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小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「なぜBBCだけが伝えられるのか」(光文社新書)、既刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)など。


by polimediauk

駐ロシアの英大使が語る なぜまだ「パラレル・ワールド」の国にいるのか 尾行・監視は日常的

 筆者が住む英国と、ウクライナに全面侵攻したロシアとの関係は悪化するばかりだ。

 BBCの特派員がそんなロシアに駐在する大使にインタビューし、1月7日、BBCワールドで放送された

 果たして、外交官がどこまで本音をいうものだろうか。筆者は当初、疑問だったが、最後まで聞いてみると「嘘を言わない」かつ「反ロシア感情を刺激しない」ように気を付けながら慎重に話す中で、生活面での不自由さも含めて、いくつもの新たな発見があった。

 概要を伝える前に、英国とロシアの関係を振り返ってみる。


関係悪化の英国とロシア

 英国とロシアは第2次世界大戦では同じく同盟国側として戦った。

 しかし、英下院資料によると、冷戦終結後の一時期を除けば、両国の関係は長年にわたり悪化の道をたどってきた。その背景には、ソ連崩壊後の国際秩序をどう捉えるかという、双方の認識の違いがある。

 英国を含む西側はロシアを欧州・大西洋の枠組みに段階的に組み込み、協力関係を築こうとしたと考えている。一方ロシアは、ソ連が崩壊した1990年代を国の混乱と国際的な屈辱の時代と見なし、西側が自国の正当な利益を軽視したと受け止めてきた。


ロシアが次第に「警戒すべき存在」に

 こうした不信感は、ロシアが周辺地域や中東で軍事力を行使してきた一連の出来事を通じて、さらに強まった。

 1999年のコソボ問題に始まり、2008年のグルジア戦争、2014年のクリミア併合、そして2015年以降のシリア内戦への介入と続く過程で、英国を含む西側諸国は、ロシアを「協調の相手」ではなく「警戒すべき存在」と見るようになっていった。


スパイを毒殺、神経剤による攻撃も

 加えて、英国に関係するロシア反体制派への攻撃も、両国関係を決定的に悪化させた。2006年には、英国に亡命していた元ロシア諜報員リトビネンコ氏が放射性物質で毒殺され、ロシアの治安機関が関与したと結論づけられた。2018年には、元二重スパイのスクリパリ氏と娘が英南部ソールズベリーで神経剤による攻撃を受け、ロシア政府の関与が指摘された。


ウクライナ戦争でさらに対立

 さらに2022年、ロシアがウクライナに全面侵攻して以降、英露関係は冷戦後で最も深刻な対立段階に入った。英国はウクライナ支援と対ロ制裁の先頭に立ち、両国の外交的な接触は大幅に縮小された。

 現在、英国政府はロシアを重大な安全保障上の脅威と位置づけ、抑止を強化している。その一方で、ロシア国家の行動とは切り離し、ロシアの人々との対話の回路は保ち続けようとするという、難しいバランスを模索している。


駐露英大使へのインタビュー

 このような状況の中、2年前からロシア駐在の英国大使の問題意識や生活はどのようなものなのか。

 在ロシアのBBC特派員スティーブ・ローゼンバーグ氏がナイジェル・ケーシー大使(56歳)に大使公邸で話を聞いた。公邸はクレムリン――ロシア大統領官邸や政府機関が集まる政治の中心――の真正面に位置し、モスクワ川を挟んだすぐ向かいにある。帝政ロシア時代の砂糖王パーヴェル・ハリトネンコが建てた壮麗な邸宅だ。1917年のロシア革命後に国家によって接収された。


ロシアに駐在する英大使ケーシー氏のインタビューをBBCワールドの番組が放送・配信した(BBCのサイトから、キャプチャー)
ロシアに駐在する英大使ケーシー氏のインタビューをBBCワールドの番組が放送・配信した(BBCのサイトから、キャプチャー)


