小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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英コラムニスト 「ブログをやる理由」


「自分の猫の写真を出せる」

 タイムズオンラインのサイトでコラムニストたちがブログを開設している。その中の一人、デビッド・アーロノビッチDavid Aaronovitchというコラムニストが、何故ブログをやろうとしたかについて書いている。

――以下は大体の訳ですーー

「私のやや拡大した世界に、ようこそ」

 長い間、最良のブロガーたちの何人かは、私たちコラムニストの真似をしてきたと思う。日記をちりばめ、長いリサーチペーパーを掲載し、好きな音楽のコレクションや2行の格言などを書きながら、構成が上手な1000語のエッセーを作っていた。ブログ上のエッセーは関連資料にリンクされていたり、コメント欄ですばやい反応を受けたりでき、あっという間の双方向性が実現されていた。結果的に、私たち紙媒体のジャーナリストに対する、かなりの挑戦となっている。エッセーがよくできているものだった場合(本当によく書けているものもある)、双方向性を持つということは。私たちが持っていない特質を持っていることを意味するからだ。

 私たちコラムニストには二つの選択肢がある。誰もこんなものはどうせ読まないだろう、読者はどうせちょっと頭がおかしい中年男性たちだろう、ということができる。たいしたことじゃない、どうせすぐ消えてしまうだろう、と。一人コメントを残せば、後ろには10人の読み手がいる、と聞くけれど、他の人が読まなくても、私はどっちにしたってブログを読むのだから、と。

 もう1つは、自分でやってみることだ。他のコラムニストもやっている。オブザーバー紙のニック・コーエン、インディペンデントのジョハン・ハリ、デイリーメールのメラニー・フィリップス・・・。

 ブログをやることの利点は:
1.コラムニスト・ブロガー自身が若返ったように感じるし、トレンディーだ。
2.自分が書いたものを一箇所にまとめられるし、読者がどれかを見逃したとしても、ここにくれば読める。
3.印刷媒体に出したコラムの寿命がのばせる。
4。コラムニスト・ブロガーは、他の印刷媒体が絶対依頼しないようなことを書ける。どんなトピックかというと・・・それはここに時々来てもらえれば、分かる。
5・コラムニスト・ブロガーは、自分の猫の写真を出せる。何故猫なのか、私も分からないが。しかし、議論の後ろにいる人がどんな人間なのかが垣間見える、というのは、いいものだ。
――訳終わりーーー


 コメントも、通常のブログ同様残せるので、議論の場にもなって欲しい、と最後の方に書いてある。しかし、「悪意のある人々に良い議論をハイジャックされるというのは、心が沈むものだ」として、悪意あるコメントは削除する、と宣言してもいる。そのほかは、「自由」だそうだ。「ようこそ」が最後の言葉になっている。

 読んでいて、なんだかうれしくなって、早速、コメントを寄せてみた。タイムズオンラインは、読者が記事を読んだ感想・コメントを送れる様になっているが、まず名前を登録することになっている。ファーストネームだけやハンドルネームでもいいようだが、自分のメールアドレスや電話番号とか、何かしらこちらの身元が分かる情報を入れる。私は既に登録してあったので、Great!と、一言だけ、入れた。

 彼のブログに限らず、記者に宛てて送ったコメントでも、コメントの受け取り手の記者あるいはコラムニスト・ブロガーが「読んで、了解してから」、画面上に載ることになっている。タイムズが判断するのでなくて、記者なりブロガー・コラムニストなりの個人が良し悪し、掲載するかしないかを判断する。

 しばらくしてこのブログに行ってみると、確かに、私の一言だけのコメントが出ていた。やはり、コメントが出るとうれしいものだ。コラムニスト・書き手と、読み手の自分が同じ土俵にいる感じがする。個人と個人がつながっている感じだ。タイムズという新聞社のサーバーを借りてはいるわけだが。それでも、キーボードを叩く一人の自分が何十キロか先の場所に住むコラムニストと、直接向き合っているような感じがする。


アーロノビッチ氏のブログhttp://timesonline.typepad.com/david_aaronovitch/2006/01/welcome_to_my_s.html#comments
by polimediauk | 2006-01-16 08:55 | ネット業界