小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「なぜBBCだけが伝えられるのか」(光文社新書)、既刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)など。


by polimediauk

アルジャジーラ英語 日本はカバー薄い?


 アルジャジーラ英語版の放送が始まったが、英国(英メディア)ではどんな反応があったのか?

 ・・・といってもすべての反応を見たわけではないのだが、一つ頭をよぎるのは、英国の見方というのがどれぐらい重要なのか、という点だ。英国のメディア関係者の意見を判断するとき、BBCやCNNの24時間ニュース放送を見ている、英語圏の人がどう思ったか?という反応である、ということをまず了解しておきたい。つまり、公正というわけというでもなく、あくまでも英語圏の人の話、ということだ。(アラブ圏からみるとまた違う評価があるかも、と。)

 アルジャジーラ英語放送は、どういう内容になるのかの実際のフィルムなりクリップなりをずっと外に出しておらず、私が目にしたのは、今月初旬の国際テレビ会議の場だったが、それでも短い広告クリップのような感じだった。

 それを見て衝撃を受けたのは、アフリカあるいは中東の国に、ある西欧人のキャスターがいる画像だった。西欧人にアフリカのことは分からない、外国人に(例えば)日本のことは分からない、という意味ではないのだが、やはり、テレビでは画像が伝えるメッセージというものがあり、この画面を見たとき、西欧人の目から見たアフリカ(あるいは中東)、というイメージが伝わってくるように感じた。

 一抹の不安を覚えたが、実際に放送が開始され、昨日は例えばBBC24というニュースばかりを流している放送局では、90%ぐらいが国会開会の話で、ずっと見ていると本当に退屈だなあと思っていた。

 そこでアルジャジーラにチャンネルを合わせると、世界のさまざまな国からのレポートがあり、新鮮な感じ、おもしろい感じがした。自分の知らないことがたくさんあり、イランの核開発疑惑問題も、イラン側からの話を英国の報道と比較しながら伝えていて(元BBCのキャスター、ラゲー・オマル氏によるもの)、BBCやCNNがカバーできなかった分野をやる、という意味がおぼろげならが、分かったような気がした。英語のウエブサイトのスピードが遅かったり(一時クラッシュした、とも聞いた)などがあったが、まずまずだったように思う。

 ところが、英語ウエブを見ていると気づくのだが、世界中のニュースをやる、という触れ込みであったが、日本ではどうもテレビ放送としては見れないようだ。正確にいうと、日本の項目がなく、ウエブだけでは、日本ではテレビで見れるのかどうかが全く分からない。日本にいる人は英語ウエブサイトからネットで見るしかないのだろうか?

 この違和感。どうして日本がはずれて、それで「世界の」と言えるのだろう?英米圏、欧州、中東、アジア(といってもマレーシア)はあっても、日本はない?

 社長にかつてインタビューしたとき、日本とも交渉をしている、という件があったのだが。

 英国にいると、世界が米英および中東、アフリカ、中国などで回っている感じをうける。欧州のほかの国のニュースでさえ、あまり十分には入ってこない。とにかく英米、それにイラク、イラン・・・。(ただし、英国と言ってもロンドン近辺と言ったほうが正確かもしれない。例えば北アイルランドに行くと、イラクの話はあまり出ないように思った。)

 逆に、中東(カタール=アルジャジーラの本社)からすると、英語ということやニュースチャンネルと言うことだと、まず英語圏プラス他の国、ということで、アジアはマレーシアがせいぜいということなのだろうか。マレーシアが悪いわけでは全くないが、また日本はニュース性がないということなのかどうか。いずれにしても、経済的には日本はでかいが。

 ガーディアンにいくつか感想が載っている。

http://blogs.guardian.co.uk/organgrinder/2006/11/al_jazeera_english_reviewed.html
http://blogs.guardian.co.uk/organgrinder/2006/11/aljazeera_the_response_1.html

 最初の方にはなんとなく退屈だったという箇所があって、??と思ったが、日本の津波の話がほとんど触れられていなかった、と指摘。

 2つ目のほうにはさまざまなブログからの紹介で、アメリカのブロガーが、米国ではケーブルテレビのチャンネルでは見れないそうで(英国ではスカイで見れる)、これは大手ケーブルチャンネルが邪魔をしたのではないか、と。

 また、Sacchairinistと言う人が、「植民地主義」を感じる、と書いている。キャスターのほとんどが英米系メディアにいた人たちだからだ。(私もそれは感じる。)

そして、後者の中で、アフシン・ラタンシという人が、アルジャジーラ英語は開発途上国の話を他のどこでもやっていない形で報じた、としながらも、「主なニュース」の報道に関しては他と同じで、「日本には誰もいない」と指摘。放送開始が津波の脅威のあった日だったにも関わらず、「お金持ちで国際的な人々(=注:東京に住むビジネスマン、企業を指すのだろうか?)がすべての開発途上国の人命にインパクトを与えることができる、ということを全く理解していない。その一例が東京に特派員がいないようである点だ」としている。

 マレーシア支局が日本をカバーするはずだが、現時点で、東京で既にさまざまな番組の収録はスタートしているのだろうか?

 アルジャジーラ英語に対する期待はかなり高いといってよいようだ。

 http://english.aljazeera.net/NR/exeres/1EBB4C7F-7F2E-4257-A04C-56678862E31A.htm


 

 
by polimediauk | 2006-11-16 17:45 | 放送業界