鹸と水で手を洗う人は90%。
テレビやラジオでニュースを追っているのだが、コロナ感染の入院患者が多くの病院で急速に増えており、医療現場が悲鳴を上げる様子が伝えられている。
政府はワクチン接種を受けた人が多いことを宣伝しているが、ワクチンを打っても1日当たり数万人の新規感染者がすぐに減るわけではなく、「他人と接触しないように」、「家にいるように」というメッセージが繰り返されている。
*英政府のワクチン接種拡大計画はこちらから。
*イングランド地方の国民医療サービス(NHS)によるワクチン接種状況 。
(1月12日英時間7:45分更新)