小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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ネットの規制あれこれーマイクロソフトとブログ


 (昨日書いた、英自由民主党の党首の件だが、とうとう、7日午後3時、辞任表明をした。BBCオンラインに寄せられた意見や、選挙民などからは圧倒的支持があったように思うが、同じ自民党の議員らから辞任コールが高まってしまい、もうやめざるを得なくなった。辞任会見は、リベラリズムという党の基本をこれからも継続していって欲しいと演説し、会見に集まった人々を感動させた。私はBBCオンラインが同時放映をしたので、コンピューターの画面から、見た。)

「MSNは国家の回し者」?

 これから数回にわたり、ネット上の規制関連のトピックを取り上げてみたい。あまりテクノロジーには詳しくないので、特に米IT業界に詳しい方には、既に熟知されている話題になるかもしれないが、目を引いたトピックだったので。

 まず、中国人ジャーナリストの人気ブログをマイクロソフトが閉鎖した、というニュース。http://news.com.com/Microsoft+censors+Chinese+blogger/2100-1028_3-6017540.html?tag=cd.lede  

 1月4日、米CNETニュースで出た記事だが、1月5日(木)15時50分 にヤフージャパンでCNET記事の翻訳の形で紹介された。アメリカと日本の時差から考えて、翌日掲載は自然だろうと思う。

 この後、それが米新聞ニューヨークタイムズなどで、6日、報道されたようだ。これを読売新聞が7日、報じた。この間の時間差は、殆どの読者にとってどうでもいいほど瑣末なことなのだが、何となく、あれ?随分伝わるのが遅いな、と一瞬思った。

 しかし、オリジナルのヤフーの翻訳記事を読むと、「当局」に協力していたのはマイクロソフトだけでなく、ヤフーもそうだったこと、そしてマイクロ・ソフトの従業員=ブロガーからコメントを取っているところが、なかなかおもしろい。

 以下、二つの記事をまとめてみる。

米MS、中国人ジャーナリストの人気ブログを閉鎖
 【ニューヨーク=大塚隆一】米マイクロソフト社が、中国紙「新京報」の記者らのストライキを取り上げた中国人ジャーナリストのブログを昨年末に閉鎖していたことが分かった。

 ストに神経をとがらせていた中国当局からの要請に従った措置という。米紙ニューヨーク・タイムズなどが6日報じた。

 閉鎖されたのは、同社が中国で運営中のブログサービスを利用している人気ブロガー、趙京氏(30)のサイト。マイクロソフト社側の責任者は、「国際的な法にも現地の法にも従わなければならない」と釈明しているという。

 インターネット人口が急増している中国には米国の情報技術(IT)企業が次々と進出し、当局の検閲に協力するケースが相次いでいる。マイクロソフト社は昨年もブログサービスで「民主」「人権」などの単語の書き込みを禁止していることが分かり、国際的なジャーナリスト団体などから批判された。(2006年1月7日12時54分 読売新聞)


 ヤフージャパンの記事は(注:アルファベットをこちらでカタカナに変えた):

マイクロソフト、中国人記者のブログをMSN Spacesから削除(1月5日(木)15時50分
 
 米マイクロソフトは、歯に衣着せぬ発言の目立つ中国人ジャーナリストのブログを、同社の「MSN Spaces」サイトから削除したことを認めた。各国の国内法を遵守するのが社の方針だと、マイクロソフトは述べている。

 調査報道記者であり、以前はCNNのレポーターも務めていたレベッカ・マッキノン 氏によると、マイケル・アンチの名でも知られる趙京氏のブログが、2005年12月31日にMSNサーバから削除されたという。マッキノン氏は、MSNのスタッフが中国当局に強制されたわけではなく、自ら進んで同ブログを削除したと主張している。

 マイクロソフトの関係者は米国時間4日、ZDNet UKに対して、MSN Spacesにあった中国人ジャーナリストのブログを閉鎖し、中国国内法における同サービスの合法性を維持したと話した。

 「MSNでは、製品およびサービスが、国内外を問わず法律や規範、業界慣行に沿うよう配慮している。大半の国が、オンラインサービスを提供する企業に法律や規制を適用し、国内ユーザーが安全にインターネットを利用できるよう図っている。そうした中には中国のように、独特な事柄に関する法規制を運用している国もある」と、同関係者は述べた。

 だが、米国内でホスティングされていると考えられるサイトを、中国の法律に遵守させる必要があるのかという点については疑問が残っている。この件についてさらにマイクロソフトに尋ねたところ、同社は次のように回答した。「マイクロソフトは多国籍企業である。それゆえ世界の国々の実情を考慮していく必要がある」

 マイクロソフトのレポートについて、マイクロソフトの社内ブロガーロバート・スコブル氏 は、今回の報道に「失望させられた」と述べ、自身のサイトで中国人ジャーナリストがブログを執筆できるよう取りはからった。

 「MSNで働く仲間には悪いが、彼らが国家の回し者と化している現状には賛成しかねる。アルゴリズムを用いてブログから一定の用語を抽出することと、政府の手先となりブロガーが執筆した全記事を検閲することは、まったく別物だ」(スコブル氏)

 スコブル氏は、マイクロソフトが2005年6月に、中国のMSNポータルで「自由」や「民主主義」といった言葉を検閲していたことを認めた件についても言及している。一方マイクロソフトは、ZDNet UKの姉妹サイトであるSilicon.comに対し、「検閲用語リストは公開しないが、われわれは必要に応じてこうしたフィルターを変更/更新し、中国の法律/規制/規範に従っていく意向だ」と説明した。

 2005年9月には、ヤフーが中国当局に情報を提供し、これがある中国人ジャーナリストの投獄につながったことが明るみに出て、ヤフーに批判が集中した。(この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。)

――貼り付け終わりーーー

 マイクロソフト社の社内ブロガーが自分の意見をこのように発表していることに、私はまず驚いた。

 また、サーチエンジンなどの運営者側がユーザーに対して、様々な理由からコントロールをかけていることは認識していたが、このような形の「自己検閲」があったことには、驚いた。いいことなのか、悪いことなのか?

 ・・と思っていたら、デイリーテレグラフの1月5日号に、今度はグーグルの話が出ていた。社内ブロガーの話も別記事で見つけた。(続く。)

 **追記
 
 ヤフーを見ていたら、香港でもこのニュースが,7日報道されたことが分かった。

中国の人気ブログを閉鎖 米マイクロソフト

 【香港7日共同】中国でブログ(日記風インターネットサイト)の開設サービスを行っている米マイクロソフト(MS)が、鋭い社会分析や当局批判などで知られる中国人ジャーナリスト、趙京氏の人気ブログを昨年末に閉鎖していたことが分かった。7日付香港紙、蘋果日報などが伝えた。
 趙氏は、「安替」のペンネームでブログを主宰。昨年末、北京の人気大衆紙「新京報」幹部が更迭され、記者らが一時ストを実施した際には、更迭をブログ上で厳しく批判、同紙の不買などを呼び掛けた。(共同通信) - 1月7日20時38分更新

by polimediauk | 2006-01-08 01:46 | ネット業界