小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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NHK問題で、識者が語るーJAN JANより


メディア関係者の緊急記者会見

 「市民記者がレポートするインターネット新聞」というJAN JANというサイトで、NHK問題に関する会見の様子を伝えている。

 http://www.janjan.jp/media/0501/0501192730/1.php

 NHKへの政治介入問題などについて、18日午後、参議院議員会館第1会議室(東京永田町)にて、メディア関係者らが「NHK問題に関する緊急記者会見とアピール」を開き、そのコメントを拾ったものだった。

 こうした意見だけ読んでも、様々なポイントがあって、頭の中で整理するのが難しいが、イギリスで言うとBBCと時の政権の関係に似ているな、と思う。

 実は、日本の外側にいると、何故今までこうしたこと、つまり時の政権とNHKの対立が表に出なかったか?と不思議でさえある。また、大手新聞に政府が干渉して大問題に・・・という話が何故でないのだろう?そういう、時の権力との対立が、日本でないはずがない。

 心に残ったのが、最後の二人のコメントで、まずDAYS JAPAN編集長・広川隆一さんの「僕がバグダードに行った時には、現地報道の中では『こんなことが行われているんだ』ということがあって、それが当然世界でも伝わっていると思ったら、日本に帰ってきて、そういうことが一切伝わらない状況がありました。それを報道しようとするジャーナリストは日本にも存在する。だが、その人の意向のままに表現できるような場所がない、メディアがない」

 このとき、「表現できるような場所がない」というのを、広川さんはもしかしてメディアの自己規制とか、そういうことを言っているのかもしれないが、イギリスにいて思うのは、ただ単に想像力の欠如というか、ニーズが十分に開拓されていない、という部分もあるのではないだろうか。

 日本から出てみると、いや、日本でなくても他の国でもいいのだが、ある国から外にでて生きてみると、その国ではまったく選択肢にあがらないようなことが、他の国では重要な問題として扱われていることがあるからだ。

 も1つ残ったのが、最後のフリーライター・岩本太郎さんのコメントで、「市民は今、自分たちが抱えている問題を、マスコミがなかなか取り上げてくれないという意識が強い」。情報の受け手の、いらいら感が伝わってくる。(ただ、「市民」というのが、どうも日本語としてピンと来ないのだが・・・。他にいいようがないのだとは思うが。)

   以下のコメントは、JAN JAN記事からの抜粋である。

◇『放送レポート』編集長・岩崎貞明さん――

 「政治家が個別の番組について、その放送局の幹部に何らかの意見を言うこと自体、非常に問題だと思います。これは、呼びつけたか、もしくは出向いたかということとは一切関係ないと敢えて言いたいと思います」

 「問題の番組については、ずたずたに編集された跡がはっきり分るような、このままオンエアにかけるのはしんどいなと思うような出来の番組だったと言えます。民放でこういうことをやったら、間違いなく放送事故と言われ、場合によっては、放送免許に関わるような事態です。こういうことを『通常よくある』なんていうような説明をしたNHKって、いったいどうしてきていると思わざるをえません。また、今回の一連の事態について、NHKの報道ははっきり偏向していると言っていいのではないでしょうか。自民党の議員側の言い分が非常に大きく取り上げられて、長井さんの記者会見ではNHKはカメラも出していませんでした。自分の問題でも客観的に伝える義務があるのではないでしょうか」

◇映像ジャーナリスト・坂上香さんは、ドキュメンタリー・ジャパン(DJ)の元ディレクターで、ETV2001・シリーズ『戦争をどう裁くか』の第3回目を担当した。番組改変問題を原因に、DJを2001年7月に退社した。坂上さんは4年前の経験についてこう語った――

 「今新聞報道で問題になっているのは28日以降ですが、実はもっと前から異常な事態が発生していました。決定的なのは、19日に部長試写というものが行われてから、どんどん番組の軸であった部分が削られていった。しかも、現場が納得するという方向ではなくて、一方的な業務命令という言葉でカットされていった。しかし、この数日の報道の流れでは、安倍さんやNHKの発言によって、番組の内容はどうだったのかという感じで変にねじれ現象が起こってきていると思います」

