小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「なぜBBCだけが伝えられるのか」(光文社新書)、既刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)など。


by polimediauk

7・7の調査報告書が出た

 
 7月7日のロンドン・テロの報告書(情報機関がちゃんとチェックしていたのかどうか、政府の対応は?その日何が起きたのか、背景は?)が、2つ、昨日発表された。

 テレビで会見の様子やコメントなどをずっと追っていたが、もうそろそろ10ヶ月も前のことになる。それでも、爆破が起きた駅の前やバス停の近くからリポーターが様子を伝える報道を見ていると、画面から目が離せなかった。大きな地響きのようなもの、緊張感が伝わってきた。

 自分はその日は自宅にいたので、テロ現場からは電車でも30-40分はかかるところだったが、それでも、衝撃があった。すぐに状況をブログに書こうと思ったが、どきどきして書くことができなかった。昨日も、そのときの衝撃がよみがえったように感じた。

 テロの現場にいなくてもこれだけ衝撃を受けたり、あとで思い出したりするのだから、家族・遺族及び、命をとりとめたもののテロに出くわした人々の心情はどうだっただろう。思い出すだけでもいやだろうし、報告書によって思い出さざるを得なかったことに、怒りを感じている人もいるだろう。怖い目にあうと、体(心)が覚えている、ということがある。後で怖い感情がよみがえることもあるだろうと思う。

 テロ後、公共交通機関に一切乗らなくなった人もいると聞く。これを知ったとき、「大げさだなあ」と少し思ったが、今は、それがよく分かるような気がする。危険を避けるという意味でこうしている人もいるだろうけど、心理的にできなくなった人もいる。

 心の傷は表には見えないから、本人でさえも気づかないこともあるだろうけれど、直るには時間がかかる。10ヶ月はまだまだ短い時間なのかもしれない。

 そして、52人が(プラス実行犯4人)が亡くなったけれど、例えばイラクでは自爆テロなどで毎日同様の事件が起きている。これもまた、イラク人の心(+体)にとって、大きな衝撃になっているに違いない。

 何故ロンドン・テロが起きたのか?実行犯のプロフィールを検証したものの、最後の最後は「分からない」ようだ。

 4人が何故テロを起こしたのかに関して、きちっとした答えがでていない点に、いろいろな人がいらついている。今後、またテロが起きるのを防ぐためにも、解明の必要性があるのは分かる。

 しかし、人の心の中はなかなか分からない部分もあるかと思う。例え家族と言えど。

 外に出た帰りに、駅のプラットフォームで電車を待っていたら、「不審なものが置かれていたら、すぐ通報してください」というアナウンスメントがしつこく何度も繰り返されていた。遠くでサイレンもなっていた。何となく、物騒な感じ。報告書が出たのとは関係ないとは思うが。
by polimediauk | 2006-05-12 22:18 | 英国事情