小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「なぜBBCだけが伝えられるのか」(光文社新書)、既刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)など。


by polimediauk

9.11テロの陰謀説 「報道写真家から」ブログより

(リンクを自由にしてよいとのメッセージを頂いているので、ここに紹介させていただきます。)

 9・11テロの陰謀説は根強いが、大手メディアではあまりまともに扱われていなかったように思う。

 こうした風潮に、やや変化がでてきた、というのが、「報道写真家から」ブログの主張だ。

 http://blog.goo.ne.jp/leonlobo

 これは、メディアが9・11事件の真相に気づいたとか、何かに目覚めたからではない。メディアは真相などとっくの昔に知っている。ブッシュ政権を取り巻く状況が変わったのだ。メディアは、いままでのように9・11はオサマ・ビン・ラディンと「アル・カイーダ」の仕業であるというシナリオを維持することに限界があると悟ったのだろう。あるいは、ブッシュ政権はいずれボロを出すと読んでいるか。


 このために、いわば、「保険をかける」感じで陰謀説を報道しだした、というのだ。

 理由はいろいろあるにせよ、米メディアの「微妙な変化」というのを、別の形で何となく感じていたので、読んでいて、どことなく、思い当たるふしがあった。ご関心のある方は、ご一読を。

 一方、オランダの「フォルクスクラント」紙も、11日付紙面で、陰謀説を検証していたという。証拠などを検証した上で、「不明な部分、つじつまの合わない部分はたくさんあるが、だからといって、陰謀があったとはいえない」という結論を出していたようだ。(ラジオネザーランドのお知らせメールによる。)

 昨日はやや体調をくずし、全てのメディアをチェックしていたわけではないが、5年経って、テロの戦争はまだ続き、オサマビンラーディンは捕まっておらず、世界はより安全にはなってない、という論調がインディペンデントなどにあった。

 12日付のテレグラフを読んでいたら、ブッシュ大統領が5周年記念のスピーチで、テロの戦争は文明への闘い(struggle for civilisation)と言っていたことを知った。自分たちの側に文明があり、相手側には文明が少ない・ない、ということなのだろうか?どうしていつも「こちら側とあちら側・敵と味方・我々と彼ら・白と黒」という形の物言いをするのだろう?

 ブッシュ政権側とアルカイダ(あるいは他のテロリスト側)とが両方で、「テロとの戦い・戦争」を盛り上げている、と思わざるを得ない。

 米国には米国の文脈、ものの考え方、アイデアの表現の仕方があるのだろう。間に入った日本(や他の国)は、どちらかを選ばなければならない、ということなのだろう。ため息が出るばかりだ。

 
by polimediauk | 2006-09-12 20:15 | 新聞業界