小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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人種の多様性


 13日のオブザーバー紙に、メディア関係でいろいろと興味深い記事が出ていたが、その1つに、BBCテレビの海外特派員に白人が多すぎるので何とかしないといけない、というものがあった。(BBC correspondents too abroad ‘too white’)

 ネタは新しくないのだが、常々私もそう感じていたので、ひき込まれて読んだ。

 この記事についている写真は、BBCの中東記者のジョン・シンプソン氏だ。

 BBCのテレビの特派員は世界中にいて、人によって違和感を感じない人(白人でも)いるのだが(この「白人」という言い方そのものが差別的かもしれないが、便宜的にお許し願いたい)、シンプソン氏の場合、私も、ふと、違和感を感じることがあった。

 彼は画面上で見ると、結構大柄の白髪の英国人、といった感じで、ほほやあごが、いかにも裕福な国から来たな、という感じがする。英語も良い大学に行ったのだろうな、という感じの英語だ。

 シンプソン氏がリポートをしているとき、その背景に、アフリカやあるいは中東の国の、十分に食事を取れない感じの小柄な人々が映っていると、リポーターから受ける印象とのギャップが大きく、「本当に現地事情が分かって話しているのかな?」「現地の痛みを共有できているのだろうか?」、と漠然とした思いを抱くことがあった。

 シンプソン氏はイラクでの報道で爆撃を受け、片方の耳が今でも聞こえないらしい。それほどリスクをとって報道している特派員に、厳しい、残酷なことを言うようなのだが、テレビ画面は、ある種、容赦のない、残酷な面があるかと思う。

 別にBBCはシンプソン氏をターゲットにしているわけではない。一般的に、現地の事情に熟知している人、文化を知っている人、できればその地域出身の人などがレポートすることがもっとあってもいいのでは、ということだ。これ以前にも、もっと様々な人種のレポーターが起用されるべき、ということは何度も言われてきている。

 そこで、BBCとしては、マリー・フィッツパトリックさんという女性に、新たに作った「多様性を深める」という任務を与え、アフリカやアジア地域の特派員にはアフリカ系、アジア系の記者をあてるようにしたい、と。

 フィッツパトリックさん自身は混合人種(ミックス)だそうだ。

 1990年代、チャンネル4というテレビ局でリサーチ助手として働いた時、ある会議のために、BBCを訪れたという。彼女の姿を見たBBCの当時の経営陣の一人が、「絨毯の掃除に来た方ですか?」と聞いたそうである。「黒人の女性がいたから、絨毯の掃除の人、と思ったんでしょうね。この人はまだメディア業界にいます。彼はきっと忘れているでしょうけど、私は忘れません」とフィッツパトリックさん。

 フランスでは、つい最近、有色人種のテレビキャスターが出た、ということでニュースになったと聞く。

 英国では様々な人種の人がキャスター、レポーターとなっていて、珍しくはない。それでも、海外特派員の人選ではまだまだ努力が足りない、とBBCは考えているようだ。

 シンプソン氏を画面で見て、何となくしっくりしない感じ・・・これはテレビで実際に見ないと分かりにくいかもしれないが。
by polimediauk | 2006-08-14 02:59 | 放送業界