小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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在英仏大使館が、元グアンタナモ拘束者の講演支援を拒否


「英国の内政に干渉できないから」

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 米国防総省が3日、米海軍グアンタナモ基地(キューバ)で長期拘束中の「敵の戦闘員」の氏名や国籍を公開すると発表した・・・というニュースが報道されたり、ベルリン国際映画祭で元拘束者の物語をドキュメント仕立てで作った「グアンタナモへの道」が賞をとるなど、グアンタナモ関連のトピックがまた注目を浴びているが、5日夕方、自分にとっては驚くべきメールを受け取った。
                                           
 このメールは、「ルモンド・ディプロマティークの友の会」のロンドン支部からのもの。グアンタナモ基地収容所に「敵性戦闘員」として拘束され、1年前に釈放された英国人男性モアザム・ベッグ氏(上の写真 BBCオンラインより)が、今年1月14日、ロンドン支部が主催したイベントにスピーカーとして出ていたが、このとき、通常のイベント開催の場所を仏機関から拒否される、という経緯があった。

 「友の会」は、毎週土曜日、ロンドンのフレンチ・インスティテュートの建物を使い、学者やアーチスト、運動家などと市民のディスカッションの場(通称「カフェ・デポ」)を提供してきたのだが、通常通り、ベッグ氏をゲストとして呼んでいたところ、開催直前にフレンチ・インスティチュートが「今回は場所を貸せない」と「友の会」側に伝えてきた。

 「英国の内政に干渉するわけにはいかない」というのが理由だが、主催者側は英国の政治家をこれまでに招いた際には何の問題もなかった。インスティテュートが場所の貸与を拒んだのは今回が初めてだった。結局、この回はロンドン・インペリアル・カレッジで開催された。(私も行ってみた。)
 
 場所を使わせてもらえなかった理由を、「何らかの意味でベッグ氏がテロに関係している、あるいは危険な人物とみている可能性もある」と、主催者側は話していたが、今回在英フランス大使に「正式な回答を求め」、その結果を伝えてきたのだった。

 メールは、フランス側の返答が納得できるものではなかったため、今後は別の場所で開催することを決定した、というものだった。 

 友の会は、フレンチ・インスティテュート側に対し、「英国ムスリムコミュニティーにおける、7-7テロの影響」と題された講演予定を伝えていたが、インスティテュートはスピーカーに関する詳細な情報を要求した。情報提供にあたり、友の会は、3年間の基地収容所拘束の結果、無実になっていること、帰国してからは和解と非暴力を訴えてきたことを伝えた。

 これに対し、インスティテュートの文化担当者が、「開催場所はフランス大使館の一部であるし、英国の内政事情に一切干渉するわけには行かない」ため、場所を貸せないし、この決定を自分が覆すことはできない、と言ったという。

 友の会の運営部はこの説明は不明瞭だとして、フレンチ・インスティテュートに再度コンタクトを取った。そこで、スピーカーが問題なのでなく、話すトピックが問題なので、場所の使用を許可できない、ということだった。そこで講演のタイトルを変える事を申し出ると、それでも開催は禁止されている、という答えだった。(みなさんも、こういう経験はないだろうか?非常にiいやな経緯である。)

 友の会は、このような返答は、スピーカー自身だけでなく、英国のムスリムコミュニティーにマイナスの影響を及ぼすだろう、と思ったという。

 何らかの誤解が起きている可能性もあるため、今度はフランス大使に説明の詳細を求める手紙を書いた。

 2月になってから、友の会は大使からの短い手紙をもらったが、これは、フレンチ・インスティテュートの文化参事官のオリビエ・Chambard.(シャンバール)氏に聞くように、ということだった。そこで友の会の代表が、先のインスティテュートの文化担当者とシャンバール氏との面談の機会を持った。

 面談は、不毛に終わった。シャンバール氏は、フレンチ・インスティテュートは「外交の場所であり、仏大使館にリンクしている」というこれまでの説明を繰り返すだけだった。「外交上の場所」なので、 「重要な国家的議論」に言及するようなスピーカーを受け入れることには積極的ではない、とした。