「ロシア国民にメッセージを送りたい」

 駐ロシア大使として、どのような目的で自分がここにいるのかを聞かれた大使はこう答えている。

 ナイジェル・ケーシー大使:ロシアに関する分析や情報の提供、理解の深化、そしてロシアの意思決定を動かす要因や、この国の指導部が何を考え、何をするかについての需要は、これまでになく高まっている。私が携わる仕事への需要は、ソビエト連邦崩壊後の大きな不確実性の時期以来、これほど高かったことはないと思う。

 これは、私の仕事の大部分を占める理由であり、英国の政府が私をここに派遣した理由でもある。なぜなら、政治レベルでの公式な接触はほとんどなく、限られた相互コミュニケーションしか存在しないからだ。

 二国間のビジネス関係においても、大使館は、実際に両国関係の維持に依存する数少ない重要な拠点の一つである。この限られた接点を持たなければ、関係は非常に危ういものになるだろう。だから、これが私たちの機能の中核である。

 加えて、私にとって長期的に最も重要なのは、ロシア国民に向けたメッセージの発信だ。それは、英国はこの関係から立ち去るつもりはない、ということを伝えることである。我々はこれまでいかなる種類の断絶も望んだことはなく、将来に向けて、より良い関係を築きたいと考えている。


「現在の職自体が特権」

 BBC: 働く環境としては、厳しいものがあるのではないか?
 ケーシー大使: 言うまでもなく、現在の状況下でここで働くのは厳しい。しかし、私たちは今、歴史のただ中にいるとも言える。職業的な観点からすると、これほど重要で、結果に大きな影響を及ぼす仕事を、他のどこで行うことができるだろうかと思うほどである。現下の情勢においてこの職に就いているというのは、ある意味で奇妙な特権でもある。

 毎日のように、ロシア国家のさまざまな機関から、「英国がとんでもない計画や陰謀を企てている」と非難されている。その非難の内容は、こちらから見ればますます荒唐無稽なものになっている。こうした非難は英国に対するロシアの深い競争意識に根ざしているのだろう。

 しかし実際にロシア人と話すと、はるかに複雑な様相が見えてくる。人々の態度が公式メディアで描かれるほど単純に白か黒かに分かれていることはほとんどないと分かる。

 普通のロシアの人々から本当の敵意を向けられることは、実のところほとんどない。自分が何者であるかを名乗り、相手がそれを理解した後でさえもそうである。

 私は、ロシアの人々は英国に強い関心を抱いていると思うし、もちろんその逆もまた真である。そこには一定の敬意があり、相互の称賛と関心が存在している。それは、個々の政府や、我々の歴史におけるこのような困難な時期を超えて存続する関係だ。


「会える人が少なくなった」

 BBC: ロシアの国営メディアは反英国的なレトリックで報道するが、一般のロシア人が語る英国像との間には大きな隔たりがあるようだ。当局から敵意を向けられている英国の大使であるあなたの仕事にどのような影響を及ぼしているのか。

 ケーシー大使: これは、私たちの仕事を非常に困難にしている。人々は私たちと会うことを恐れており、私がここに赴任してからの2年間だけでも、私に会いたいと望む人の数が減っていることに気づいた。私が到着した当初ですら少なかったのだが、今はさらに少なくなっている。

 以前であれば、シンクタンクや学術界で接点を持てたかもしれない人々も、現在では、外交官に限らず、非友好的な大使館とのいかなる交流も上層部に報告するよう正式に指示されている。私たちは「非友好的な大使館リスト」の最上位にあるため、特に活動に大きな影響を受ける。その結果、話すことのできるロシア人の輪は非常に限られてしまっている。

 加えて、業務の幅も狭まっている。20年前に私が最後に赴任していた時には、大使館は科学、技術、気候変動、芸術・文化、教育など幅広い分野で活動していた。しかし現在の状況では、こうした協力はほとんど行われていない。


