小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「なぜBBCだけが伝えられるのか」(光文社新書)、既刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)など。


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デンマーク6


 風刺画掲載に対する怒りの波紋は世界中で広がり続けているが、CBSテレビのウエブのニュースによると (http://www.cbsnews.com/stories/2006/02/17/60minutes/printable1329944.shtml)、デンマークのイスラム教イマーム、アーマド・アブ・ラビン氏は、「自分が起こした行動によって死者を含めた犠牲者が出たことに関して」(この表記はCBS)残念に思っている、と述べたという。米国で19日の60ミニッツという番組で放映されるようだ。

 「(死者が出たことに関して)残念に思っている。イスラム教徒、キリスト教徒、ユダヤ教徒にとって、宗教とは、人間に対して、生きてゆくための機会を与えるものだ。死ぬためではない」。「しかし私たちは、自動車を作ったり、事故を起こしたりするものだ。摩天楼を建設しても、地震で崩壊することもある。これが人生だ」。

 アブ・ラビン氏は、ユランズポステン紙に掲載された預言者ムハンマドの風刺画12枚に対する抗議に対して、ポステン紙や政府側からの期待する反応がなかったため、12枚の風刺画に加えて掲載されていない画像を携え、支持を求めて中東諸国を回った。ユランズポステン紙とは関係ないムハンマドの風刺画像は、掲載されたものよりも、さらに過激だったといわれている。後者が、イスラム諸国での怒りを増幅させている、という説がある。

 氏は、CBSのインタビュアーに対し、どれが掲載されたものでどれが掲載されなかったものかを、示すことができなかった、という。

 一方、CBSは、ユランズポステン自身が怒りを扇動した、という見方もある、と伝えている。前外相のウッフェ・エレマン氏もこれに同意する。「(ユランズポステン紙は意図的に挑発的だった)。私も強く反応した・・少数民族をこんな風に扱ってはいけない。他人の信仰を踏みつけてはいけない」。

 ライバル紙の編集長タガー・セイダンファーデン氏は、ユランズポステン紙の掲載の権利を弁護している。「もちろん、掲載の意図は、デンマークのイスラム教徒の少数グループからの反応を引き出すためだった」としながらも、ユランズポステン紙が「馬鹿なことをする権利」を弁護する、とした。

 今回、ユランズポステン紙の関係者は取材に応じていない。しかし、以前にCBSの取材に対して、掲載の理由は、民主主義においては、表現の自由以上の高い価値はない、と言っていたという。
by polimediauk | 2006-02-19 04:27 | 欧州表現の自由