◇『週刊金曜日』編集長・北村肇さん――

 「非常に大きな問題があるにもかかわらず、ここのところでは、『安倍さんが呼びつけたというのは事実であるかどうか』というようなことに問題が収斂されていて、またしても重要な問題がすりかえられたと、非常にヤバイ状況だと思います。また、メディア全体としてこれだけ重大な問題であるにもかかわらず、そのすり替えのような動きに乗ってしまっています」

◇月刊『創』編集長・篠田博之さんは、メディアの自主規制を政治介入の「現代型」表現だと呼ぶ――

 「今回の問題は『放送レポート』や『週刊金曜日』などが2、3年前にかなり取り上げていた話です。それが今回初めて発見されたかのように大騒動になっているのに驚いています。この間の報道を見て気になるのは、『政治介入』という時に、すごく古典的な、1960年代のイメージであまりにも固められている印象があります。今回は、明らかにNHKが自主規制をしていたけれども、外部の介入と圧力が自主規制という形に変わってきているというのは、ここ20年のメディアの特徴です。昔の『政治家がやめろと言って、メディアが抵抗する』というような古典的な構図ではなく、自主規制という現代型です。そこのところを踏まえて議論しないと、(両議員が)『やめろ』と言ったか言わなかったかという消耗的な言い争いになっているような気がします」

◇元立命館大学教授・松田浩さんは、「政治介入を許す法制度」、そして新聞社、テレビ局などの「権力に弱い企業文化」を問題の根源だと見ている――

 「NHKは権力に協力することによって組織を拡大し、権益を獲得する。例えばハイビジョンとか、デジタル化とか、新しい財源を手にする。一種の権力との共犯関係ができていると思います」

◇ビデオジャーナリスト・綿井健陽氏――

 「政治家にとっては、メディアは取り込む対象になっている。メディアも、取り込まれることについて、はね返そうとしない。メディアと政治家はどんどん近づいてきて、いわば馴れ合いの中で作られてきた構造の問題だと思います」

◇ジャーナリスト・原寿雄さん――

 「NHKはもう完全に政治部支配で、エンタテイメントの番組の製作現場にも政治部の人が来て大きな声で言うと、それに逆らえない。なぜそうなったかというと、政治部が一番大事な国会対策、政府対策を一身に引き受けてやっているから、政治部のOBを含めて、その頂点が海老沢会長ということになる。ですから、NHKの経営政策の中心は、政治工作をいかに完成させるかということで、それはほぼ完成に近い状況ができていた。外に対して『うちの中では、政治部が完全にどの職場の番組にも干渉できる体制になっている』とする。政治権力から職場の末端まで、一本の線がずっと完結する、ほぼそれに近い状況ができつつあった。この中での今回の事件だということを考えると、非常に意味が深い」

◇立正大学教員・桂敬一さん――

 「報道に対する権力の介入はけしからんということで、メディアは一致しないというところに非常に大きな問題があります。今は報道した朝日とNHKが敵対する関係になっています。そして、そのNHKを支えるものとして読売と産経が朝日叩きに躍起になっています。私は、『朝日』だって決して一枚岩なんてとても思いません。社会部がこういう叩かれている状況の中で、どうやって共にやっていけるかは大変な問題になっていくと思います」

◇『DAYS JAPAN』編集長・広川隆一さん――

 「僕がバグダードに行った時には、現地報道の中では『こんなことが行われているんだ』ということがあって、それが当然世界でも伝わっていると思ったら、日本に帰ってきて、そういうことが一切伝わらない状況がありました。それを報道しようとするジャーナリストは日本にも存在する。だが、その人の意向のままに表現できるような場所がない、メディアがない」


◇フリーライター・岩本太郎さん――

 「市民は今、自分たちが抱えている問題を、マスコミがなかなか取り上げてくれないという意識が強いです。日本で初めてNPOが放送免許を取った京都コミュニティ放送では、市民がボランティアで番組を作るだけじゃなくて、市民がスポンサーになるという考え方がある。例えば、週1回の3分番組が1ヶ月5000円で。受信料を発信料にするわけです。つまり市民が公共放送を支えるんであれば、市民はそこで発信する権利がある。例えば、受信料の中の何%をそういうメディアの育成に投入する。もちろん、放送法などの問題でいろいろ難しいと思いますけど、長期的にみれば、そういうことも検討して、市民とメディアとの関係性を再構築していかないと、今回のような問題があった時には、市民を味方につけていくことができないんですね」


by polimediauk | 2005-01-20 18:39 | 日本関連