小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

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オランダ内閣総辞職


 アヤーン・ヒルシ・アリ(元)議員の国籍はく奪問題がきっかけとなって、オランダの内閣が、30日、総辞職となった。alfayoko2005さんが指摘してくださったように、オランダの政治史に、ヒルシ・アリ氏は名前を残すことになった。私自身、驚いてしまった。

 オランダの政治は、長いこと、退屈なことで知られていたようだが、ここ数年、変わってきたようだ。

 
(読売記事+若干変更―名前部分のみ)

オランダ内閣総辞職、移民議員の国籍はく奪めぐり

 オランダ・バルケネンデ政権の全閣僚が30日、ベアトリックス女王に辞表を提出、3党連立内閣は総辞職した。

 ソマリア出身の女性でイスラム社会における女性解放を訴えている元下院議員アヤーン・ヒルシ・アリさん(36)のオランダ国籍はく奪問題をめぐり政局が混乱、連立が崩壊した。

 リタ・フェルドンク移民相は5月、ヒルシ・アリさんが亡命申請時に姓や生年月日を偽った」として、国籍のはく奪を決定。ヒルシ・アリ氏は議員辞職した。

 だが、虚偽申告についてはヒルシ・アリ氏がすでに公にしていたことなどから、「決定は政略がらみだ」との批判が国会で高まり、政治問題に発展した。
(読売新聞) - 6月30日20時12分更新


 オランダは、3つの政党の連立政権だったが、この中で最も小さいD66という政党がフェルドンク移民相の辞任を要求。これがかなわなかったため、内閣から抜けることを表明。連立がくずれた。

 今後の過程はいくつかのオプションがあるようだが、D66抜きの2つの政党(CDAとVVD)で短期の政府を作り、今年秋に総選挙、というパターンが1つ。元々2007年5月に総選挙が予定されていたが、オランダ各紙によると、早まる見込みが高いようだ。

 これまでの経緯の若干の補足だが、フェルドンク移民相はヒルシ・アリ氏の国籍をはく奪しないことを発表していたが、このとき、ヒルシ・アリ氏の声明文も同時に発表され、この中で、ヒルシ・アリ氏はフェルドンク移民相は今回の一連の国籍問題に関して一切の責任はない、と表明していた。28日、オランダの議会はこの問題を討議する中で、ヒルシ・アリ氏の声明文が書かれたのは、ヒルシ・アリ氏がフェルドンク移民相から圧力を受けたからではないか、という点が焦点となった。

 政府側はこの疑惑を否定し続けたが、バルケネンデ首相が答弁の中で、ヒルシ・アリ氏の声明文が付帯されたのは、「移民相の今後のために」という趣旨の発言を「ついうっかり」してしまい、何らかの政府の圧力があったのでは、という疑念をさらに深める結果となったようだ。29日の未明まで続いた議論の後で、30日、総辞職となった。

 バルケネンデ氏が首相になったのは2002年。連立を組んでいたリスト・ピム・フォルトイン党の内紛により、いったん政権が崩壊し、総選挙の後、2003年から2期目だった。
by polimediauk | 2006-07-01 09:00 | 欧州表現の自由