小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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テロについて考える-1 BBCの番組

c0016826_21483183.jpg ヨルダンでも最近テロがあったが、ロンドン・テロでは「英国で生まれ育った人が、なぜ?」という思いが、多くの英国民の間であったと思う。

 これを解明するために、いろいろな番組が作られたが、「自爆テロをする人の中で、特別なタイプはない」、ということで、最終的には「急速にイスラム教過激主義に心酔していった」、「移民2世として、親の母国にも、現在住む国にもアイデンティティーを感じない」、「イラク戦争を含めて、世界中でイスラム教徒が殺されていることに義憤を感じて」、行動を起こした・・・ということになるのだろうが、どうもぴんと来ない部分があった。

 つまり、テレビ番組を作っている側の方が、「どうも良く分かっていない」し、見ているほうも、「何となく分からない」という印象があった。

 また、一方では、「本当のところは、本人しか分からない」というのが、誠実で正直な答えなのかもしれない。

 昨年夏、「新しいアルカイダ」という3部構成の番組がBBCで放映され、これを作ったのが、北アイルランドのテロの推移を30年ほど書いてきた、ピーター・テイラーという人だった(右上写真)。アルカイダというのは、巷(の一部?)で言われてほどには組織化された存在ではないこと、自爆テロが若者の間でカルトとして広まっていること、アルカイダそのものが指令を出す必要もないことなどを紹介した。

 この番組は、9月頃だったか、日本の放送局(NHKかもしれない)で放映された。日本語の字幕付きとあって、もっと分かりやすく、前に見落としていたような部分まで見ることができた。

 このテイラー氏が、今年、また新たなテロシリーズの番組を作った。

 9月3日、BBC2で放映されたのだが(2回目は13日放映)、残念ながら、番組そのものをウエブで見ることはできないようだ。関連アドレスを付けておきたい。
http://news.bbc.co.uk/1/hi/programmes/5294658.stm
http://news.bbc.co.uk/1/hi/programmes/5301512.stm

 今回のタイトルは「アルカイダ;会話を始める時が来た?」だった。

 これまで、英米両政府は、テロリストとは交渉しない、という態度を特にアルカイダに関してとってきたわけだが、そういわずに、相手の言うことに耳を傾けることも1つのオプションとして考えてもいいのではないか?という点が主眼だ。

 しかし、第1回目の番組の中に出てくるヨルダンのフセイン国王の元テロのアドバイザーだったアル・シュクリ氏が言うように、「相手と対話の機会を作ることは、相手の行動を承認したことにはならない」。

 テイラー氏は、番組の中で、中東、欧州のほかの国を訪ね、何故欧州に住む若いイスラム教徒の青年が、テロリストになっていくのかを解明しようとする。

 何故「普通の」青年たちが過激主義思想に染まり、テロを行うようになるのか?あるフランスの青年は、若いイマームに過大な影響を受けて、過激思想に心酔して行き、ガールフレンドとは手をつなぐことも、話すこともできなくなってゆく。最後には、イラクに行き、自爆テロを行おうとする。

 この若いイマームは他の多くの青年たちも過激主義に引き込んだということで、現在牢獄の中にいる。

 テイラー氏は、イラクが自爆テロを行う若者たちをひきつける場所になっている、と指摘する。

 ヨルダンのシュクリ氏は、テロリストに話しかけること自体は悪いことではない、という。「例えば、米国は、今後25年間もテロの戦いを続けるというのだろうか?」

 番組の中で、米政府側は、アルカイダとの対話を全面否定している。

 CIAのオサマ・ビン・ラーディン班を統括していたマイク・シューバー氏によると、米国の外交政策が、世界中でジハードを広げる役目を果たし、ビンラーディンにとっては欠かせない同盟相手となったという。

 テイラー氏は、米国が主導したイラク戦争が、ビンラーディンが夢に見ても実現できなかった規模のジハードの機会を与えた、とウエブサイトで述べている。

 しかし、「アルカイダとの会話」をあまり意味のないもの、としているのが、元CIAのエージェントだったロバート・ベア氏である。

 4日付のTODAYというBBCの朝のラジオ番組で、テイラー氏がビンラーディンとの会話を1つのオプションとして話したのに対し、ベア氏は、「ビンラーディンと話しても、意味があまりない。次々と新しいリーダーは現れるから」と述べていた。

 5日夜、ベア氏が作った「自爆テロリストII」という番組を放映前に見て、話を聞く、という機会があった。(続く)

 (別件だが、「報道写真家から」の方のブログで、イランの核や堀江氏に関してのエントリーがある。イランの核に関して、変だなあと思った方はいらっしゃらないだろうか?何故イランだけが特別視されるのか?と。実はユーロ問題が背景にあった、と書いている。ご興味のある方はご一読を。)

http://blog.goo.ne.jp/leonlobo/e/b16990253e1111ad4036aad123e33bad
by polimediauk | 2006-09-06 21:46 | 放送業界