テロをどうやったら防げるのか? オランダの場合
昨年の7・7ロンドンテロの後も、地下鉄の中でリュックサックを持ったアジア家風貌の男性がいて、電車が急停車したりなどすると、怖い、という思いを持つ人はいたと思うが、今回は、一層それが強くなっている。
その直接のきっかけは、(前提として未遂計画があったのだとしても)「想像できないほどの規模の大量殺戮」が起きる可能性があった、と繰り返した政府筋、およびこれを大々的に報道したメディア報道にあるように思う。
一体、「想像できないほどの規模」とは、どんなものか?こんなことを言われたら、誰だって心配になるし、恐怖感が募る。
これは英国ばかりではなく、オランダでも似た現象が起きているようだ。
アムステルダム発の飛行機の中に「イスラム教徒風で」「なにやら不審な行動をしている」とされたインド人の乗客数人がいた、という。他の乗客が心配になり、途中で飛行機はアムステルダムに戻り、この数人が逮捕される、という騒ぎがあった。テロとは何の関係もない、ということで、間もなく釈放されたという。
欧州に住み、イスラム過激主義に染まった若者たちが起こすテロをどうやって防ぐのか?どの国も悩んでいる。
6月、オランダの移民研究所の研究者たちが発表した報告書によると、イスラム教、あるいはイスラム教徒に対する、政治家や知識人の否定的な発言を減らすことが第一歩だそうだ。
http://www.radionetherlands.nl/currentaffairs/islamned060616
これはオランダの特殊事情もあるかもしれない。2002年に動物愛護家に殺害された、人気があった政治家ピム・フォルトイン氏は、「イスラム教は後進的な宗教だ」と言ったりなどしていた。2004年に殺害されたオランダの映画監督テオ・ファン‘ゴッホ氏は、自分の犬に「アラー」という名前をつけていた。著名人、政治家などのイスラム教、イスラム教徒に対するきつい表現がメディアをにぎわしていたようだ。
もちろん、全ての国民がこういう物言いに賛同するのではないのだが、言葉は頭の中にインプットされて、残ることも多い。
英国では新規のEU加盟国(特にポーランド)からの移民が思ったよりもかなり多かったので、「英国は移民だらけになる」「大変だ!」といった議論が最近表に出ている。
この要素と、テロ未遂事件の影響から、「多文化主義は間違っていたのではないか」「もっと移民(移民2世も含め)は社会の中に融合・融和するべきだ」という意見が強くなっている。
しかし、特に過去60年ほど、元植民地だった国からの移民がすっかり根付いている英国には、オランダのフォルトイン氏やファン・ゴッホ氏のような人はいない。BNPという極右の政党があるが、票を伸ばしているとはいえ、まだまだ大きな政治的勢力にはなっていない。
オランダとの比較で考えると、英国は融合がかなり進んでいる国と思うのだが。英新聞だけを読んでいると、「危機」状態にあるかのような錯覚に陥ってしまう。