小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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デンマーク 4

風刺画たちの所在


 デンマークで会った風刺画家の人の話によると、例のユランズポステン紙の12の風刺画の中で、誰が、特に問題とされた、ターバンが爆弾になっている・導火線がついている風刺画、及び「処女が足りなくなっている」と話している風刺画を描いたかは、デンマークの風刺画仲間では周知だそうである。

 ・・・と書いたのは、英国の新聞だけどを読んでいると、「全く行方が知れず」という表記で、もちろんこの部分は正しいのだろうが、私の印象として、「匿名」「誰だかわからない」という認識をしてしまっていた。

 しかし、もちろん、40人ほどと言われているデンマークの新聞業界の風刺画家の中では誰が描いたか分かっているのだし、つまりデンマークのメディアは知っていることになる。

 私が話した風刺画家は、ユランズポステンがムハンマドの風刺画を掲載したがっている、という話は風刺画仲間では、昨年9月の掲載前に、広く伝わっており、それは自分たち自身が声をかけられたから。この風刺画家自身のところには話は来なかったけれど、「来ても断っていた」という。わざわざイスラム教徒の国民(デンマークでは非常に小さなグループ、と彼は表現していた)を、インセンシティブに刺激する気持ちが個人的にないし、かつ、保守系ユランズポステンに描くことで、デンマーク政治界の「右」の流れに、こういう形で加わりたくない、と思ったという。

 デンマークでは、国民党という右派(極右派)の政党が力を得ている。この政党の協力がないと、現在の政権党がj国会で過半数を得られないので、たよっているということだ。

 従って、「僕個人の見方だが」、とこの風刺画家は前置きをしながらも、「デンマークの国内事情があって、この12枚の風刺画がある」、というものだ。

 問題の風刺画を描いた風刺画家たちの所在がデンマーク国内では調べようと思えば調べられるにも関わらず、名前が出ていない(風刺画にはサインがついていたようなので、アイデンティティーはすぐ分かる、と聞いた)だとすれば、個人情報をすっぱぬく英メディア(タブロイド)より、まともな部分があるのか?など、いろいろ考えた。

 ところで、オランダの政治家アヤーンヒルシアリ氏が、今回の風刺画事件に関して、ベルリンでスピーチをしていた。私は、ドイツ紙ウエルト(英語でベルトという発音で聞いているのだが、ドイツでは本式にはどんな発音なのか??)の、ブログ上で英語で知った。

 それをルモンドが掲載したのを、ブログで翻訳した方がいらっしゃる(すごい!!)。ご興味のある方は、ぜひごらんになっていただきたい。

http://neshiki.typepad.jp/nekoyanagi/2006/02/__d106.html#comment-198366
by polimediauk | 2006-02-17 15:18 | 欧州表現の自由