小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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ブッシュとブレア 間違い認める + タイムズ米版発行へ


 ブレア英首相がワシントンを訪れており、ブッシュ米大統領と会見した。

 昨日は英メディアでもこのニュースで持ちきりだったが、日本とはニュースの重点の場所が違うようだ。どちらが良い・悪いということでなく、国際ニュースとしては、イラクの今後のことを(新政府ができたので)語る・・という面に焦点が集まるのは当然だろう。しかし、2人(あるいはブッシュ氏)が、イラクでの失策を認めた、あるいは、「xxxしなければよかったと思っている」、と述べた部分が英国では大きかった。私自身、この点に驚いた。

 長い間、イラク戦争に関し、あるいは、「テロの戦争」(直接イラクとは関係なかったかもしれないが、ブッシュ氏が当初つながりがある、としていた)の論調で、米政権・ブッシュ氏は、英国でよく言われる「ガン・ホー」スタイル、というか、けんか腰のもの言いを続けてきた。「そんな言い方をしては、火に油を注ぐようなものだよなあ・・」と多くの人が思っていたのではないかと思う。

 それを、今回は「あんな言い方をするべきではなかった」、と認めている。

 例えばだが、Wanted dead or alive という表現を使ったことを後悔しているそうだ。世界中のいろいろな場所で、「間違った意味に受け取られた」と思っているという。

 ブッシュ氏の言葉ではないが、私が思い出すのは、サダム・フセインが捕まったとき、当時イラクにいた米高官(ブレナー氏?)が、「We got him」と言ったのだが、その言い方が、いかにも西部劇で悪者を捕まえたような、映画「スター・ウオーズ」で悪者をこらしめたような、つまりは勧善懲悪のドラマのせりふのようで、いやだなあ・・と思ったものだった。

 テレビのニュースで垣間見た限りでは、ブレア氏の表情も随分暗かった。

 たくさん人を殺した後で、「xxxしなければよかった」(例えばフセインのバース党のメンバーを公職から追放してしまったので、結果的に暴動が増えた、など。ブレア氏の言葉)と言われてもなあ・・・とも思ってみていた。


(産経新聞の記事) 

米英首脳会談 イラク新政権を支援 撤退時期は示さず

 【ワシントン=有元隆志】ブッシュ米大統領は二十五日、訪米したブレア英首相とホワイトハウスで会談した。両首脳は共同記者会見で、国際社会と協力し、米英がイラク新政権を支援してゆく考えを強調。イラクの戦後処理で「誤り」があったと率直に認めつつも、イラクの民主化進展をアピールした。
 ブッシュ大統領は会見で、「米国と英国は協力して新政権が成功するよう手助けしてゆく」と強調した。大統領が視聴率が高い午後七時半から約四十五分間、イラクを訪問したばかりのブレア首相と共同会見に臨んだのは、イラク新政権発足の意義を米国民に訴える狙いがあったとみられる。
 両首脳は、イラク本格政権発足後も武装勢力の襲撃が続くとの厳しい見通しも示し、記者から「後悔している失敗は」と聞かれると、ブッシュ大統領は旧アブグレイブ刑務所で起きたイラク人虐待事件を挙げ、ブレア首相は、旧フセイン体制の支配政党だったバース党幹部の公職追放について「もっとよく選ぶやり方があった」と述べた。バース党幹部の全面的な追放は戦後の混乱に拍車をかける要因になったと批判が出ていた。
 両首脳はイラクからの米英軍の撤退時期については言及しなかったが、ブレア首相は、イラクのマリキ新首相が今後一年半のうちに全土で多国籍軍から治安権限を引き継げると発言したことについて、「イラク治安部隊が徐々に主導権を握る可能性はある」と述べた。
 ブレア首相は二十六日も大統領と会談する。
(産経新聞) - 5月27日3時49分更新


 (追記)
 後でネットを見ていたら、産経新聞のロンドン版でタイムズが6日から米国版を発行する記事があった。他の新聞と見比べても結構詳しく、よく調べてあって、感心した。すごい。

英紙タイムズ 米での発行キックオフ

世界最古の新聞、218年目で初
来月6日から「サッカー特集」で読者獲得狙う
 【ロンドン=蔭山実】現存する新聞では世界最古の英紙タイムズが二百十八年の歴史で初めて米国に進出することになった。サッカー・ワールドカップ(W杯)開幕に合わせてサッカー特集をメーンに六月六日から米国での発行を始める。米国のサッカーファンを中心に部数増を図るとともにインターネット版の読者獲得も目指している。
 タイムズが二十六日に発表したところによると、一部一ドルの価格で数千部の単位から販売を開始する。W杯が終わるまでは連日、一面でサッカー記事を組むなどサッカー特集を展開することを検討している。米国では野球やバスケットに比べると人気のないサッカーの報道に米紙も関心が薄く、それを逆手に取ろうという作戦だ。
 英紙ではフィナンシャル・タイムズがすでに米国版を発行しており、タイムズは英紙で二番目の米国進出となる。
 問題はコスト。タイムズのオーナー、ルパート・マードック氏は米紙ニューヨーク・ポストも所有しており、タイムズの米国内での印刷と販売に問題はない。だが、コストは販売価格の倍近くになるとの見方もあり、採算が合うかが課題となる。
 編集では、タイムズの米国駐在の特派員ら計九人を生かし、英国で発行しているタブロイド(大衆紙)判の紙面を同じ大きさの六十四ページの海外版に再編集するという。いずれは独自に米国版編集スタッフも整備する見通しだ。
 タイムズは事業に破産した英国の石炭商が印刷業に転身して一七八五年に創刊したとされる「デーリー・ユニバーサル・レジスター」が母体。三年後の八八年に「タイムズ」と改称されて誕生した。以来、英高級紙の中核を担ってきたが、一九八一年にマードック氏が買収してからはやや大衆路線に変わったともいわれる。
(産経新聞) - 5月27日16時46分更新

 

by polimediauk | 2006-05-27 17:30 | 政治とメディア