公式訪問は限定的に可能

 BBC:国内を旅行することは可能なのか。

 ケーシー大使:公式な訪問旅行は、ある程度は可能だ。私は最近、ロシア北部の港湾都市ムルマンスクを訪れ、白海沿岸のアルハンゲリスクにも行った。2025年は第二次世界大戦終結80周年であり、北極海の護送船団を通じてソ連を支えた英国の貢献を人々に思い出してもらうための機会であった。しかし、それ以外の地域で公式会談を伴う訪問を行おうとすれば、ほぼ不可能だ。人々は私たちに会うことを避け、突然デモが現れるなど、さまざまな手段で訪問を妨害される。個人的な旅行は可能だが、公式の活動は現状では機能していない。

当局の尾行、監視

 BBC:この話題について触れてよいか分からないが、モスクワの外へ出ると、かなりの頻度で、常にではないにしても尾行されたり監視されたりしていると感じることがある。あなたも同じ経験をしているのだろうか。

 ケーシー大使:その通りだ。私たちは何らかの形で、自分たちの動きや、誰と会い、何をしているかが常に追跡されていると考えている。これは今に始まったことではないが、現在の状況の一つの特徴として、ロシアでは外国人を監視することに対する強い執着がある。そしてそれは、とりわけ私のような立場の者には、以前にも増して当てはまる。

 時には露骨な嫌がらせという形になる。幸い頻繁ではないが、実際に起きている。たとえば、この大使公邸の外で私たちが建国記念日を祝う際には、突然、大きな音を立て、来客を威圧しようとする「心配する市民」を名乗る人々の集団が現れることがよくある。こうした状況では、ロシア人の客が大使館を訪れること自体が危険になってしまう。

 実際、ここを訪れたことで強い恐怖を感じた人々もいる。後になって当局関係者から声をかけられ、それを脅迫として受け止めたという話も聞いている。そのため、一部の人々は、しばらくの間、あるいは完全に、私たちとの接触を避けるようになる。これは偶然ではなく、意図された結果であると私は考えている。

 残念ながら、これはロシア政府がロシア人と欧州との接触をできるだけ減らそうとする大きな方針の一環であろう。私には、1990年代から2000年代初頭にかけて見られた開放的な流れが逆転し、過去の状況へと回帰しているように感じられる。


新たな鉄のカーテン?

 BBC:新しい「鉄のカーテン」や「ベルリンの壁」のようなものが、ロシアと欧州の間に立ち上がっているように思えるが。

 ケーシー大使:確実に、意図的で組織的な努力はある。ロシア政府は、ロシア人と西側諸国との接触を減らそうとしている。インターネットの統制強化を見ると、物理的な制約だけでなく、オンラインでも接触を困難にしようとしていることが分かる。

 BBC:それは、完全な壁になっているのか?

 ケーシー大使:幸いなことにまだ完全ではない。実際、私たちがここにいる理由の一つは、普通のロシア人に対して、私たちが望む関係の形はこれではない、ということを明確に示すことにある。クレムリンはロシア人と西側との接触を減らそうとしているかもしれないが、それは私たちの政策ではない。そしてそれは、私たちとロシア全体と望む関係の形でもない。もしロシアの国境外での行動が変われば、異なるタイプの関係が可能になるだろう。

 BBC:他国と比べ、モスクワの大使の仕事はどれほど挑戦的であると言えるか。

 ケーシー大使:ロシアは紛争地帯ではないが、受入国政府との関係という点では、最も厳しい部類に入る。それが面白さでもあるが、決して簡単ではない。20年前のより良い時代でさえ、簡単ではなかった。私のキャリアの中で最も挑戦的な仕事だ。

 BBC:ロシア政府とは、どの程度の接触ができているのか。

 ケーシー大使: 現時点では、接触は非常に限られている。一般に、私が外務省に出向くのを見かけたなら、それは悪い知らせであると考えてよいだろう。しかし、それは私たちがロシア政府と建設的な対話を望んでいないからではない。私の仕事の非常に重要な部分は、ロシアとの関与を続け、私たちの役割や意図について生じかねない危険な誤解や誤認識をできる限り解消することである。しかし、実際にそうした機会は稀だ。


