日本女性記者協会の設立フォーラム なぜ女性を増やす? 「女性優遇ではない」、50:50プロジェクト
去る11月22日、日本プレスセンターで「日本女性記者協会」の設立フォーラムが開催され、筆者はパネリストの一人として話す機会を得た。
この時に話した内容に若干補足しながら、前回に引き続いて書いてみたい。
筆者に与えられた題は「メディアにおける多様性 ー世界の潮流と日本の課題、欧州からの報告」であった。
今回は番組出演者の男女比率を半々にするBBCの「50:50プロジェクト」を中心にするつもりだが、その前に今一度、女性の政治参加(指導者層配置)を促す理由をここで確認しておきたい。
女性の政治参加(指導者層配置)を促す理由
まず、様々な意思決定をする場面で「女性の数が少ないよね」、あるいは「女性の数を増やそう」という発言をすると、いくつかの答えとして返ってくるのが以下の説明だ。
例えば「そんな必要ないよ」、「該当する人材がいないんだよね」、「実力で勝負するべきだ」、「逆に性差別ではないの?」。
皆さんも、聞いたことがあるだろう。
まず、今この記事を読む皆さんに提案したい。こうした「説明」が合理的である、または「一理ある」と考えることを、一切やめてみよう。
欧州でも、過去にこのような「なぜ女性を増やさないのか」という理由を挙げて、「だから増やせないのだ」という人がたくさんいた。
発想を転換してみよう。
どこの国でも人口の半分を占めるのは女性である。したがって、「女性が政策決定に参加するのは自然であり、当然である」。
でも、現状ではいろいろな理由からそうなっていない。そこで、「人口の半分を占める女性が、より意思決定の場に入っていくにはどうするか?」が課題となるのである。
ここが「肝」である。今現在、欧州ではこの時点に達していることを理解していただきたい。もちろん、現実と理想は違うし、常に半々にはなっていない。
しかし、少なくとも「半々を目指す」こと自体の議論はすでに終わっているといってよいだろう。
「半々を目指す」を理想として、「女性が参加しやすい環境を作っていこう」という段階に入っている。
「女性優遇」ではない
また、女性が意思決定の場により大きく参加することは、決して「女性優遇」ではない。この点もしっかりと頭に刻み込んでいこう。
日本女性記者協会は8月、NHK放送文化研究所の青木紀美子さんを呼んで話を聞いている。この中で青木さんがおっしゃったことの一つが以下である。
「今は針が男性側に傾いているのです。それを真ん中に戻しましょうと言っているだけ。男性が地位や権力を持つことで偏ってきた社会の基準や価値観を、女性と男性の現実や視点をバランスよく考慮に入れた標準に戻すのもメディアの役割です」。
何が達成されるのか
さて、女性と男性が同様の比率で意思決定の場に参加することで、何が変わるのだろう?何が達成されるのか?
同様の比率で意思決定をする社会は、幅広い層の意見が代表される社会である。つまり、「みんなで決める」。社会の幅広い層にとって、「生きやすい社会」を目指すことになる。
家族という社会の小さな構成単位を例にとっても、「今度の休み、どこに行く?」という話題になった時、母、父、子供たちなど家族の構成員のニーズを自然にくみ取って決めているはずである。すべての構成員の意見が通るわけではなく、特定の誰かの意見が強いかもしれない。それでも、一定の合意があって、何をするかが決まっているはずだ。
BBCの「50:50プロジェクト」とは

英公共放送BBCは2017年から番組出演者の男女比率を半々にする「50:50プロジェクト」を開始している。
その始まりは、BBCの番組司会者を務めるロス・アトキンズの「気づき」だった。
ある晩、自分が担当する番組の制作を終えて、車で自宅まで戻る最中、アトキンズはラジオをつけっぱなしにしていた。聞いていたBBCのラジオ番組が終わった。アトキンズはふと思った。「あれ、女性が一人も出ていなかったぞ」と。
家に帰れば、妻と娘がいるアトキンズ。女性が誰も出ないニュース番組が「変だな」と思ったそうである。
そこで、自分の番組に出る女性の数を数えだし、同僚にも参加を呼び掛けた。次第に女性の数を多くするようにし、専門家を呼ぶ場合にも女性が入るようにした。テレビに出た経験がないという女性の学者には「どう話すか」を教えたという。
このプロジェクトはBBCのほかのニュース番組やほかのテレビ局にも広がった。その後、BBCは外部制作会社に番組の制作を委託するとき、制作スタッフに一定の女性が入っていることを義務化するようになった。画面に出ている人もそしてカメラの後ろにいる人にも女性が増えるように尽力した。
この試みは世界中に広がった。日本のNHKもそんなメディアの1つである。

BBCの平等性レポート

さて、公共のために放送サービスを提供するBBCは番組作りや職員の陣容において「社会構成を反映する」ことを目指している。
約100年前に発足したBBCは、長い間、「白人・男性・中流階級出身者」が職員、出演者、経営陣の中で圧倒的な位置を占めてきた。英国の「中流階級(ミドルクラス)」とは、おおざっぱに言うと、高等教育を受けた、ホワイトカラーの家庭を指す。
しかし、これでは社会を構成する様々な人から支持は得られない。「公共のためのサービス」なのだから。
ということで、近年は職員の構成においていくつかの数値を目標として設定し、毎年「平等情報レポート」を出すようになっている。
目標の数値は女性が50%、黒人・アジア人・他人種的少数者が20%、障がい者が12%(来年から14%に)。労働者階級(ワーキングクラス)出身者が25%である。「労働者階級」とは、英国の文脈では、高等教育を受けていない、主としてブルーカラーワーカーのことを指す。
BBCは女性比率の目標を達成
以下は、BBCの最新の年次報告書に掲載された、職員の構成比である。

女性は全職員では50%を超えたが、管理職レベルではぴったり50%。ほかの部分ではまだ目標を達成できていない。また、BBCの男女の賃金には格差があり、中央値の時給を比較するとその差は8.9%。所得が高い層では男性の比率が高い。まだまだ課題は残されている。
では男女比率を半々にするためには何ができるのか?
次回は欧州の例を紹介したい。




