英新聞業界、What the Papers Say 賞発表
英新聞編集者、制作者、ジャーナリストたちで構成されるパネルが、What the Papers Say賞の受賞者を今月中旬発表した。What the Papers Sayを何と訳せばいいのか苦しむが、「新聞によると・・・」賞とでもなるだろうか?パネルは、その年最も優れた新聞、編集長、コラムニスト、カメラマンなどを選ぶ。同業者から「ベスト」と選ばれたそれぞれの媒体は、これを名誉とし、例えば、新聞の1面に「最優秀新聞賞受賞 Newspaper of the year」と印刷し続ける。
今年の最優秀新聞賞にはタイムズが選ばれた。2003年秋から、インディペンデント紙に続いて小型タブロイド判を通常の大きなサイズの新聞と平行発行した。スタート時は「弱い」紙面刷新と思われたが、現在では、「自信をつけた新聞」となったことが評価された。サイズ変更よりもスクープの多さ、読み物的記事の充実など、新聞の内容そのものが高く評価された。
選出委員賞は、ガーディアンのアラン・ラスブリジャー氏に。インディペンデントやタイムズがサイズ変更で大幅に部数を伸ばした実績にまどわされることなく、今年9月まで待って、縦にやや細長い新しいサイズ、ベルリナー判を成功裏に発行した点で、「すばらしい編集長」とされた。
功労賞は、ラスブリジャー氏の前の編集長だったピーター・プレストン氏に。氏は現在、ガーディアンの日曜紙「オブザーバー」のコラムニストになっているが、20年間ガーディアンの編集長を務め、「現在のガーディアンを作った人」。メディア、教育、社会問題の特別なセクションを、G2と呼ばれるタブロイド判の数ページの小冊子にまとめ、これを通常の新聞に組み込む、というアイデアを導入した人物でもある。
レポーター賞(報道ジャーナリストに該当すると思う)はデイリー・メール紙のデビッド・ジョーンズ氏へ。
スクープ賞は、人気モデルのケイト・モスのコカイン疑惑を書いたデイリー・ミラーへ。この記事がきっかけで、他のタブロイド紙、雑誌がモスのコカイン疑惑を数週間に渡って報道した。
特集記事ジャーナリスト賞はデイリー・テレグラフのジャン・モワル氏。スポーツ・ジャーナリスト賞はタブロイド紙ニューズ・オブ・ザ・ワールド紙のマーティン・サミュエル氏。
政治風刺画賞はタイムズのピーター・ブルックス氏、そしてコラムニスト賞は、週刊誌「スペクテーター」の編集長でもあったボリス・ジョンソン氏。
写真家賞は、2年連続で、ガーディアンのダン・チャン氏。〈以前、チャン氏に取材したことがあるので、一度この場で出したいと思っている。〉シンガポール系の英国人だ。
そして、最後になったが、外国特派員賞が、タイムズのリチャード・ロイド・ペリー氏だった。氏は、日本では、秋の小泉首相へのインタビューをした記者、ということで覚えている方もいるのではないだろうか。パネルが評価したのは、戦後60年を記念して書かれた、長崎や広島の原爆に関する記事が、特に「感動を引き起こした」とされている。ロイド・ペリー氏は、17日付のタイムズの記事の中で、「アジアの報道が、欧州やアメリカに関する報道に比べて、薄い新聞もある。タイムズはアジアを真剣にかつ一貫して報道してきた」とコメントを残している。
振り返ってみると、英高級紙の日本報道は、全体的に、地道に原稿を送っている特派員の仕事振りのおかげで、なかなかしっかりしたものになっているように思う。2005年も、思いつくままにあげると、デイリーテレグラフのコリン・ジョイス氏、ガーディアンのジャスティン・マッカリー氏、ファイナンシャルタイムズのデビッド・ピリング氏などの記事を楽しく読んだ。(名前が挙がっていないほかの記者―ロイド・ペリー氏も含めーは、たまたま個人的に強い記憶がないだけで、不満があるわけではない。)
ただ、時々、?と思うものもある。それは、通常の特派員が書いているものではなく、日本を全く知らず知ろうともしないジャーナリストが、おそらく企業に招待されて日本に行き、旅行記などを書いたものなどに、私からすると、・・・と思ってしまうものがある。例えば、自分が滞在したホテル〈例えば新宿などの高層ホテル〉のことを延々と書かれると、困ったなあと思う。
もう1つ、一般的にいって寂しいのは、これはよくテレビやラジオで見聞きすることだが、知識人・専門家・学者の間で、全く日本が眼中に入っていないことが分かるときだ。例えば、アジアの話になり、中国、韓国、シンガポール、と名前が挙がっていても、日本は想定に上らない時などだ。心理的に、香港までは近くても、日本となると、また一歩遠い。やや漠然とした言い方で恐縮であるが。微妙だが、こうしたケースに出くわすと、愕然としてしまう。