情報作戦は「一種の儀式」

 BBC:ロシアの外務省に召喚されたときは、どのような雰囲気なのか。

 ケーシー大使:状況はさまざまである。真剣な協議であれば、かなり率直なやり取りになることもある。一方で、いわば「メディア・サーカス」のような場になることもある。その場合、ロシア外務省の広報部門が、見慣れた記者たちを正面玄関の外に集め、出入りの際にこちらを貶めるような演出を仕掛けてくる。こうした振る舞いは、彼らがここで「情報作戦」と呼ぶものの、一種の儀式のようなものである。

 BBC:ここで大使として働くうえで、最も困難なことは何か。

 ケーシー大使:最も困難なのは、職員にかかるプレッシャーを常に案じなければならないことだ。私自身よりも職員の方がはるかに頻繁に厳しい扱いを受ける傾向がある。彼らは尾行されるだけでなく、時には嫌がらせを受けることもあり、さらに長い間家族と離れて暮らすことで、強い孤立感を抱くこともある。

 私の仕事の大きな部分は、職員の健康と安全が守られているかを確認することだ。そして、彼らに対する私の責任の重さこそが、おそらく何よりも、私を夜も眠れなくさせる最大の理由だ。


なぜまだ駐在?

 BBC:時折、「西側のジャーナリストは抗議として撤退すべきではないのか」といった質問を受ける。では、英国の外交官がここにとどまり続けることには、どのような意味があるのか。なぜまだロシアに駐在しているのか、撤退すべきではないかという声もあるが。

 ケーシー大使:まず第一に、私の雇用主である英国政府の立場から見ると、ロシアに関する分析や情報、理解、すなわちロシアの意思決定を動かしている要因や、この国の指導部から何を期待できるのかについて、これほど大きな需要があった時期はかつてなかった。私たちの仕事への需要は、おそらくソビエト連邦崩壊後の、大きな不確実性の時代以来、これほど高まったことはないと思う。だからこそ、それが私の仕事の大部分であり、雇用主が私をここに派遣している理由でもある。政治レベルでの他の接触がほとんど存在しないからである。

 ビジネスの世界においても、今や両国の関係がかろうじてつながっている唯一の糸は、私たち二国の大使館であると言ってよい。少なくとも、この限られた相互の意思疎通の回路を維持していなければ、状況は極めて危険になるだろう。したがって、それもまた私たちの役割の中核をなしている。

 そして第三に、先ほども触れたように、私にとって長期的に最も重要だと思うのは、ロシアの人々に対して一つのメッセージを送り続けることだ。すなわち、私たちはこの関係から立ち去るつもりはない、ということだ。私たちは、これまでいかなる形の断絶も望んできていない。そして将来において、異なる関係を築きたいと考えている。ただし、それはロシアの国境外での行動が根本的に変わることにかかっている。

 さらに言えば、ロシアは今後も長期にわたって向き合わざるを得ない国家である。これからも世界最大級の国の一つであり続ける存在だ。ロシアのプロパガンダの多くは、「西側はロシアを無視し、忘れ去った」という物語を語ることに費やされている。しかし実際には、私たちがロシアを無視したことなど、ほとんどない。あなたは三十年以上にわたってこの国を取材してきたのだから、私たちがロシアを見過ごしてきたわけでは決してないことを、よく承知しているはずである。

 確かに、ロシアをめぐっては、連日のようにさまざまな出来事が報じられている。その多くが、残念ながら好ましいものではない。しかし、それでもなお、ロシアは決して無視できる存在ではない。そして、ロシアを理解し続けることは、私たちの国益、とりわけ欧州大陸の安全と安定にとってきわめて重要だ。だからこそ、私たちは自ら進んでこの場を去るつもりは決してない。


ロシアのパラレル・ワールド

 BBC:ロシアでは、黒が白になり白が黒になるようなことがあり、まるで別の現実に生きている感覚がある。その中で働くのはどれほど大変か。

 ケーシー大使:ここでは、ロシアのプロパガンダが作り出す「パラレル・ワールド(別世界)」の中で生活しているような感覚になる。

 私は自分のチームにも勧めているが、私自身も正常な世界がどのようなものかを思い出すために、定期的にロシアを離れるようにしている。ここに長くいると、24時間365日押し寄せる虚偽情報の波を無視することは非常に困難であり、それが心に浸透してしまう。ロシアの人々が同様に情報を非常に頻繁に目にすることで、その一部を無意識に受け入れてしまう理由も理解できる。


