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小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「なぜBBCだけが伝えられるのか」(光文社新書)、既刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)など。


by polimediauk

家事はもっと軽くできる?――東京都調査と日英の暮らしに見る、家事との付き合い方

 去る11月、東京都が都内在住の男女5000名を対象にした「令和7年度男性の家事・育児実態調査」の結果を発表した。

 これによると、家事・育児にかける1日の平均時間は、男性は3時間29分、女性が7時間48分で、その差は4時間19分となっている。前回調査(令和5年度)より1時間以上縮小したものの、依然として女性により多くの比重がかかっている。特に育児に多くの時間が割かれている。

東京都の家事・育児実態調査のウェブサイトより、キャプチャー
東京都の家事・育児実態調査のウェブサイトより、キャプチャー

 

 複数の国内外の調査を見ても、男女の間で家事・育児にかける時間には差がある。女性の従事時間が長い傾向があるが、なかでも日本は、男女差が比較的大きい国の一つとして知られている。

 時折日本に帰国して母の生活を見ていると、日英では、女性に期待される家事の量や役割、タイミングが大きく異なることを実感する。

 筆者には子どもがいないため、「育児」について読者と共有できる体験はないが、「家事一般」については「こういうやり方もある」という一例として、筆者自身の経験を書いてみたい。日本の状況については、筆者が日本で暮らしていた頃の家庭の様子に加え、近年ソーシャルメディアなどで見聞きする女性たちの声も参考にしている。
 どちらが優れているという話ではなく、異なる文化や生活様式の中で、それぞれの家庭が自分たちに合った形を考えるためのヒントになれば幸いだ。あくまで「一つの参考」として読んでいただきたい。


日本:早朝から始まる調理中心の家事

 日本に住む筆者の母は、毎日早朝に起きる。炊飯器のスイッチを入れ、冷蔵庫から野菜や肉を取り出して調理を始める。母自身と筆者の弟の朝ごはん、そして働いている弟のお弁当作りだ。
 お弁当は職場の人の目に触れることも想定し、彩りよく盛り付け、果物も添える。

 日本のお弁当文化は、栄養バランスや見た目の美しさを大切にし、家族への気遣いや愛情を表すものとして長く受け継がれてきた。外食より経済的で健康的という利点もある。

 母が調理をしている間、弟は寝具を片付け、テレビをつける。時には一緒に台所に立つこともある。
 出来上がると、二人でニュースを見ながら朝食をとる。食後は弟がお茶碗を洗う。

 弟が出勤までくつろぐ間、母はお風呂の残り湯を使って洗濯機を回す。弟の出勤後は、部屋の掃除をしながら洗濯を終え、ベランダに干す。すべて終わるころには、すでに昼近くになっている。

 昼食はありあわせのもので簡単に済ませ、その前後に買い物や支払いなどの用事を済ませる。
 夕方になると晩ごはんの支度をし、食後に後片付けをする。テレビを見たり、お風呂に入ったりして、一日を終える。

 この生活パターンは、筆者が大学に入る前、母の世代の家庭ではごく自然だった形であり、筆者自身も高校生までは毎日母にお弁当を作ってもらっていた。


子どもだった頃の筆者の意識

 当時の筆者は「家事=母がするもの」という意識を持っており、ほとんど手伝っていなかった。せいぜい、空になったお弁当箱を出す、夕食前に食器を並べる程度だった。
今振り返ると、それが当たり前だと思っていた自分の認識自体が、母に大きな負担をかけていたのだと感じる。

 母の一日は、常に誰かの生活を支える家事を軸に回っていた。


英国:調理をしない朝の過ごし方

 英国といっても、家庭ごとに事情はさまざまだ。また、英国式にも課題はある。朝食が簡素で栄養が偏りやすかったり、サンドイッチ中心の昼食では物足りなく感じる人もいるだろう。

 日本のように手間をかけた食事が、家族の絆を深めるという考え方も十分理解できる。

 そうした課題を踏まえたうえで、筆者の家庭の朝の様子を紹介したい。これは英国ではよくあるパターンだと思う。

 筆者は、朝は基本的に調理をしない。電気ポットでお湯を沸かして作る紅茶だけが温かい。

 起床後、ラジオでニュースや音楽を流しながら、自分のためにミルクティーを作る。家族が起きていれば、その分も用意する。「自分が紅茶を淹れるとき、夫(あるいは妻)のために、もう一杯紅茶を準備する」のは一つの「お約束」である。

 朝食のメニューはヨーグルト、果物、コーンフレークなど。

 夜に回しておいた食器洗い機と洗濯機は、朝には作業が終わっているので、洗濯物を取り出して乾燥棚に広げ、食器は合間に片付ける。
 家族はシャワーを浴びたり朝食をとったりするが、互いに細かく関与することはない。筆者も家人も会社勤めをしていた頃から、朝食や身支度は「各自で用意する・済ませる」が基本だった。

 家人は退職しており、筆者も在宅で仕事をしているので、昼食は朝と同様、各自が好きなものを選ぶが、簡単なサンドイッチ類が基本だ。パンにゆで卵やチーズ、ハムなどを添えるあるいは挟むだけなので、10分ほどでできる。

 買い物や郵便などの用事は、仕事の後や夕食前に済ませる。
 夕方からは、ラジオを聴きながら夕食の準備をする。かつては料理好きの家人が夕食を作り、筆者は補助として手伝う形をとっていたが、家人が高齢でフレイルになったので、今は筆者が主としてやっている。


ご飯はレンジで作る

 筆者は日本に住んでいた時、お米を炊くときは炊飯器を使っていた。今、日本から持ってきた炊飯器はあるのだが、電圧を変える必要がある。

 そこで、お米をレンジで調理している。そうすると、10分で炊けてしまう。

 お米を容器に入れて、熱湯を注ぐ。水の量は、お米が隠れて、その上1センチほど水がかぶる程度だ。厳密でなくても、大体この程度で問題ない。

 熱湯を注いだ後、少ししてからラップするかあるいは皿をかぶせ、うちのレンジでは「10分、70%」でかける。加熱後、水分が足りないようだったら水を足し、多いようだったらラップあるいは皿を取って、さらに数分かけるとご飯の出来上がりだ。短時間でできるので、直前まで準備する必要がない。 

 料理は「たんぱく質+野菜+炭水化物」を基本に、一皿中心に盛り付ける。使う食器の数も自然と少なくなる。

 夕食後は家族で一緒に片付け、食器洗い機と洗濯機を夜間運転にセットする。その方が光熱費が安いのである。


それぞれの良さがある

 日本と英国、どちらの家事のあり方が優れているということではない。それぞれがこれまでの歴史や文化、慣習を経て生まれてきた。
 日本の丁寧な家事は、家族への思いやりや食文化の豊かさを支えてきた。一方、英国式の効率を重視したやり方は、時間的な余裕を生み、仕事や自分の時間を持ちやすくする側面がある。「こうあるべき」という一つの正解はないだろう。
 家電を活用する、時には簡素化した食事にする、「ワンオペ」にならないよう、家族全員で準備する・片付ける、時には役割交代をする――こうした選択肢があることを知るだけでも、「自分たちの家庭に合った形はどんなものだろう?」と考えるきっかけになるのではないだろうか。


by polimediauk | 2026-01-06 20:12 | 英国事情