日本の英字新聞 読ませるための新聞デザインの工夫 (1)
これまで、このブログで、何度か、英国の新聞のレイアウトデザインが良い・悪いというようなことを言ってきた。
その根拠、ベースになるものは何なのか?
実際のところ、自分自身が英語の新聞の紙面を作っていた、という経験がまずある。古くは20数年前に大学で英字新聞を作っていた。といっても、当時は卵の卵のようなことで、新聞のレイアウトデザイン(今後、デザイン、と呼ぶ)には殆ど全く頭を使うことなくやっていた。経験にさえも入らないほどの英字新聞作りだったが、キーボードで原稿(英作文のようなものだったが)を打ち、印刷をしてもらっていた新聞社でゲラチェック、という作業をやっていた。
その後いくつかの職を経験し、新聞社に入ってからは英字新聞を作っていた。翻訳、紙面づくり、取材、原稿書きなどを一通りやったが、「英語の新聞のデザインはどうあるべきか?」という部分を特に教わったというよりも、みようみまねでやっていた。しかし、数年して、ある基本原則があることを、職場で教えてもらった。その時はどちらかというとあまり気をいれずにやっていたが、英国に来て新聞を見てみると、全く同じ原理が使われていることが分かった。
教えてもらった原理・原則には、例えば以下があった。
―紙面は重要度の順にめりはりをつける
―二つの記事の見出しがぶつからないようにする。どちらかを上にしたりなどして、ずらす(1つ1つのピースをはめていくような、パズル的な作業になる)
―一定の隙間(白い部分)を大切にする。
―色味を考える
他にもたくさんあるが、こういう点を書くと、あまりたいしたことがないように思えるかも知れず、また紙面制作に興味のない方は分かりにくい点もあるかもしれない。しかし、実際には、二つの記事が同じ高さに並んでいて、別々の記事の見出しが同じ高さにあるため、非常にごちゃごちゃした紙面になっている例など、この原理原則に沿っていない場合、あまりあかぬけない印象になる。ただし、紙面デザインは主観的な要素が入ってくるので、原理原則が変わる場合もあるだろうし、応用はそれぞれ違う。
例えば、現在のガーディアンは、いろいろなルール、原理原則(色味も含め)に沿っており、きれいな感じがする。薄いベージュ、ブルー系はややトレンドになっているようで、例えば、日本にいる方は、週刊の英字新聞「日経ウイークリー」を見ていただくと、基本になってきた「色味」が分かると思う。逆に、どぎつい赤や黄色は(どういうのが「どぎつい」のかは、実際の色で説明するしかないのだが)、あまりいいとは思われないようだ。英国の大衆紙のフロント面がどぎつい色を使ったりする。
一般的な雑誌などのグラフィックデザインと英語の新聞のレイアウト・デザインというのは、似ているところがあっても違う。どこが違うのか?
そこで、昨年、私がかつて勤務していたデイリー・ヨミウリを訪ね、英字紙デザインレイアウトの基本を、2001年10月の紙面刷新の担い手となった杉山智代乃氏に聞いてみた。彼女がユニークなのは、英語の新聞のデザイン・レイアウトを米国で勉強した日本人である点だ。23日にも書いた米国Society for News Designのメンバーとなって、セミナーなどに出てきたという。http://www.snd.org./index.html
その前に、日本の英字新聞界の現況を。
日本で発行されている英字新聞(フィナンシャルタイムズなどの外国の新聞を除く)というと、まず発行部数が長年トップのジャパン・タイムズ、それに続くデイリー・ヨミウリ、そしてかつてはデイリー・マイニチ(マイニチデイリーニュースと言ったかもしれない)、また夕刊紙の朝日イブニング・ニュースが全国紙として4強だった。現在、マイニチはオンラインのみとなり、朝日イブニングニュースはインターナショナルヘラルドトリビューン紙のサプルメント(中面に数ページ)となったため、経済紙の日経ウイークリーを除くと、紙の新聞の朝刊紙で残っているのはトップの2つ、ジャパン・タイムズとデイリー・ヨミウリのみだけとなった。日本ABC協会によると、2005年1月から6月の平均で、ジャパン・タイムズの発行部数は48,844部、デイリー・ヨミウリは 40,513部となっている。(やや古い数字で恐縮である。基本的にはメンバーでないとデータがもらえないことになっている。)このほかに、ネットのみの英字新聞でJapan Today がある。盛りだくさんで、非常に活気がある。(続く)
(追記: alfayokoさんのご指摘のように、Japan Today のウエブアドレスはhttp://www.crisscross.com/jp/ に変更になりました。先のアドレスでアクセスしようとした方、ご迷惑かけました。)