 過去に、同程度にセンシティブな問題について話した際には、何故使用が許可されたのかに関しては、何の説明もなかった。「これからも友の会がインスティテュートを使うことを望んでいる」、と言われたが、友の会側は、同様のことがいつ起きても不思議はない、と感じた。

 毎週土曜日の議論の会合は、まさにこうした「重要な国家的及び国際的問題」を議論し、言論の自由を保障するために存在している、と友の会は考えた。「社会の中で無視されたり誤解されたりしているような事柄に関して情報を広め、また、社会的正義の土台を崩すような政策あるいは状況を黙らせてしまうような動きに反対するために、存在している」のが、存在理由だった。

 したがって、大きな国際的重要性を持つトピックに関して話そうとしていた、何の罪にも問われていないスピーカーが来ることを禁止するような場所で、今後、イベントを開催していくことは不可能だ、と友の会は考えた。

 「将来的に同様のイベントが恣意的に開催を停止されることも起きるかもしれない。フレンチ・インスティテュートには、これまで場所を貸してくれていたことを感謝するが、3月末をもって、最後としたい」と書かれてあった。

 4月からは場所を変えてイベントは続くということだが、「元拘束者」への偏見がいかに強いか、未だ「危険人物」と見られている現状に、驚いた。それも、仏政府がそうしているのだ。英政府から、何らかの指示があったのだろうか?この点がはっきりしない。

 いずれにしろ、英国の文脈の中では、フレンチ・インスティテュートのこうした動きは、フェアではない、正当ではない、人権問題・・といった風にとられる。

 しかし一方では、仏のテロ取り締まり策は英国よりはるかに現実的で厳しいとも聞く。

 とにかく、こういったことが日常的に起きていることを知った日だった。

 参考: ロンドン支部 イベント情報他 http://www.monde-diplo-friends.org.uk/

 グアンタナモ関連ニュース。

<米国防総省>「敵の戦闘員」の氏名、国籍を公開へ

 【ワシントン和田浩明】米国防総省は3日、米海軍グアンタナモ基地(キューバ)で長期拘束中の「敵の戦闘員」の氏名や国籍を公開すると発表した。AP通信の公開要求をニューヨークの米連邦地裁が2月下旬に認めたことを受けた措置。同基地には01年からの対テロ戦争で拘束された外国人約490人が収容されているが、身元や容疑はほとんど公表されず、人権擁護団体などから批判が出ていた。
 何人分の身元が公表されるかは不明だが、同通信は数百人分に上るとしている。公開されるのは、拘束者の一部の氏名や国籍を含む関連文書317件約5000ページ分。同省はAP通信の請求に基づき文書をいったん開示したが、拘束者の氏名や国籍などは「公開すれば拘束者が報復を受ける可能性がある」などとして塗りつぶしていた。 (毎日新聞) - 3月4日17時29分更新


 「グアンタナモへの道」(仮の題)が映画祭で賞をとったものの、出演者たちが拘束されたという情けないニュースが、先月末報道されていた。しかも、元拘束者たちは、「無実」だったはずなのだが。まだ疑われているのだろうか?

テロ容疑者演じた男優拘束 ベルリン映画祭の受賞作

 【ロンドン22日共同】英警察当局は21日、世界三大映画祭の一つ、ベルリン国際映画祭で次点の銀熊賞(監督賞)を受賞した「ロード・トゥー・グアンタナモ」で、米軍に拘束されたテロ容疑者を演じたパキスタン系英国人ら男優2人を、反テロ法に基づき16日に一時拘束していたことを明らかにした。
 同作品はグアンタナモ米海軍基地での収容者への虐待などがテーマ。警察は拘束について「通常のテロ対策の一環」としており、具体的なテロ容疑はなかったとみられている。映画のモデルとなった元被拘束者の2人も同時に一時拘束された。
 所属事務所などによると、男優らはベルリンの映画祭からロンドン郊外のルトン空港に到着した際に警察に呼び止められた。 (共同通信) - 2月22日12時5分更新

 

by polimediauk | 2006-03-06 06:50 | 政治とメディア