風刺画 雑感2
既に風刺画問題はデンマークの話や表現の自由の話をはるかにこえてしまっている。
世界各地の状況が瞬時に報道されている。旗を燃やしている写真や怒りの形相で抗議デモをしている様子をテレビなどで見ると、これまでに積もり積もった怒りが一度に表出しているようだ。見ているだけで、怒り、不満がこちらにも画面を通して伝わってくる。
ロンドンの外国プレス協会で、エジプト人ジャーナリストに感想を聞いた。「風刺画はひどいと思うけど」、と言ってから声をひそめ、「ここだけの話だけど、旗を焼いたり大使館を攻撃している人たちは、頭がおかしいよ」。
スペイン人のジャーナリストは、「風刺画で何を描くかに、タブーがあるわけがない。何を描いてもいいんだよ。表現の自由だ。描いてはいけないものがあるとしたら、ただ一つ。『お前を殺す』と直接問いかける風刺画だ」。
しかし、風刺画を掲載したユランズ・ポステン紙が、かつて、キリストを風刺する風刺画を掲載する機会があって、同じエディターが、これを取りやめていたことを指摘し、「これを考えると、やっぱり、ムスリムに対するネガティブな見方、外国人嫌いという要素もあったよね、きっと」という。
ドイツ人ジャーナリストは、「欧州人としてデンマーク紙を支持する、表現の自由を支持する、という姿勢で風刺画を掲載した新聞があった」という。「いかにも勝者のようなトーンだった」。風刺画にタブーはあるべきではない、という。「表現の自由は、聖なるものなんだよ。絶対に守るべきに決まっている」。しかし、「デンマークの新聞が風刺画を掲載したのは去年の9月だよ。それを後で再掲載するのが、『表現の自由を守る』行為とは到底思えないけれどね」、と続けた。
欧州にいて、ムスリムたちとともにどうやって、幸せに生きるのか?どうしたら、2つのグループの間に妥協点が見つかるだろうか?
どの西欧の国も、増えるイスラム教徒の市民とどうつきあったらいいのか、模索しているように見える。