薬物混入で女性に性的暴行を企てる男性たち 仏元上院議員、英国の元区議も
仏のジゼルさんだけではなかった
元夫に薬物を盛られた上でレイプされ、さらに約10年にわたり、当時の夫がインターネットで募った男たちから性的暴行を受け続けていた――。
ジゼル・ペリコさんの境遇は、フランス社会のみならず、国際的にも大きな衝撃を与えた。衝撃を受けたのは、女性だけではないだろう。
配偶者という最も近しい関係にある相手が、飲み物に薬物を混入し、同意のない性行為に及ぶ。それだけでも言語道断だ。それにもかかわらず、他の男性を呼び込み、組織的に性的暴行を行わせていた事実、しかもそれが長年にわたって続いていたことは、想像を絶する。
ジゼルさんは匿名での証言権を自ら放棄し、裁判は公開で行われた。
2024年12月、元夫ドミニク・ペリコ被告は、加重レイプの罪で法定最高刑となる禁錮20年の判決を受けた。共犯として起訴された他の被告50人も全員が有罪となり、禁錮3年から15年の刑を言い渡されている。
筆者を含め、多くの人はこの事件を「極めて異例な犯罪」と受け止めてきたのではないか。
しかし、ここ最近、立て続けに報じられた複数の事件がその認識を揺るがしている。
英国の元区議が妻への薬物投与とレイプ
1月23日、英国で、元保守党の区議フィリップ・ヤング被告(49)が、13年にわたり当時の妻ジョアンさん(48、現在は離婚)に薬物を投与し、レイプや盗撮などの性的行為を繰り返していたことを認めた。
ヤング被告は、元妻との親密な画像や動画500点以上を密かに撮影・所持していた。
同被告は2007年から2010年まで、ロンドンのスウィンドン区議会で保守党の区議員を務めていた人物である。
ジョアンさんに対する性犯罪に関与したとして起訴された他の4人の男性も、ウィンチェスター刑事法院に出廷しているが、いずれも無罪を主張している。
捜査当局は、さらに関与者が存在する可能性も否定しておらず、全容解明には至っていない。
仏の元上院議員、国会議員への薬物投与
27日には、フランスで元上院議員が、現職の国会議員の飲み物に合成麻薬を混入し、性的暴行を企てた罪で有罪判決を受けた。
元上院議員のジョエル・ゲリオ被告(68)は、懲役4年(うち18カ月は実刑)を言い渡され、精神的苦痛に対する損害賠償として、被害者であるサンドリーヌ・ジョッソ下院議員(50)に5000ユーロ(約91万円)の支払いを命じられた。
事件が起きたのは2023年11月。ゲリオ被告は、自身の上院再選を祝う目的で、ジョッソ議員をパリの自宅に招いていた。
シャンパンを口にしたジョッソ議員は、ほどなく強い体調不良を覚えた。「彼は私をじっと見つめていました。これまで見たことのない表情でした。体調が悪いと言えば、無理やり横にならされるのではないかと恐ろしく、弱みを見せたくありませんでした」。これは裁判記録に残された証言である。
ジョッソ議員は何とかその場を離れ、同僚の助けを借りて病院に搬送された。
毒物検査の結果、血中から通常使用量の約3倍にあたるMDMA(通称エクスタシー)が検出された。
ゲリオ被告は、MDMAを混入した飲み物を提供した事実自体は認めている。ただし、「事故だった」と主張し、性的暴行の意図は否定した。
被告は法廷で、自身がうつ状態にあり、前夜に自分で薬物を使用するつもりだったと説明した。結局使用せず、翌晩に誤ってそのグラスをジョッソ議員に提供してしまったという。
「サンドリーヌには申し訳ない。自分の不注意と愚かさに嫌気がさしている」。被告はパリの法廷でこう述べた。
一方で、MDMAやGHB(いわゆるデートレイプドラッグ)に関する複数のインターネット検索履歴について問われると、「記憶にない」と答えている。
中道右派「オリゾン党」に所属していたゲリオ被告は、告訴が明るみに出た後に職務停止となり、すでに上院議員を辞職している。
被害者が声を上げ、社会を変えようとしている
「私が経験したことは、今も非常に辛い。心理的トラウマは、まるで時間が止まったかのようです。些細なことで驚き、とても脆弱になりました」。裁判開始前、彼女はフランスメディアにそう語っている。
ジョッソ議員が参加している運動組織は、2024年に、先のドミニク・ペリコ被告の娘によって設立された。ジョッソ議員は、ペリコ裁判にもたびたび足を運んでいた。
今回の判決後、彼女は「大きな安堵を感じている」と述べた。一方、ゲリオ被告の弁護士は控訴の意向を示している。
薬物を盛る行為は明確な犯罪
薬物を相手に無断で摂取させる行為は、それ自体が違法であり、重大な犯罪である。
それが信頼や愛情を前提とする夫婦やパートナー間であっても、あるいは職場の同僚や友人同士であっても、決して許されるものではない。
薬物によって相手の意識や判断力を奪い、その状態につけ込んで性的行為に及ぶことは、明白な性暴力である。
英国やフランスの事例が示すように、社会的地位や公的な信頼を得ていた人物であっても、加害者になり得る。
この種の犯罪を「特殊な人間による例外的な事件」と捉えることは、問題の本質を見誤らせる。
身近な知人や友人が同様の被害に遭っていないか、あるいは誰かが加害行為に及ぼうとしていないか。私たちは常に注意を払う必要がある。
もし飲み物を口にした後、急激な体調不良や強い違和感を覚えた場合は、ためらわずにその場を離れ、安全な場所へ移動し、信頼できる人や医療機関に助けを求めてほしい。
沈黙や見過ごしが、加害を助長することもある。一人ひとりがこの問題を自分事として捉え、互いを気にかけ、守り合う社会でありたい。




