「誰でもいらっしゃい」の英政府ブリーフィング
ドアは一応開いているものの・・・
日本の記者クラブ制度が外国人ジャーナリストたちから「閉鎖的」と思われている、と聞く。特に問題にされているのが、官庁側の記者会見・ブリーフィングに、クラブの会員でないと、一般的には出られない・出にくいので、情報収集の面で差が出る、という。
イギリスでは、行政側が開催する記者会見に関して言うと、基本的にはジャーナリストであれば誰でも出られる。国籍の別や、特定の記者証があるかどうか、媒体が新聞なのか雑誌なのか、はたまたフリーペーパーなのか、報道機関の規模なども、関係ない。
例えば、ロンドン市長の会見は毎週火曜日の朝、市庁舎で開かれているが、基本的に身分証明書があればいい。「会見に来ました」と受付に言えば、すぐボディーチェックの段階になり、「何者か?」を全くチェックされずに、会見室まで入れることも多い。
英首相官邸が主催するブリーフィング会見は、2名の広報官が日によって交代しながら、行っている。
場所は、長い間官邸の一室か国会の会見室だったが、2002年の10月からは、外国プレス協会で開かれている。
外国プレス協会とは日本の外国特派員協会に相当する団体で、様々な国から派遣されたジャーナリストたちが払う会費と、英外務省からの補助金で運営されている。会員数は、現在ざっと700名ほどだ。大手メディアだけでなく、フリーのジャーナリストのメンバーも多い。
協会の建物は、地下鉄ピカデリーサーカス駅から歩いて数分にあり、19世紀後半、イギリスの首相だったグラッドストーン氏の私邸だった。
入り口のドアは、鍵がかかっていることもあるが、特にブリーフィングのある日は、開いている。すると、基本的には、これもまた物騒な話だが、「誰でも」入れる。
入り口で誰かが身分証明書を見せなさい、と要求することは、ない。
私は、かつて日本で文部科学省の記者クラブに短期間所属していたことがあり、ここのクラブは自由度が高いと言われていた。それでも、もちろん、文部省の建物に入るときには、写真つき身分証明書を見せたものだった。
イギリスで、全く記者証を見せることなく、英政府のブリーフィング会見に出席できるという事態を、どう解釈したらいいのだろう?
必要があってブリーフィングに来るわけで、よっぽどの物好きでなければ、わざわざ協会の会見に出ようとはしないだろうから、ここにたどり着いたという事実、ここで会見が開かれていることを知っている人、イコール、来るべき人たち・・・とでも見なしているのか、それとも大雑把なだけなのか?
一応は、「外国プレス協会のメンバー、及び内外の記者証を持っている人」に出席が認められている、ということになっているが、実際は、ジャーナリストであれば、誰でも、出られるのだ。いや、入り口でのチェックがないのだから、ジャーナリストである必要さえもない。
このブリーフィングの様子をタイプしたものが、同じ日の夕方、官邸からメールで送られてくる。このメールを受け取ることは、誰でもできる。官邸のウエブサイト上で、メールを受け取りたいと申し込むだけだ。
かなりオープンに聞こえるだろうか?
しかし、本当にオープンか?というと、「ドアは開いているのだが・・」という答えになってしまう。
その理由と、今朝(1月31日月曜日)の会見の様子を次回から伝えたい。