小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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ロンドンの無料紙「戦争」 一紙が発売開始

 30日、ロンドンで発売予定の新しい無料新聞2紙のうち、1つが発行開始となった。

 昼頃、ピカデリーサーカス近辺でイブニング・スタンダード紙を販売する新聞スタンドにいる人(イブニングスタンダード紙と同じ新聞社が発行するので)に聞くと、「明日から配るから」と言われた。

 そんなはずはないのになあ、と思っていると、夕方5時ごろ、知人からの電話で、「今、ここで配ってるよ!」。あわてて走ってゆき、通りで配っている人から数部をもらった。

 頁をめくると、朝刊の無料紙メトロ(これも同じ新聞社が発行)に比べると、やや軽い記事、ゴシップ記事が多いように思った。20-30歳の若者層がターゲットなのか?既に、メトロでは、「今日から、ロンドン・ライトが始まる!」という広告が載っていた。

 少ししてから、別のイブニング・スタンダード紙のスタンドに行ってみた。ちょうと仕事が終わって帰る人たちが、地下鉄の駅に入ってゆく。ロンドン・ライトを抱えた人もいれば、イブニング・スタンダードを抱えている人もいた。

 スタンダードを一部買った。通常40ペンスなので、50ペンス硬貨を出して、おつりを待っていると、「今日から、50ペンスなんだよ」と言われてしまう。そうだったな、と思った。ロンドンライト発行と同時に、スタンダードは10ペンス値上げになったのだ。

 「ロンドンライトが出ているけど、今日の売れ行きはどう?」と聞くと、販売人の男性は「いつもと同じにちゃんと売れてるよ」と答えた。

 「スタンダード、これからも続くと思う?ずっと売り上げが落ちているんでしょう?」と聞くと、「うーん・・・。もう、これ以上、聞くなよ。俺だってわからないよ」と苦笑い。

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 しばらく地下鉄に乗って、また他のスタンダード紙の販売スタンドを見ると、「一部50ペンス」と書いた手書きのメモを貼っているところが多かったようだった。

 それにしても、英メディアは、「ロンドンの無料紙戦争」と言ってはやしたてたけれど、結局、無料紙に乗っている広告のパイの奪い合いだけじゃないのか?これにもう1つ加わるとして、読者は広告の洪水にさらされるだけじゃないのか?と思ったりした。誰も読者のことを考えて、夕刊紙市場を質の高いものにしよう・・なんて、考えてはいないのだろうなあ、と。

 ロンドン・ライトに比べたら、有料紙スタンダードは、やはりというか、読み応えがあるな、と改めて感じたが。

 もう1つのロンドンペーパーという無料紙は9月4日発売予定だ。

 (追記:上の項目とは全く関係ないが、英国人ーーもう米国籍になったのかもしれないがーー俳優のゲイリーオールドマンが、ノキアのコマーシャルに出ている。ガーディアンのサイトからビデオでも見れるようになっている。http://media.guardian.co.uk/advertising/story/0,,1861398,00.html
 今は米国に住んでいるようだが、すっかり米語で話しているのを見て、驚いてしまう。英国は住む環境、社会的バックグランドで英語のアクセントが違う。自分のもとのアクセントは出したくないのだろうか?いろいろな役柄を演じる俳優の場合、自分が誰なのか、どんなアクセントが自分なのか、あいまいになるのだろうか?故ピーター・セラーズはそういっていたようだ。自分が誰か分からない、と。閑話休題だが。)
by polimediauk | 2006-08-31 15:46 | 新聞業界