ルイス・キャロルも訪れた

 ケーシー大使:私が面白いと思った発見の一つに、ルイス・キャロルが1867年にロシアを訪れたことがある。彼が英国以外で訪れた唯一の国であり、一部の人々は、彼の作品の「鏡の国のアリス」はこの訪問体験への反応として書かれたと考えている。その内容は、当時のロシアでの経験がいかに異質であったかを示している。キャロルは、あたかも偽りの鏡に映った都市を見ているかのようだと語った。

 BBC:それは興味深い。ルイス・キャロルがロシアに来ていたとは、まったく知らなかった。

 ケーシー大使:キャロルは当時、東方正教会とカトリックの再統一を目指す宗教会議に参加するためにロシアを訪れた。その際、モスクワの正教会の高位聖職者である府主教とも会っている。彼の訪問はモスクワやサンクトペテルブルクだけでなく、ロシアの歴史的都市ニジニ・ノヴゴロドにも及んだ。この経験は彼に深い印象を与えた。

 なお、キャロルはロシア語を理解できなかったため、現地の人々が話す言葉や声の意味をまったく把握できなかった。その奇妙で不可解な感覚が、彼の有名な詩「ジャバウォッキー」(意味不明な言葉や韻で描かれる想像上の怪物)の着想につながったと考えられている。


文化的な魅力

 BBC:では、大使ご自身がロシアについて好きな点、惹かれる点はどこにあるのか。

 ケーシー大使:モスクワは今でも多くの点で素晴らしい都市だ。劇場、映画、音楽、美術展など、文化的な魅力は尽きない。私は可能な限り、劇場に行き、新しい映画を見に行き、毎晩提供されている世界的なレベルの音楽を聴きに行く機会を得ようとしている。私は大学で歴史を学んだが、ロシアは歴史に満ちている。それが私をここに引き留めている。あなたも同じように感じているのではないか。


プーチン大統領の思考を知るには

 BBC:全く同じだ。会話を政治状況に戻すと、私自身がよく聞かれるのがプーチン大統領は何を考えているのか、だ。大統領の思考プロセス、思考パターン、彼の計画が何であるかを解明することは可能だろうか。

 ケーシー大使:ロシアの政治は非常に閉鎖的であり、外交官としては限られた情報の断片から全体像を組み立てる必要がある。しかし、プーチン大統領の場合、公にされている手がかりが比較的多い。私は、大統領の公開演説や論文を読むことを常に勧めている。

 特に注目すべきは、2007年の有名なミュンヘン演説や、2024年6月にロシア外務省で行われたウクライナでの軍事作戦の目的に関する演説だ。

 ミュンヘン演説では、プーチン大統領は北大西洋条約機構(NATO)の拡大や西側諸国の一方的な行動に強く反発し、ロシアの安全保障上の懸念を世界に訴えた。2024年の演説では、ウクライナでの作戦の目的や、ロシアとウクライナの歴史的関係について自身の見解を示している。これらの演説や論文を読むことで、彼の世界観や目標の一貫性を理解できる。

 もちろん、これらの内容をすべて文字通りに受け取ることができるかどうかは、長年ロシアでの経験を持つ者でも判断が求められる挑戦である。しかし、大統領の世界観と目標は一貫しており、彼が大統領となった初期の時代まで遡っても同様の傾向を確認できる。

 英国の首相だったウィンストン・チャーチルはかつてロシアの政治を「カーペットの下で戦うブルドッグ」に例え、結果を見た後で初めて何が起こっていたかを理解できる、と述べている。私の仕事も同様である。限られた情報の断片を組み合わせ、残りは自分の経験や知識で補い、全体像を描く必要がある。プーチン大統領に関しても、公に示されている手がかりを基に、その他の部分は自ら補って理解することが求められる。


by polimediauk | 2026-01-15 17:42 | 英国事情