小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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ネットの規制あれこれーサンマイクロシステムズ社のブログ・ルール


「ネットでは何も言わないことはマイナス」

 続きになるが、同じく5日付のデイリーテレグラフのビジネス面によると、米国の経営者のブログで著名なものと言えば、サンマイクロシステムズ社のジョナサン・シュワルツ氏とゼネラル・モータース社のシニア・バイス・プレジデントのボブ・ルッツ氏のブログだ。

 シュワルツ氏がロンドンを訪れ、超多忙スケジュールの中でなかなか取材のアポイントがとれず、とうとう、帰国の途につくためにロンドン・ヒースロー空港に行くまでのリムジンの中でインタビューを試みた記事が掲載されていた。長髪を後ろに一本に結わえた髪型で、銀縁めがねをかけたシュワルツ氏の横顔が記事の横に大きく載っている。

 シュワルツ氏がブログを始めたのは2年前。多いときは一日に2万人が訪れるという。
http://blog.sun.com/roller/page/jonathan

 社内には、社員全体の10%ほどにあたる、3000人がブログを書いている。

 ブログを書くことは仕事の邪魔になるのではないか、という問いに、シュワルツ氏は、自分にとっては通常業務の延長だという。「指導力はコミュニケーションを意味する」ので、ブログはコミュニケーション能力を拡大するツールだという。38000人の全従業員一人一人に向かい合い、戦略を説明できればいいが、それは不可能。したがって、ブログを通じて自分が伝えたいことを伝えられる。

 3000人の社内ブロガーがいるということは、社内の秘密が外に漏れたり、などマイナス面がたくさんあるのでは?と聞かれると、電子メールや電話でのコミュニケーションで従業員としてやっていいこと、いけないことのガイドラインを設定する場合と、全く同じことをすればいい、という。

 基本的には、仕事を全うするように、と伝えているという。雇用契約などでの秘密保持義務を守る、といった点では他のコミュニケーションツールを使う場合と変わらない、というのだ。

 また、社の戦略としては、消費者がサンのブロガーが書いたブログを読んでくれていることは、一種のPRとも見なしているという。「インターネットでは、何も言わないこと」はマイナスに働く。氏によれば、例えばある社内ブロガーのブログを一般読者があるいはジャーナリストが読んでいるとき、その瞬間は、読者はライバル者の製品に関するブログを読んでいないー当たり前のようなことだが。どんなメーカーも自社製品を販売することに力をいれ、いかにして消費者の心をキャッチするか、目を引くかに心を砕いている。こうした点から、ブログが一定の役割を果たす、と見ている。

 サンマイクロシステムズ社のブログのガイドラインは
www.sun.com/aboutsun/media/blogs/policy.html

 例えばこんな表記が

 ―社内機密は漏らさない
 常識を駆使して欲しい。自分の仕事に関して書くのは100%OKだ。しかし、会社の秘密のソースの料理方法を書くのは良くない。

 ―おもしろく書くこと
 書くことは難しい。もし読む人がいなければ書いても意味がない。幸運なことに多くの人が使っているあるいは待っている製品に関して書けば、そして自分が何を書いているか分かっていれば、きっとおもしろいものが書ける。自分の個性を出すのもいい。人気ブロガーの殆どが、プライベートな部分を書いている。例えば、家族、映画、本やゲームについてだ。読者は、書き手がどんな人物かを知りたがる。バランスをとることは必要だが。ブログは公の場所であり、読者や会社を困惑させるようなことは避けるべきだ。

 ―結果を考える
最悪のケースは、会社の営業員がある製品を会議でプッシュしようとしているときに、誰かがあなたの書いたブログを印刷したものを出してきて、このサンのブロガーがその製品は最低だと書いている、と発言する事だ。単に「この製品は最低だ」と書くのはリスクがあるだけでなく、直接的過ぎる。全ては判断の具合だ。ブログを使って会社、顧客、同僚を酷評したり、困惑させるのは危険であるだけでなく、ばかげている。(この項一旦終わり。)
by polimediauk | 2006-01-09 18:25 | ネット業界