小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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ジル・ケペル氏の本 雑感


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 フランスの政治学者ジル・ケペル氏の話が、前にBBCオンラインに出ていた。欧州の若いムスリムたちが、ネットを通じて情報を交換し合い、ジハードをするようになってゆく・・・というような趣旨の記事だった。http://news.bbc.co.uk/1/hi/magazine/3997701.stm

 その後、取材する機会があり、その後で本を数冊買った。日本語で出ているのは1冊ぐらいしかなく、大分前のものだったが、新しい翻訳本が出ていることを知った。「ジハードとフィトナ」という本らしいが、どの英語本(あるいはフランス語本)に相当するのだろうか?

2006. 02. 26 読売新聞 「ジハードとフィトナ」ジル・ケペル著
◇評者・布施裕之(本社編集委員)
 「フィトナ」というなじみの薄い言葉を用いて、9・11後のイスラム世界や欧米との関係を読み解いた意欲作だ。「フィトナ」は、異教徒との聖戦「ジハード」の対極にある概念で、イスラム教内部の反乱や内戦を意味する。フセイン排除後のイラク国内の混乱を本書はこの「フィトナ」の現れとみる。中東の現実に対する米国の「無知」が「パンドラの箱」を開けたとする一方、クルド族、シーア派、スンニ派が権利回復を求めて争い、「フィトナの深みに沈んでいく」イラクの現状は、イスラムの学識者が予見していたことだったとも指摘する。
 著者はフランスのイスラム専門家。ネオコン(米新保守主義)やアル・カーイダ・ザワヒリの思想の紹介も簡潔でわかりやすい。ただフィトナ解消に、イスラム同化政策を進める欧州が役割を果たしうるとした終章は、マホメットの風刺画をめぐる騒動を見ると、いかにも皮肉な気がする。早良哲夫訳。(NTT出版、3200円)


 最後の結末は、確かに、皮肉な部分があるのかもしれないが、私自身は、「フィトナ解消に、イスラム同化政策を進める欧州が役割を果たしうる」としたらしいケペル氏の分析を信じている。「イスラム教徒の真の戦いの場は欧州になる」ということを言われたとき、「は??」と思ったのだが(前後の説明を抜きにして急に書いて恐縮だが)、欧州に住む、イスラム諸国から来たムスリムたちの話を聞くうちに、納得するものがあった。

 詳しい理論づけはケペル氏の本を読むしかないが、3200円ということは、かなり分厚いのだろうか?

 (ケペル氏のコメントも少し入った、欧州の宗教に関して書いた文章を参考までに残しておきたい。EUの憲法草案、当時のアメリカの状況との比較も入ったエントリーを、http://ukmedia.exblog.jp/m2005-04-01/#1421560 を1回目として、3回に分けて書いた。)

(追記:後で、日本語の方を買ってみた。最後まで読むことは読んだが、英語本と同じく分かりにくかった。翻訳のせいではなく、この人の書き方だろう。オリジナルのフランス語だと読み易いのかどうか???)
by polimediauk | 2006-02-28 04:39 | 欧州表現の自由