小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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グアンタナモとザルカウイ報道における、米国の「ライン」


 いろいろなことが起きていて、書こうと思う間にどんどん時間が過ぎてゆく。
ここ2-3日、ロンドンは異様に暑く、公的場所・交通機関でもエアコンが入っている場所は少ないので(昨日のブレア英首相会見+イスラエルの首相でも、ブレア氏は汗いっぱいだった)、今朝、夜雨が降ったのか少し涼しくなり、ややほっとしている。

 グアンタナモ収容所での3人の自殺と、イラクでのザルカウイ容疑者の殺害だが、両方とも、「米国のPR戦略・スピン」という要素が英メディアでは語られている。

 グアンタナモで3人の拘束者が最近自殺したが、ブッシュ米大統領自身も、懸念を表明したというにも関わらず、自殺を発表した側の米軍グアンタナモ関係者らは、非常にクールな感じで、(自殺は)「私たち(米国か?)に対する戦争行為だ」、「人の命をなんとも思っていない」などと説明。テレビで、何度も自殺の事実を発表する場面が流れたが、紙を読んでいる様子で、どことなく、けろっとしている。何故これほどけろっとしているかなあ、と不思議だった。やはり、「テロの戦争」なのだろう。他の米軍関係者らしい人も、BBCのラジオ番組TODAYに昨日出ていたが、「戦争中だ」と語っていた。

つまり、自殺した3人は、「自分の命も、他人の命もなんとも思っておらず」、「自分たちのジハードの目的を達するため」、「一つの戦争行為として、自殺した」、というのが、米側(少なくともグアンタナモ関係者の)、「ライン」(文脈、とでも訳せるのだろうか)のようだ。

 この解釈・説明を、英側は否定的に見ている。

 今朝13日の情報によると、赤十字がグアンタナモ収容所の訪問を申し込んでいるそうだ。赤十字はこれまでにも訪問し、拘束者とも接触しているが、接触内容を、基本的には一切外に出せないことになっている。

 もう一つ、ザルカウイだが、米側が言うほどには重要な人物ではなかったのでは、という可能性が指摘されている。もちろん、私に何か裏情報があるわけではないが、米軍側の説明を聞いていると、勧善懲悪的な説明で、どことなくそのまま信じるには無理があるように聞こえる。

 インディペンデント紙の6月11日付で、パトリック・コックバーンという中東記者が、もともと、ザルカウイは米国が描くような重要人物ではなかったし、殺害状況がこれを裏付けている、という記事を書いている。読んでいて、なるほどな、と思わせる。ザルカウイが全くの「シロ」だった、ということではなく、米国の戦略上(テロの戦争+イラク戦争)、ザルカウイが必要だったという要素はあるだろう。

http://news.independent.co.uk/world/middle_east/article756016.ece

 テロ戦争での米軍・米政権の「ライン」はこうだ・・という英報道が多く、翻って、ザルカウイのことを米ラインをそのまま信じて書いているような記事を見ると、どうだろう、と思ったりする。
by polimediauk | 2006-06-13 16:16 | 政治とメディア